※この記事は、2026年8月に内容を見直し、離婚による財産分与で不動産の名義変更を行う場合の手順、必要書類、登録免許税、住宅ローンが残っている場合の対応などを加筆・修正しています。

目次

離婚・財産分与による不動産名義変更の手順を解説

離婚するとき、夫婦で所有している財産をどのように分けるかを決める必要があります。

預貯金なら、「夫に○万円、妻に○万円」と分ければ比較的簡単です。

しかし、問題になりやすいのが持ち家などの不動産です。

たとえば、

「夫名義の家を、離婚後は妻名義にしたい」

「住宅ローンは完済しているので、財産分与として妻に家を渡したい」

「夫婦共有名義の家を、妻の単独名義にしたい」

という場合には、話し合いだけで終わりではありません。

法務局で財産分与を原因とする所有権移転登記(名義変更登記)を行う必要があります。

そして、ここで大切なのが、

「離婚届を出してから考えればいい」ではなく、離婚届を提出する前から名義変更の準備を進めておくことです。

離婚後に元配偶者が、

「もう会いたくない」

「登記には協力しない」

「そんな約束はしていない」

となれば、せっかく財産分与について合意していても、名義変更が簡単に進まなくなることがあります。

この記事では、離婚による財産分与で不動産の名義変更をするときの流れを、実際の登記手続まで含めて順番に解説します。


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まず確認|財産分与による不動産名義変更の全体の流れ

一般的には、次のような流れで進めます。

  1. 持ち家の名義・住宅ローン・評価額を確認する
  2. 誰が持ち家を取得するか話し合う
  3. 住宅ローンが残っている場合は金融機関へ相談する
  4. 財産分与を含む離婚条件を確定する
  5. 離婚協議書などを作成する
  6. 名義変更登記に必要な書類を準備する
  7. できれば離婚届提出前に署名・押印まで済ませる
  8. 離婚届を提出する
  9. 財産分与による所有権移転登記を申請する
  10. 登記完了後、新しい登記識別情報を受け取る

ここで特に重要なのが、離婚届を提出する前に、できる準備を終わらせておくことです。

財産分与を原因とする所有権移転登記は、原則として離婚成立後に行います。

しかし、

「登記が離婚後だから、準備も離婚後でいい」

という意味ではありません。

むしろ実務では逆です。

離婚前に話し合い・書類作成・登記準備を進め、離婚成立後すぐに名義変更できる状態を作っておく。

これが安全な進め方です。

そもそも財産分与とは?

財産分与とは、離婚に際して夫婦の財産を分ける手続です。

たとえば婚姻中に夫婦で築いた財産として、

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式・投資信託
  • 生命保険
  • 自動車
  • その他の財産

などがあります。

不動産についても財産分与の対象になることがあります。

たとえば、

夫名義の自宅

離婚後は妻と子どもが居住

財産分与として妻が取得

という内容で夫婦が合意したとします。

この場合、夫婦間で「この家は妻のもの」と決めただけでは、法務局の登記名義は変わりません。

夫から妻への所有権移転登記が必要です。

逆に、夫婦共有名義で、

夫 2分の1

妻 2分の1

となっている家について、離婚後は妻の単独所有にするのであれば、夫の2分の1持分を妻へ移転する登記を行います。

最初に「現在の登記」を確認する

名義変更を考える前に、まず現在の不動産の状態を確認しましょう。

確認するのは、主に次の点です。

  • 現在の所有者は誰か
  • 単独名義か共有名義か
  • 共有なら持分は何分の何か
  • 登記されている住所は現在の住所と一致しているか
  • 抵当権が残っているか
  • 住宅ローンが残っているか

