※この記事は、2026年8月に内容を見直し、持ち家がある離婚で「誰に相談すればよいのか」を判断しやすいよう、弁護士・司法書士・行政書士・不動産会社の役割、向いているケース、デメリット、専門家同士の連携について加筆・修正しています。
目次
- 1 持ち家がある離婚、誰に相談すればいい?
- 2 まずは4つの専門家の違いを知っておこう
- 3 弁護士に相談した方がよいケース
- 4 司法書士に相談した方がよいケース
- 5 行政書士に相談した方がよいケース
- 6 不動産会社に相談した方がよいケース
- 7 4つの専門家を比較すると
- 8 実際には専門家をリレーするケースが多い
- 9 弁護士 → 司法書士
- 10 行政書士 → 司法書士
- 11 不動産会社 → 司法書士
- 12 弁護士 → 不動産会社 → 司法書士
- 13 「最初に誰へ相談するか」と「最後に誰へ依頼するか」は別
- 14 持ち家がある離婚で特に重要な3つの問題
- 15 まだ揉めていない段階だからこそ相談する意味がある
- 16 ケース別|結局、誰からスタートすればいい?
- 17 まとめ|前半は「誰に相談?」、後半は「どうつなぐ?」で考える
持ち家がある離婚、誰に相談すればいい?
離婚を考え始めたとき、
「とりあえず弁護士に相談すればいいのかな?」
と思われる方は多いと思います。
もちろん、夫婦間で話し合いがまとまらない場合や、財産分与・慰謝料・親権などでもめている場合には、弁護士への相談が有力な選択肢になります。
しかし、持ち家がある離婚では、必ずしもすべてのケースで弁護士が最初の相談先になるわけではありません。
たとえば、
「離婚すること自体には夫婦とも合意している」
「家は妻がもらうことで話がまとまっている」
「でも住宅ローンが残っている。どうやって妻名義にしたらいい?」
という相談です。
この場合、問題になっているのは夫婦間の「争い」というより、住宅ローンと不動産登記をどう処理するかです。
逆に、
「家を売って、住宅ローンを返して、残ったお金を夫婦で分けたい」
という場合には、不動産会社の協力も必要になります。
「離婚だから○○士」ではなく、「何に困っているのか」で相談先を選ぶことが大切です。
- 夫婦間でもめている・交渉してほしい → 弁護士
- 話はまとまっていて、家の名義変更や登記を進めたい → 司法書士
- 合意内容を書面にまとめたい → 行政書士
- 家を売りたい・家の市場価格を知りたい → 不動産会社
ただし、持ち家がある離婚では、最初に相談した専門家が最後まですべて担当するとは限りません。
後半では、実際によくある「弁護士 → 司法書士」「行政書士 → 司法書士」といった専門家のリレーパターンについても解説します。
離婚時の住宅ローンと持ち家の処理方法を先に確認したい方は、
離婚時の住宅ローンと持ち家の名義|パターン別3つの処理方法
も参考にしてください。
まずは4つの専門家の違いを知っておこう
持ち家がある離婚で相談先となることが多いのは、主に次の4つです。
交渉・調停・訴訟など紛争解決
不動産登記・名義変更
離婚協議書などの書類作成
査定・売却・買主探し
それぞれ得意分野が違います。
「誰が一番いいか」ではなく、今の問題に誰が合っているかで考えてみましょう。
弁護士に相談した方がよいケース
夫婦間で話し合いがまとまらないなら弁護士
弁護士が最も力を発揮するのは、夫婦間に争いがあるケースです。
たとえば、
- 夫は家を売りたいが、妻は住み続けたい
- 財産分与の割合でもめている
- 家の評価額について意見が合わない
- 慰謝料でもめている
- 親権・養育費でもめている
- 相手方と直接交渉したくない
- 離婚調停・離婚訴訟になる可能性がある
- DVなどがあり、当事者間での話し合いが難しい
といったケースです。
この段階では、まだ「家の名義変更をどうするか」以前に、そもそも家を誰が取得するのかが決まっていません。
弁護士であれば、本人の代理人として相手方と交渉することができます。
話し合いで解決できなければ、離婚調停や離婚訴訟へ進むこともできます。
