目次
不動産の名義変更にかかる登録免許税とは
登録免許税とは、不動産や会社などの登記をするときに納める税金です。
不動産の売買、相続、贈与、離婚による財産分与などにより所有者が変わった場合は、法務局で所有権移転登記を行います。その登記申請の際に納めるのが登録免許税です。
分かりやすくいえば、登録免許税は「法務局で名義変更をするために必要な税金」です。
なお、登録免許税は司法書士へ支払う報酬とは別の費用です。自分で登記を申請する場合でも、原則として登録免許税は納めなければなりません。
登録免許税はどのように納付する?
書面で登記を申請する場合は、一般的に登録免許税に相当する収入印紙を購入し、台紙に貼り付けて申請書と一緒に提出します。
登録免許税が高額になる場合には、金融機関などで現金納付し、その領収証書を登記申請書へ添付する方法もあります。
また、オンラインで登記を申請する場合は、電子納付を利用することも可能です。
収入印紙と収入証紙を間違えないように注意
登録免許税の納付に使用するのは、原則として国が発行する収入印紙です。
登録免許税の基本的な計算方法
不動産の名義変更にかかる登録免許税は、原則として次の計算式で算出します。
登録免許税=不動産の固定資産税評価額×税率
計算の基準になるのは、売買代金や市場価格ではありません。原則として、市区町村の固定資産課税台帳に登録されている固定資産税評価額を使用します。
たとえば、不動産を3,000万円で購入しても、その固定資産税評価額が2,000万円であれば、基本的には2,000万円をもとに登録免許税を計算します。
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税の課税明細書や、市区町村で取得できる固定資産評価証明書などで確認できます。
土地と建物は分けて計算する
土地付きの中古住宅などを購入する場合は、土地と建物の固定資産税評価額を分けて計算します。
なぜなら、土地と建物では適用される税率や軽減措置が異なる場合があるからです。
たとえば、売買による土地の所有権移転登記には1.5%、一定の要件を満たす住宅用家屋には0.3%の税率が適用されることがあります。
土地と建物の評価額を単純に合計し、同じ税率を掛ければよいとは限りません。
名義変更の原因によって登録免許税の税率が変わる
不動産の名義変更では、なぜ名義が変わるのかによって登録免許税の税率が異なります。
主な税率は次のとおりです。
| 名義変更の原因 | 原則的な税率 | 評価額1,000万円の場合 |
|---|---|---|
| 相続 | 0.4% | 4万円 |
| 贈与 | 2% | 20万円 |
| 離婚による財産分与 | 2% | 20万円 |
| 土地の売買 | 原則2% | 20万円 |
| 建物の売買 | 原則2% | 20万円 |
同じ評価額1,000万円の不動産でも、相続なら4万円、贈与なら20万円です。
「名義を書き換えるだけだから、費用も同じだろう」と考えていると、予想以上の登録免許税がかかることがあります。
大切なのは、誰から誰へ名義を変更するのかだけでなく、「相続・贈与・売買・財産分与のどれに該当するのか」を確認することです。
相続による名義変更の登録免許税
相続による所有権移転登記の税率は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の場合は、次のように計算します。
1,000万円×0.4%=4万円
評価額が2,000万円であれば、登録免許税は8万円です。
相続による名義変更は、贈与や財産分与と比べて税率が低く設定されています。
ただし、不動産が複数ある場合や、共有持分だけを相続する場合は、課税対象となる評価額を正確に整理しなければなりません。
また、一定の要件を満たす土地については、後述する免税措置を利用できる場合があります。
贈与による名義変更の登録免許税
贈与による所有権移転登記の税率は、固定資産税評価額の2%です。
たとえば、固定資産税評価額が1,000万円の場合は、次のようになります。
1,000万円×2%=20万円
相続による名義変更であれば4万円なので、同じ不動産でも贈与では5倍の登録免許税がかかります。