「自分たちの家だから分かっている」

と思われるかもしれませんが、登記事項証明書を取得して確認することをおすすめします。

実際に確認すると、

「夫単独名義だと思っていたら妻にも持分があった」

「昔の住所のままだった」

「完済した住宅ローンの抵当権が残っていた」

などが分かることがあります。

登記上の住所が違う場合は住所変更登記が必要になることも

ここは、自分で登記する方が見落としやすいポイントです。

たとえば現在の夫の住所が、

奈良市○○町1番地

だとしても、登記記録には、

大阪市○○町2番地

と昔の住所が記載されたままになっていることがあります。

この状態で、夫から妻へ財産分与による所有権移転登記を行う場合、原則としてその前提として所有権登記名義人の住所変更登記が必要になります。

住所変更登記

財産分与による所有権移転登記

という2段階の登記になるわけです。

住所の移転が複数回ある場合には、住民票だけでは住所のつながりを証明できず、戸籍の附票などが必要になることもあります。

持ち家の評価額も確認する

次に確認したいのが、持ち家の評価額です。

たとえば、

家は妻が取得する

預貯金は夫が多めに取得する

という財産分与をするのであれば、家をいくらの財産として考えるかによって、全体の分け方が変わります。

ただし、不動産には一つだけの「絶対的な評価額」があるわけではありません。

主なものとして、

  • 固定資産税評価額
  • 不動産会社の査定額
  • 不動産鑑定士による鑑定額
  • 実際の売却価格

などがあります。

協議離婚であれば、必ず特定の評価方法を使わなければならないわけではありません。

夫婦双方が納得できる評価方法を選び、財産全体を見ながら調整していくことになります。

たとえば、

家の査定額 3,000万円

住宅ローン残高 2,000万円

なら、単純化すれば、家の実質的な価値を1,000万円程度として考える場面もあります。

ただし、

「家の評価額が3,000万円だから、妻が家を取得するなら夫へ1,500万円払う」と単純に決まるわけではありません。

住宅ローンや預貯金、その他の財産も含めて全体で考える必要があります。

詳しくは、

離婚時の持ち家の評価方法|財産分与ではいくらで計算する?

をご覧ください。

住宅ローンが残っているかどうかで難易度が大きく変わる

ここが、離婚による不動産名義変更で最も重要な分岐点の一つです。

住宅ローンがない場合

住宅ローンがない、あるいは離婚時に完済する場合には、比較的シンプルです。

たとえば、

夫単独名義

財産分与として妻が取得

住宅ローンなし

であれば、夫婦間で財産分与について合意し、離婚成立後に所有権移転登記を行います。

もちろん離婚協議書の作成や必要書類の準備は必要ですが、金融機関との調整がないため、登記手続自体は整理しやすいケースです。

住宅ローンを一括返済してから名義変更するケースについては、

住宅ローンを一括返済して妻へ名義変更する手順

も参考にしてください。

住宅ローンが残っている場合は勝手に名義変更しない

一方、住宅ローンが残っている場合は注意が必要です。

たとえば、

家の所有者 夫

住宅ローンの債務者 夫

離婚後に住む人 妻

離婚後の所有者 妻にしたい

というケースです。

夫婦間では、

「家は妻に渡す」

と合意できているかもしれません。

しかし、住宅ローンを貸している金融機関との契約は別問題です。

住宅ローン契約では、担保となっている不動産について名義変更する場合などに、金融機関への事前相談・承諾が必要とされていることがあります。

そのため、住宅ローンが残っている状態で名義変更したい場合には、先に金融機関へ相談することが重要です。

銀行に相談せず、

「離婚するから、とりあえず妻名義に変えてしまおう」

と進めるのはおすすめできません。

銀行が名義変更を認めてくれない場合は?