弁護士に依頼するデメリット
すでに夫婦間で離婚条件がまとまっている場合には、代理交渉まで依頼する必要性が低いケースもあります。
たとえば、
「家は妻がもらう」
「預貯金は半分ずつ」
「養育費も決まっている」
「あとは家の名義変更をしたい」
という状態です。
この場合、問題の中心は紛争ではなく、登記や住宅ローンの実務になります。
また、調停や訴訟によって財産分与の内容が決まった後、不動産の名義変更については司法書士へ引き継ぐケースもあります。
「離婚=何でも弁護士」ではなく、現在何について困っているのかを整理して相談先を選ぶことが大切です。
司法書士に相談した方がよいケース
話はまとまっている。でも家をどうすればいいか分からない
司法書士が力を発揮するのは、
「夫婦間では話がまとまっている。でも、持ち家と住宅ローンをどう処理すればいいのか分からない」
というケースです。
たとえば、
「夫名義の家を妻名義に変更したい」
というだけでも、住宅ローンが残っていれば確認事項は多くあります。
- 現在の家の名義
- 住宅ローンの債務者
- 離婚後に住む人
- 今後住宅ローンを支払う人
- 銀行が名義変更を認めるか
- 債務者変更ができるか
- 借換えが必要か
- 抵当権をどうするか
- いつ財産分与による名義変更をするか
こうした内容を整理して、実際の登記につなげていきます。
司法書士に相談した方がよい代表例
- 夫から妻へ名義変更したい
- 共有名義を単独名義にしたい
- 住宅ローンを一括返済して名義変更したい
- 債務者変更に伴う抵当権変更登記が必要
- 抵当権抹消登記が必要
- 離婚協議書と登記をセットで考えたい
- 住宅ローン完済後の名義変更について対策したい
- 条件付所有権移転仮登記を検討したい
特に、住宅ローンが残っているケースでは、離婚協議書の文章と実際の登記を切り離さずに考えることが重要です。
住宅ローンを一括返済して名義変更するケースについては、
住宅ローンを一括返済して妻へ名義変更する方法
で詳しく解説しています。
司法書士に依頼するデメリット
司法書士は、夫婦間の財産分与条件を代理人として交渉することはできません。
たとえば、
妻「家をもらいたい」
夫「渡さない」
という状態で、妻の代理人として夫と交渉することはできません。
離婚調停・離婚訴訟の代理人になることもできません。
揉めているなら弁護士。話はまとまっていて、持ち家や登記を処理したいなら司法書士。
このように整理すると分かりやすいでしょう。
行政書士に相談した方がよいケース
合意した内容を書面にまとめたい
行政書士は、書類作成を中心とする専門家です。
夫婦間で離婚条件がまとまっており、
「これを離婚協議書にまとめたい」
という場合には相談先の一つになります。
たとえば、
- 預貯金の分け方が決まっている
- 養育費が決まっている
- 慰謝料について合意している
- 離婚協議書を作成したい
- 不動産登記は特に必要ない
といったケースです。
行政書士に依頼するデメリット
持ち家がある離婚の場合、行政書士だけでは手続が完結しないことがあります。
行政書士は、
- 財産分与による所有権移転登記
- 抵当権抹消登記
- 抵当権変更登記
などの不動産登記を代理申請することはできません。
そのため、
「行政書士に離婚協議書を作ってもらった。その内容どおり家の名義を妻へ変更したい」
という場合には、その後、司法書士へ名義変更登記を依頼することになります。
また、相手方との交渉代理もできません。
離婚協議書について詳しくは、
離婚協議書は私文書?公正証書?両者の違い
をご覧ください。
不動産会社に相談した方がよいケース
家を売るなら不動産会社
離婚を機に持ち家を売却するのであれば、不動産会社が中心になります。
不動産会社は、
- 家の査定
- 売却価格の検討
- 買主探し
- 売買契約
- 売却スケジュールの調整
などを担当します。
たとえば、
「家を売ったらいくらになる?」
「住宅ローンを返していくら残る?」
「売却代金を夫婦で分けたい」
という場合には、不動産会社への査定依頼が有効です。