さらに、不動産の贈与では、登録免許税だけでなく、贈与税や不動産取得税が課税される可能性もあります。
たとえば、「いずれ子どもが相続するのだから、元気なうちに名義だけ変えておこう」と考えるケースがあります。
しかし、名義を無償で変更すると、原則として贈与になります。親子間や夫婦間であっても同じです。
登録免許税だけを見て手続きを進めるのではなく、贈与税や不動産取得税を含めた全体の負担を確認することが大切です。
離婚による財産分与の登録免許税
離婚に伴う財産分与によって不動産の名義を変更する場合、登録免許税の税率は原則として固定資産税評価額の2%です。
たとえば、夫名義の自宅を離婚後に妻名義へ変更し、その不動産の固定資産税評価額が1,000万円であれば、登録免許税は20万円になります。
財産分与は婚姻中に形成した財産を夫婦間で清算するものであるため、通常の範囲であれば贈与税は課税されないのが一般的です。
ただし、登録免許税は別です。
「財産分与だから税金はかからない」と思っていても、不動産の名義変更登記には原則として2%の登録免許税がかかります。
また、財産分与の内容が過大な場合には贈与税が問題になることがあります。財産を渡す側に譲渡所得税が課税される可能性もあります。
住宅ローンが残っている自宅を財産分与する場合は、金融機関との調整も必要です。夫婦だけの話し合いで名義を変更できるとは限らないため、注意しましょう。
売買による名義変更の登録免許税
売買による所有権移転登記の税率は、土地・建物ともに原則2%です。
ただし、実際の不動産売買では、土地や住宅用家屋について軽減措置が設けられています。
そのため、「売買なら必ず2%」というわけではありません。
特に、自分で住むための住宅を購入する場合は、住宅用家屋証明書を取得できるかどうかで建物の登録免許税が大きく変わります。
土地の売買には1.5%の軽減税率が適用される
土地を売買により取得した場合、本来の登録免許税率は2%ですが、軽減措置によって1.5%となります。
この軽減措置の適用期限は、2029年3月31日までです。
たとえば、土地の固定資産税評価額が2,000万円の場合は、次のようになります。
本来の登録免許税
2,000万円×2%=40万円
軽減後の登録免許税
2,000万円×1.5%=30万円
このケースでは、軽減措置によって登録免許税が10万円安くなります。
なお、この軽減税率は、土地の売買による所有権移転登記に適用されるものです。贈与や財産分与による名義変更に適用されるわけではありません。
期限と税率は、国税庁「登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」で確認できます。
住宅の売買では0.3%まで軽減される場合がある
個人が自分で住むために住宅を購入した場合、一定の要件を満たせば、建物の所有権移転登記の税率が2%から0.3%へ軽減されます。
たとえば、建物の固定資産税評価額が1,000万円の場合は、次のようになります。
本来の登録免許税
1,000万円×2%=20万円
軽減後の登録免許税
1,000万円×0.3%=3万円
このケースでは、17万円もの差が生じます。
軽減措置を受けるためには、主に次のような要件を満たす必要があります。
- 個人が取得する住宅であること
- 自分で居住するための住宅であること
- 床面積が50平方メートル以上であること
- 取得後1年以内に登記を受けること
- 市区町村が発行する住宅用家屋証明書を添付すること
- 中古住宅の場合は、一定の耐震基準を満たしていること
この軽減措置の適用期限は、2027年3月31日までです。
重要なのは、原則として登記申請時に住宅用家屋証明書を添付しなければならないことです。
「登記が終わってから証明書を提出すればよい」というものではありません。利用できる軽減措置を見落とさないよう、登記を申請する前に確認しましょう。
詳しい税率は、国税庁「登録免許税の税額表」に掲載されています。
長期優良住宅などはさらに税率が下がることがある
購入する住宅が認定長期優良住宅や認定低炭素住宅などに該当する場合は、一般的な住宅用家屋よりもさらに低い税率が適用されることがあります。
また、宅地建物取引業者が一定の増改築を行った中古住宅についても、特別な軽減措置が用意されています。