実際の相談で非常に多いのが、このパターンです。

銀行へ相談したところ、

「住宅ローンを完済してから名義変更してください」

と言われるケースです。

さらに、

「妻は仕事を始めたばかりなので、債務者変更の審査に通らない」

「借換えを申し込んだけれど、今は難しいと言われた」

ということもあります。

ここで、よくあるのが次の考え方です。

銀行に名義変更はローンを返してからと言われた。

妻は仕事を再開したばかりで、債務者変更も借換えも今は難しい。

だったら今は何もできない。

とりあえず離婚して、妻が夫名義の住宅ローンを払っていこう。

ローンが終わったら、そのとき名義変更を考えればいい。

気持ちはよく分かります。

しかし、このまま何も対策をせず数十年間進めるのは、将来のリスクがあります。

「今は名義変更できない」=「今は何もできない」ではない

たとえば離婚時に、

「妻が今後住宅ローンを負担する」

「住宅ローンを完済したら、夫から妻へ家を名義変更する」

と約束したとします。

その後、妻が20年間住宅ローンを負担し、ようやく完済したとしましょう。

20年後、元夫に、

「ローンが終わったので、約束どおり名義変更してください」

と連絡します。

ところが元夫から、

「そんな昔の話は知らない」

「家を売却して半分ほしい」

「今の家の価格なら、タダで名義変更するつもりはない」

と言われるかもしれません。

離婚したときには良好だった関係も、10年、20年後まで同じとは限りません。

再婚しているかもしれません。

元夫が死亡して、相続が発生している可能性もあります。

連絡先すら分からなくなっているかもしれません。

だからこそ、今すぐ本登記による名義変更ができない場合でも、将来の名義変更について今の段階で対策しておくことが重要です。

現実的な選択肢① 将来の名義変更を離婚協議書に明記する

最低限検討したいのが、離婚協議書への記載です。

たとえば、

「妻が住宅ローンを負担する」

「住宅ローン完済後、夫は妻に対して財産分与を原因とする所有権移転登記手続に協力する」

といった内容を明確にしておきます。

単に、

「家は妻のものとする」

だけではなく、

  • 誰が住宅ローンを支払うのか
  • 完済後に誰が家を取得するのか
  • いつ名義変更するのか
  • 登記手続に協力する義務
  • 登記費用を誰が負担するのか

など、将来の実行まで考えて決めておくことが重要です。

離婚協議書については、

離婚協議書は私文書?公正証書?両者の違い

で詳しく解説しています。

現実的な選択肢② 条件付所有権移転仮登記を検討する

さらに権利保全を重視する場合には、住宅ローン完済を条件とした条件付所有権移転仮登記を検討する方法があります。

これは簡単にいうと、

「住宅ローンを完済したら妻へ所有権を移転する」

という将来の権利を、あらかじめ登記簿上に仮登記として記録しておく方法です。

現在 夫名義

離婚後 妻が居住・住宅ローンを実質負担

完済後 妻へ所有権移転

という場合に、離婚時点で条件付所有権移転仮登記をしておくことがあります。

仮登記をしたから直ちに妻が所有者になるわけではありません。

しかし、何も登記せず20年間待つ場合と、将来の所有権移転について登記簿上に記録を残しておく場合とでは、権利保全という意味で大きな違いがあります。

詳しくは、

住宅ローン完済を条件とした所有権移転仮登記とは?

をご覧ください。

現実的な選択肢③ 将来の借換えを予定する

現在は妻の収入状況などから借換えが難しくても、数年後には状況が変わる可能性があります。

たとえば、

離婚時 妻が就職したばかり

現時点では借換え困難

3年後 勤続年数・収入実績ができる

妻単独で住宅ローンを借換え

夫の住宅ローンを完済

妻へ名義変更

という方法です。

このような場合も、

「数年後に借換えできたら考えよう」

だけで終わらせず、離婚時点で今後の方向性を整理しておく方が安全です。

妻が住宅ローンを負担して妻名義への変更を目指すケースについては、

妻が住宅ローンを負担して妻へ持ち家を名義変更する方法

も参考にしてください。

離婚条件が決まったら離婚協議書を作成する

持ち家の処理方法、住宅ローン、その他の財産分与について方向性が決まったら、離婚協議書を作成します。

離婚協議書には、不動産だけでなく、

  • 財産分与
  • 住宅ローン
  • 預貯金
  • 養育費
  • 慰謝料
  • 親権
  • 面会交流
  • 年金分割

など、夫婦で合意した内容をまとめて記載します。

特に不動産については、

「○○の家を妻に渡す」

だけでは不十分です。

登記手続まで想定して、対象不動産を正確に特定し、財産分与の内容を明確にしておく必要があります。

私文書と公正証書、どちらがいい?