不動産会社に依頼するデメリット
不動産会社は、離婚条件そのものを法的に整理する専門家ではありません。
たとえば、
- 売却代金をどう財産分与するか
- 住宅ローンを売却まで誰が払うか
- 売却まで妻が住み続けてよいのか
といった内容は、夫婦間で別途決めておく必要があります。
また、抵当権抹消や買主への所有権移転など、登記については司法書士が担当します。
4つの専門家を比較すると
簡単に整理すると、次のようになります。
弁護士
司法書士
行政書士
不動産会社
ただし、ここで重要なのは、
実際の離婚では、どれか一人の専門家だけで最後まで完結するとは限らない
という点です。
ここからは、持ち家がある離婚でよくある「専門家のリレー」を見てみましょう。
実際には専門家をリレーするケースが多い
持ち家がある離婚では、問題の種類が途中で変わっていきます。
最初は「離婚条件を決める」という問題でも、その後は「不動産を売る」「名義を変更する」「抵当権を抹消する」といった具体的な手続へ進みます。
そのため、手続の段階に応じて専門家をリレーしていくのは珍しいことではありません。
弁護士 → 司法書士
代表的なパターンです。
たとえば、
夫婦間で財産分与について合意できない
↓
弁護士へ相談
↓
離婚調停・訴訟
↓
「妻が自宅を取得する」と決まる
↓
司法書士へ名義変更登記を依頼
という流れです。
弁護士の役割は、まず財産分与の内容を決めることです。
その結果、
「夫名義の不動産を妻へ財産分与する」
と決まったのであれば、次はその結果を登記簿に反映させる必要があります。
弁護士が離婚条件を確定し、司法書士がその結果を登記へ反映する。
という役割分担になります。
行政書士 → 司法書士
夫婦間ですでに離婚条件がまとまっているケースです。
夫婦間で合意
↓
行政書士へ離婚協議書の作成を依頼
↓
離婚協議書完成
↓
離婚成立
↓
司法書士へ財産分与による名義変更登記を依頼
という流れです。
行政書士が離婚協議書を作成したとしても、その内容に、
「夫から妻へ持ち家を財産分与する」
と記載されているだけでは、家の名義は変わりません。
離婚協議書の作成と、不動産の名義変更は別の手続です。
そのため、協議書作成後に司法書士へ登記を依頼します。
なお、持ち家の名義変更を予定している場合には、離婚協議書を作成する段階から、その後の登記を意識した内容にしておくことも重要です。
不動産会社 → 司法書士
離婚に伴って家を売る場合にも、専門家のリレーがあります。
家を売却することで合意
↓
不動産会社へ査定・売却を依頼
↓
買主が決まる
↓
売買契約
↓
売買代金決済
↓
司法書士が抵当権抹消・所有権移転登記
という流れです。
住宅ローンが残っている場合には、売却代金から住宅ローンを返済し、金融機関の抵当権を抹消します。
そのうえで、買主へ所有権を移転します。
不動産会社が「売る部分」、司法書士が「登記する部分」を担当すると考えると分かりやすいでしょう。
弁護士 → 不動産会社 → 司法書士
もう少し複雑なケースもあります。
たとえば、
夫は家を売りたい
妻は住み続けたい
↓
話し合いがまとまらない
↓
弁護士へ相談
↓
最終的に売却することで合意・調停成立
↓
不動産会社が売却
↓
司法書士が決済時の登記
という流れです。
この場合、
- 弁護士:離婚条件・財産分与を整理
- 不動産会社:家を売却
- 司法書士:抵当権抹消・所有権移転などの登記
という3者のリレーになります。
「最初に誰へ相談するか」と「最後に誰へ依頼するか」は別
ここはかなり重要です。
持ち家がある離婚では、
最初に相談した専門家が、そのまま最後まで全部の手続をする
とは限りません。
たとえば、最初に弁護士へ相談したとしても、最後に不動産の名義変更をする段階では司法書士が必要になることがあります。
行政書士に離婚協議書を作ってもらっても、その後の名義変更登記は司法書士へ依頼します。
不動産会社に家を売ってもらったとしても、最後の売買決済では司法書士が登記を担当します。
それぞれの専門家が、自分の専門分野を担当しながら手続をつないでいく。