ただし、住宅の種類、建物の構造、新築か中古か、一戸建てかマンションかなどによって税率や必要書類が変わります。
不動産会社から「軽減措置を利用できます」と案内されていても、最終的には登記上の要件と必要書類を確認することが重要です。
相続登記には免税措置がある
相続による名義変更の税率は原則0.4%ですが、一定の場合には登録免許税が免税になります。
2027年3月31日まで、主に次の2つの免税措置が設けられています。
相続人が登記をしないまま亡くなった場合
たとえば、祖父が亡くなって父が土地を相続したものの、父名義への相続登記をしないまま父も亡くなったとします。
この場合、現在の相続人である子は、原則として次の2段階の相続登記を行います。
- 祖父から父への相続登記
- 父から子への相続登記
一定の要件を満たせば、このうち「祖父から父への相続登記」にかかる登録免許税が免税になります。
ただし、「父から子への相続登記」まで自動的に免税になるわけではありません。
評価額100万円以下の土地を相続した場合
相続登記の対象となる土地の固定資産税評価額が100万円以下である場合、その土地の相続登記にかかる登録免許税が免税になることがあります。
以前は10万円以下とされていましたが、現在の基準は100万円以下です。
なお、この免税措置の対象は土地です。評価額100万円以下の建物が当然に免税になるわけではありません。
これらの相続登記に関する免税措置の適用期限は、2027年3月31日までです。詳しくは、国税庁「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税について」で確認できます。
登録免許税を計算するときの注意点
登録免許税は「評価額に税率を掛けるだけ」と思われがちですが、実際にはいくつか注意点があります。
売買代金ではなく固定資産税評価額を使う
登録免許税の計算では、原則として固定資産税評価額を使います。
実際に売買した金額、不動産会社の査定額、相続税の路線価などをそのまま使うわけではありません。
共有持分を取得する場合は持分を考慮する
不動産全体ではなく、2分の1などの共有持分だけを取得する場合は、原則として取得する持分に対応する評価額をもとに計算します。
たとえば、評価額1,000万円の不動産について、2分の1の持分だけを贈与する場合、課税標準となる金額は原則として500万円です。
500万円×2%=10万円
この場合の登録免許税は10万円となります。
年度が変わると使用する評価額も変わる
固定資産税評価額は、年度によって変わることがあります。
年度をまたいで登記を申請する場合は、登記申請時点の年度に対応する固定資産評価証明書などが必要です。
特に、3月末から4月初めに登記を申請する場合は注意しましょう。
軽減措置には期限がある
登録免許税の軽減措置は、税制改正によって延長・変更・終了することがあります。
現在利用できる軽減措置であっても、登記を申請する時期によっては適用できない可能性があります。
実際に登記を行う際は、申請時点の制度を確認することが大切です。
登録免許税の計算に迷ったら専門家へ相談を
登録免許税は、不動産の固定資産税評価額と名義変更の原因が分かれば、おおよその金額を計算できます。
しかし、次のようなケースでは計算や判断が複雑になります。
- 土地と建物で異なる税率が適用される
- 共有持分の一部だけを移転する
- 複数回の相続が発生している
- 住宅用家屋証明書を取得できるか分からない
- 長期優良住宅などの特例を利用できる可能性がある
- 相続登記の免税措置を利用できる可能性がある
特に住宅の売買では、住宅用家屋証明書を取得できるかどうかで、登録免許税が数万円から数十万円変わることがあります。
軽減措置の中には、登記が終わってから気づいても利用できないものがあります。
「たぶんこの税率だろう」と進めるのではなく、登記を申請する前に確認しておきましょう。
司法書士法人あやめ池事務所では、不動産の名義変更に必要な登録免許税や、利用できる軽減措置を確認したうえで手続費用をご案内しています。
相続・贈与・離婚・売買など、不動産の名義変更にかかる費用が分からない場合は、お気軽にご相談ください。