離婚協議書は、夫婦で作成する私文書でも構いません。

一方、養育費などの継続的な金銭支払いがある場合や、将来の履行をより確実にしたい場合には、公正証書を検討することがあります。

ただし、「公正証書にすれば、不動産の名義も自動的に変わる」わけではありません。

公正証書を作成しても、不動産の名義変更登記は別途必要です。

「離婚協議書を作ったから終わり」ではなく、

合意書作成

離婚成立

登記申請

までを一連の手続として考えましょう。

財産分与による名義変更登記の必要書類

離婚が成立し、財産分与として夫から妻へ不動産を移転する場合、一般的には次のような書類を準備します。

不動産を渡す側が準備するもの

たとえば、夫名義の家を妻へ財産分与する場合の「夫側」です。

  • 登記識別情報または登記済証(いわゆる権利証)
  • 印鑑証明書(原則として発行後3か月以内)
  • 実印
  • 本人確認書類

不動産を取得する側が準備するもの

夫から妻へ名義変更する場合の「妻側」です。

  • 住民票
  • 本人確認書類

その他に必要となるもの

  • 登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 固定資産評価額が確認できる資料
  • 委任状(司法書士へ依頼する場合)
  • 戸籍等、離婚成立を確認するための資料

実際の必要書類は、不動産の状態や登記内容によって変わります。

特に、

「住所が何回も変わっている」

「権利証がない」

「共有名義になっている」

「抵当権が残っている」

といったケースでは、追加書類や別の登記が必要になることがあります。

登記識別情報・権利証を確認する

自分で登記する場合、早めに探しておきたいのが登記識別情報または登記済証(権利証)です。

比較的新しい登記であれば、登記識別情報通知という書類が交付されています。

古い登記であれば、「登記済権利証」「登記済証」などと記載された書類が残っていることがあります。

ここで注意したいのは、

離婚してから権利証を探し始めないことです。

可能であれば離婚前に、

  • 権利証の有無
  • 印鑑証明書の準備
  • 登記書類への署名押印

などを確認しておきましょう。

権利証を紛失していても名義変更はできる

「権利証が見つからない。もう名義変更できないのでは?」

という相談もあります。

結論からいうと、権利証を紛失していても登記する方法はあります。

ただし、権利証を再発行してもらうことはできません。

代替手続として、

  • 法務局による事前通知制度
  • 司法書士等による本人確認情報の提供

などを利用することがあります。

自分で登記する場合には、事前通知制度を利用する方法がありますが、通常の登記より手続が増えます。

権利証がないことが離婚前に分かっているなら、その段階で司法書士へ相談しておく方が安全です。

登記原因証明情報を作成する

財産分与による所有権移転登記では、登記原因証明情報を法務局へ提出します。

簡単にいうと、

「なぜ夫から妻へ所有権が移転するのか」を証明する書類

です。

財産分与の場合には、

  • 離婚が成立したこと
  • 財産分与の合意が成立したこと
  • 対象となる不動産

などを記載します。

離婚前に登記書類を準備しておき、離婚成立後に財産分与による所有権移転登記を申請するという流れになります。

離婚届を出す前に登記書類を準備しておく

今回の記事で、特にお伝えしたいポイントです。

財産分与による登記は離婚成立後に行います。

しかし、準備まで離婚後にする必要はありません。

むしろ、できるだけ離婚前に準備しておくことをおすすめします。

  1. 離婚条件を確定する
  2. 離婚協議書を作成する
  3. 登記申請に必要な書類を作成する
  4. 夫婦双方が必要書類へ署名・押印する
  5. 権利証・印鑑証明書などを確認する
  6. 離婚届を提出する
  7. 離婚成立を確認する
  8. 財産分与による所有権移転登記を申請する

こうしておけば、離婚後に改めて元配偶者へ、

「この書類に実印を押してください」

「権利証を送ってください」

「印鑑証明書を取ってください」

とお願いする場面を減らせます。

なぜ離婚前の準備がそんなに重要なのか?

理由は単純です。

離婚後も相手が同じように協力してくれるとは限らないからです。

離婚前には、

「家は妻に渡す。それでいいよ」

と言っていた夫が、離婚後になって、

「やっぱり考え直したい」

と言い出すことも考えられます。

財産分与について合意していることと、実際に登記が完了していることは別問題です。

だからこそ、離婚条件を決める段階から、最終的な名義変更まで逆算して準備することが重要です。

財産分与による名義変更の登録免許税はいくら?

不動産の名義変更登記を申請するときには、登録免許税がかかります。

財産分与による所有権移転登記では、原則として、

固定資産税評価額 × 2%

で登録免許税を計算します。

たとえば、

土地の固定資産税評価額 800万円

建物の固定資産税評価額 400万円

合計評価額 1,200万円

登録免許税 24万円

という計算になります。

ここで使用するのは、原則として不動産会社の査定額や購入価格ではありません。

固定資産税評価額を基準に計算します。

登録免許税について詳しくは、

不動産名義変更の登録免許税について

も参考にしてください。

共有持分だけを財産分与する場合は?

たとえば、

夫 2分の1

妻 2分の1

で所有している自宅について、離婚を機に妻の単独所有にするとします。

この場合、妻がすでに所有している2分の1について名義変更する必要はありません。

財産分与で移転するのは、夫の2分の1持分です。

仮に不動産全体の固定資産税評価額が1,200万円なら、

1,200万円 × 2分の1 = 600万円

600万円 × 2% = 12万円

というイメージです。

自分で名義変更する場合の登記申請書

自分で登記する場合には、登記申請書を作成して管轄法務局へ提出します。

登記申請書には、主に、

  • 登記の目的
  • 登記原因とその日付
  • 権利者
  • 義務者
  • 添付情報
  • 課税価格
  • 登録免許税
  • 不動産の表示

などを記載します。

財産分与で夫から妻へ所有権を移転する場合には、

夫=登記義務者

妻=登記権利者

という関係になります。

土地・建物の表示は、登記事項証明書どおり正確に記載します。

自分で法務局へ申請する方法

必要書類が揃ったら、不動産所在地を管轄する法務局へ登記申請します。

ここで注意したいのが、

自宅の近くの法務局なら、どこでもいいわけではない

という点です。

登記申請には管轄があります。

自分で申請する場合は、窓口へ書類を持参する方法のほか、郵送による申請などもあります。

初めて登記する方であれば、法務局の登記手続案内を利用して書類を確認しながら進める方法もあります。

ただし、法務局は、

「離婚条件として、どういう財産分与にした方がいいか」

「この夫婦なら仮登記をした方がいいか」

「住宅ローンをどう処理するのが安全か」

といった個別の法律判断や手続設計までしてくれる場所ではありません。

登記書類の作り方を確認することと、離婚・財産分与全体の設計を相談することは別と考えておきましょう。

登記申請後はどうなる?

登記申請をすると、法務局で審査が行われます。

問題がなければ、財産分与による所有権移転登記が完了します。

妻が取得するケースであれば、登記完了後に妻へ新しい登記識別情報通知が発行されます。

この登記識別情報は、将来、

  • 家を売却する
  • 住宅ローンを組む
  • 担保を設定する

といった場面で必要になる重要な情報です。

紛失しないように保管しましょう。

書類に不備があった場合は「補正」が必要

自分で登記した場合、申請書や添付書類に不備があると、法務局から補正を求められることがあります。

たとえば、

  • 住所が登記記録と一致しない
  • 課税価格の計算が違う
  • 登録免許税が違う
  • 登記原因証明情報の記載が不十分
  • 添付書類が不足している

などです。

軽微な不備であれば修正できますが、内容によっては追加書類が必要になります。

財産分与による名義変更を自分でできるケース

結論として、比較的シンプルなケースなら、自分で登記することは十分可能です。

たとえば、

  • 住宅ローンがない
  • 夫婦間で財産分与について完全に合意している
  • 夫単独名義から妻単独名義への単純な移転
  • 権利証がある
  • 住所変更などの前提登記がない
  • 相手方が登記手続に協力してくれる

といったケースです。

「登記費用を少しでも抑えたい」

「書類作成が苦にならない」

「平日に法務局とやり取りできる」

という方なら、自分で挑戦する選択肢もあります。

自分で名義変更登記を行う際の一般的な注意点については、

自分で不動産名義変更をする場合の注意点

も参考にしてください。

司法書士へ依頼した方がよいケース

一方で、次のような場合は司法書士への依頼を検討した方がよいでしょう。

  • 住宅ローンが残っている
  • 抵当権の変更や抹消も必要
  • 住所変更登記が必要
  • 権利証を紛失している
  • 共有持分の処理が複雑
  • 離婚協議書から作成してほしい
  • 離婚成立日に近いタイミングで確実に登記したい
  • 離婚後に相手方と連絡を取りたくない
  • 相手方の協力に不安がある
  • 将来の名義変更や仮登記まで含めて設計したい

特に、持ち家+住宅ローン+離婚が組み合わさるケースでは、単純な「登記申請書の作成」だけでは済まないことがあります。

金融機関との調整、離婚協議書、住宅ローンの完済、抵当権抹消、債務者変更、所有権移転などを、どの順番で実行するか考える必要があるからです。

相談先について迷っている場合は、

持ち家がある離婚は誰に相談する?専門家の違いを比較

をご覧ください。

離婚による名義変更は「登記だけ」を見ると失敗しやすい

たとえば、

「夫名義から妻名義に変更したい」

という相談だけを聞けば、所有権移転登記の問題に見えます。

しかし実際には、

現在の所有者は誰か

住宅ローンは誰が借りているか

離婚後は誰が住むのか

住宅ローンは誰が支払うのか

銀行は名義変更を認めるのか

認めないならどうするのか

財産分与額をどう決めるのか

離婚協議書をどう作るのか

いつ離婚届を提出するのか

いつ登記するのか

という一連の流れで考える必要があります。

重要なのは、「名義変更のやり方」だけではなく、「離婚全体の中で名義変更をどう実行するか」です。

財産分与で不動産を取得すると税金はどうなる?

不動産を動かす以上、税金についても確認しておきましょう。

ただし、税金は個別事情によって結論が変わることがあります。

ここでは基本的な考え方だけ整理します。

登録免許税

先ほど説明したとおり、財産分与による所有権移転登記には登録免許税がかかります。

原則として、

固定資産税評価額 × 2%

です。

贈与税はかかる?

離婚に伴う通常の財産分与で財産を取得した場合、一般には直ちに贈与税が課税されるものではありません。

財産分与は、婚姻中に夫婦で形成した財産を清算する性質などを持つためです。

ただし、分与された財産が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産などの事情を考慮しても過大である場合などには、その過大部分について贈与税の問題が生じる可能性があります。

「離婚なら、どれだけ不動産を渡しても贈与税は絶対にかからない」と考えるのは危険です。

財産額が大きい場合や特殊な分け方をする場合には、税理士・税務署等への確認をおすすめします。

不動産を渡す側に譲渡所得税が発生することがある

ここは見落とされやすいポイントです。

財産分与として土地や建物を渡した場合、税務上、不動産を時価で譲渡したものとして扱われることがあります。

そのため、購入時より大きく値上がりしている不動産などでは、譲渡所得が発生する可能性があります。

居住用財産に関する特例を利用できる可能性もありますので、金額が大きい場合には事前に税務確認をしておきましょう。

不動産取得税も確認する

不動産を取得した側には、不動産取得税が問題になることがあります。

離婚に伴う財産分与については、その財産分与の性質や内容によって取扱いが異なる可能性があります。

「財産分与なら不動産取得税は必ずゼロ」と一律に考えない方が安全です。

具体的な課税関係については、不動産所在地を管轄する都道府県税事務所等へ確認しましょう。

不動産名義変更に関連する税金については、

不動産名義変更に必要な税金一覧

も参考にしてください。

事例|夫名義の自宅を妻へ財産分与する場合

前提

夫婦が離婚することになった

自宅は夫の単独名義

住宅ローンはすでに完済済み

離婚後は妻と子どもが自宅に住み続ける

自宅は財産分与として妻が取得することで合意済み

手続

まず、登記事項証明書を取得して、夫の単独名義であることを確認します。

次に固定資産税評価額や不動産の査定額などを確認し、預貯金その他の財産も含めて財産分与の内容を決定します。

そのうえで離婚協議書を作成します。

並行して、

  • 夫の権利証
  • 夫の印鑑証明書
  • 妻の住民票
  • 固定資産評価額が分かる資料

などを準備します。

できれば離婚届を提出する前に、登記書類への署名・押印まで済ませておきます。

離婚届提出

離婚成立

財産分与による所有権移転登記

と進めます。

このケースなら、比較的自分でも進めやすいでしょう。

事例|住宅ローンが残る夫名義の家を妻が取得したい場合

前提

家は夫名義

住宅ローンも夫名義

離婚後は妻と子どもが住み続ける

妻が今後の住宅ローンを負担し、最終的には妻名義にしたい

この場合、

「財産分与だから夫から妻へ登記すればいい」

とは限りません。

まず金融機関への相談が必要です。

  • 妻への債務者変更ができるのか
  • 妻名義で借換えできるのか
  • 現在の住宅ローンを完済する必要があるのか
  • 今すぐ名義変更できないなら将来どうするのか

これらを整理します。

仮に銀行から、

「今は名義変更できません。完済後にしてください」

と言われたのであれば、

そこで手続を止めて何もしないのではなく、離婚協議書や条件付所有権移転仮登記など、今できる対策を検討する。

ここが非常に重要です。

まとめ|離婚届を出す前に「名義変更のゴール」まで決めておこう

離婚による財産分与で不動産の名義変更をする場合、登記そのものは自分で行うこともできます。

住宅ローンがなく、夫婦間で合意ができており、必要書類も揃っているのであれば、それほど複雑ではないケースもあります。

ただし、持ち家がある離婚で本当に注意したいのは、登記申請書の書き方だけではありません。

  • 離婚後に誰が家を所有するのか
  • 住宅ローンを誰が負担するのか
  • いつ名義変更するのか
  • 今すぐ名義変更できないなら将来の権利をどう守るのか

ここまで決めておく必要があります。

特に避けたいのが、

「今は銀行が名義変更を認めてくれないから、とりあえず離婚だけしておこう」

という進め方です。

今できないことがあっても、今できる対策はあります。

  • 離婚協議書を作る
  • 登記書類を準備する
  • 将来の名義変更について明確に約束する
  • 必要なら仮登記を検討する
  • 数年後の借換えを見据えて手続を設計する

離婚から10年、20年経ってから、

「こんなはずじゃなかった」

とならないように、離婚届を提出する前の段階で、持ち家と住宅ローンの出口まで決めておくことをおすすめします。


AI離婚シミュレーター|持ち家・住宅ローンの手続きを診断 →