持ち家がある離婚では、このイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。
持ち家がある離婚で特に重要な3つの問題
1.持ち家を誰が取得するのか
まず、
- 売却する
- 夫が取得する
- 妻が取得する
のどれにするかを考えます。
子どもの学校などを考えて、妻と子どもが住み続けたいという希望も多くあります。
ただし、誰が住むかと、誰の名義にするかは別問題です。
持ち家の価値をどのように考えるかについては、
離婚時の持ち家の評価方法
も参考にしてください。
2.住宅ローンを誰が負担するのか
住宅ローンが残っている場合には、
- 夫が払う
- 妻が実質的に負担する
- 妻へ債務者変更する
- 妻が借換えする
- 一括返済する
- 家を売って返済する
など、複数の選択肢があります。
夫が住宅ローンを支払い続けるケースについては、
夫が住宅ローンを負担して妻へ持ち家を名義変更する方法
で詳しく解説しています。
妻が住宅ローンを負担したい場合は、
妻が住宅ローンを負担して妻へ持ち家を名義変更する方法
も参考にしてください。
3.家の名義をいつ変更するのか
銀行から、
「住宅ローン完済後に名義変更してください」
と言われることがあります。
このとき、
「じゃあ今は何もできない」
と考えてしまいがちです。
しかし、住宅ローン完済まで10年、20年あるのであれば、その間に元夫の考えが変わる可能性があります。
妻が長期間住宅ローンを負担して完済したあと、
「やっぱり家を売ろう。売却代金の半分をほしい」
と言われる可能性もあります。
だからこそ、今すぐ名義変更できない場合にも、離婚協議書や仮登記など、今できる対策を考えることが重要です。
詳しくは、
住宅ローン完済を条件とした所有権移転仮登記とは?
をご覧ください。
まだ揉めていない段階だからこそ相談する意味がある
専門家への相談は、トラブルになってからするものと思われがちです。
しかし、持ち家がある離婚では、
まだ夫婦で冷静に話ができる段階の方が、むしろ対策しやすいケースがあります。
たとえば、
「家は妻へ渡す」
「住宅ローンは夫が払う」
「完済後に妻名義にする」
という合意ができているのであれば、その時点で離婚協議書や将来の登記について整理できます。
反対に、
「後で考えよう」
と離婚届だけ出してしまい、10年後に問題が発生してから相談すると、相手の協力が得られないこともあります。
揉めてから専門家を探すより、揉めていないうちに将来のリスクを整理しておく。
持ち家がある離婚では、この考え方が大切です。
ケース別|結局、誰からスタートすればいい?
家を誰が取得するかでもめている
→ 弁護士
まず財産分与について合意・調停等を行います。
家は妻がもらうことで合意済み
→ 司法書士
財産分与による所有権移転登記を進めます。
離婚協議書をまず作りたい
→ 行政書士・司法書士など
ただし、家の名義変更まで予定している場合は、その後の登記まで考えておきます。
家を売ることで夫婦とも合意している
→ 不動産会社
売却時には司法書士が登記を担当します。
財産分与でもめていて、最終的に家を売却する可能性がある
→ 弁護士 → 不動産会社 → 司法書士
という流れになることもあります。
まとめ|前半は「誰に相談?」、後半は「どうつなぐ?」で考える
持ち家がある離婚では、弁護士、司法書士、行政書士、不動産会社がそれぞれ異なる役割を持っています。
まずは、
自分が何について困っているのか
を考え、最初の相談先を選びましょう。
そのうえで、必要になれば次の専門家へ引き継いでいきます。
持ち家がある離婚では、「誰か一人に全部頼む」というより、必要な専門家を適切なタイミングでつないでいく方が自然です。
特に、不動産の名義変更は離婚協議書や調停が終わっただけでは完了しません。
- 弁護士で調停等が終わった後に司法書士へ
- 行政書士で離婚協議書を作った後に司法書士へ
- 不動産会社で売却を進め、決済時には司法書士へ
というように、最後まで必要な手続を確認しながら進めることが大切です。



