※この記事は、2026年8月に内容を見直し、離婚後も夫が住宅ローンを支払い、妻が持ち家に住み続ける場合の名義変更・銀行への相談・仮登記について加筆・修正しています。

夫が住宅ローンを払い、妻が家に住み続ける方法とは?

離婚後は夫が家を出る。

妻と子どもは、これまでどおり現在の家に住み続ける。

住宅ローンについては、夫が引き続き返済する。

そして、できれば家の名義は妻へ変更したい。

離婚時には、このようなご相談がよくあります。

前提条件を整理すると、次のようになります。

現在の家の名義
夫の単独所有
住宅ローンの債務者
離婚後に住む人
妻・子ども
住宅ローンを払う人
希望する家の名義

一見すると、

「夫がローンを払うことに合意しているなら、家だけ妻名義に変えればいいのでは?」

と思うかもしれません。

ところが、ここに住宅ローンが残っていることによる問題があります。

住宅ローンが残っている不動産の名義を、銀行に何も伝えず夫から妻へ変更することはおすすめできません。

住宅ローン契約では、担保不動産の所有権を変更する場合や債務者が転居する場合などについて、金融機関との関係で一定の制約が設けられていることがあるためです。

そのため、このパターンでは、まず金融機関へ相談するところから始めます。

なお、離婚時の住宅ローンには、一括返済、夫が返済を継続、妻への債務者変更・借換えなど複数の方法があります。
全体を比較したい方は、

離婚時の住宅ローンと家の名義|パターン別3つの処理方法

をご覧ください。


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手続の流れは「銀行の回答」で分かれる

夫が住宅ローンを払い続け、妻が持ち家を取得したい場合、おおまかな流れは次のとおりです。

  1. 持ち家の価値・住宅ローン残高を確認する
  2. 住宅ローンを借りている銀行へ相談する
  3. 妻への名義変更について銀行の回答を確認する
  4. 回答に応じて離婚協議書・登記手続を準備する

ここで大きく2つに分かれます。

銀行が妻への名義変更を認めた場合

離婚協議書を作成

離婚成立

夫から妻へ財産分与による所有権移転登記

銀行が妻への名義変更を認めない場合

離婚協議書を作成

夫が住宅ローンを払い続ける

完済まで夫名義を維持

必要に応じて所有権移転仮登記を検討

住宅ローン完済後に妻へ名義変更

このパターンでは「銀行が妻への名義変更を認めるか」が大きな分岐点になります。

STEP1 持ち家の価値と住宅ローン残高を確認する

銀行へ相談する前に、まず現在の状況を整理しておきましょう。

最低限確認したいのは、次の内容です。

  • 現在の持ち家の名義
  • 持ち家の現在価値
  • 住宅ローン残高
  • 住宅ローンの残存期間
  • 毎月の返済額
  • 離婚後に誰が住むのか
  • 住宅ローンを誰が支払うのか
  • 最終的に誰が家を取得するのか

例えば、次のケースを考えてみましょう。

持ち家の現在価値:3,000万円

住宅ローン残高:1,500万円

残存期間:15年

現在の名義:夫

住宅ローン債務者:夫

離婚後の居住者:妻と子ども

夫が今後15年間住宅ローンを払い続け、最終的に妻が家を取得するのであれば、家だけではなく、預貯金その他の夫婦共有財産も含めて財産分与の内容を検討する必要があります。

「誰がローンを払うか」と「誰が家を取得するか」は別々に考えず、財産分与全体の中で整理することが重要です。

持ち家の評価方法については、

離婚時の持ち家の評価方法

で詳しく解説しています。

STEP2 住宅ローンを借りている銀行へ相談する

現在の状況を把握したら、住宅ローンを借りている金融機関へ相談します。

ここは非常に重要です。

住宅ローンは通常、本人やその家族が住宅として利用することを前提とした商品です。

さらに、担保となっている不動産の所有者を変更する場合について、金融機関との契約上の制約が設けられていることがあります。

そのため、

「離婚するので夫は家を出ます。住宅ローンは夫が払い続けますが、妻と子どもが住み続け、できれば家を妻名義に変更したいです。」

と事情を説明して相談します。

銀行へ確認したい3つの事項

具体的には、次の3点を確認します。

  • ① 離婚後、夫が自宅から転居すること
  • ② 住宅ローンは夫が引き続き返済すること
  • ③ 担保となっている持ち家を妻名義へ変更すること

特に重要なのが③です。

「夫が住宅ローンを払い続けること」と「家を妻名義に変更できること」は別問題です。

夫が返済を続けることについて話がまとまっても、妻への所有権移転について金融機関が難色を示すことがあります。

銀行へ相談せずに名義変更するとどうなる?

「夫婦間では話がまとまっているから、銀行には言わず名義変更してしまおう」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、これはおすすめできません。

住宅ローン契約の内容によっては、担保不動産の所有権移転について金融機関への届出や承諾等が必要とされている場合があります。

契約に反する行為があった場合、金融機関から是正を求められたり、状況によってはローン契約上の問題になる可能性があります。

「登記ができるか」と「住宅ローン契約上問題がないか」は別の話です。

法務局が財産分与による所有権移転登記を受け付けることと、銀行がその名義変更を認めることは同じではありません。

したがって、住宅ローンが残っている状態で名義変更する場合には、事前に金融機関へ確認することをおすすめします。

STEP3 銀行が妻への名義変更を認めた場合

金融機関から、

  • 夫が転居すること
  • 夫が住宅ローンを返済し続けること
  • 妻へ持ち家を名義変更すること

について問題ないとの回答を得られた場合には、比較的シンプルです。

離婚協議書を作成し、離婚成立後、財産分与による所有権移転登記を行います。

ただし、ここでも注意があります。

家は妻名義になっても、住宅ローンの債務者は夫のままです。

つまり、

不動産の所有者:妻

住宅ローン債務者:夫

という状態になります。

妻が家の所有者になったからといって、夫の住宅ローン返済義務がなくなるわけではありません。

この関係は離婚後も長期間続く可能性があります。

そのため、離婚協議書には住宅ローンの支払いについて明確に記載しておく必要があります。

STEP4 銀行が妻への名義変更を認めない場合

実務上、こちらが問題になりやすいケースです。

銀行から、

「夫が返済を続けることは構わないが、住宅ローンが残っている間は妻への名義変更は認められない」

という回答を受けることがあります。

この場合には、今すぐ妻へ名義変更することをいったん見送り、住宅ローン完済後に妻へ名義変更するという方法を検討します。

例えば、

夫が離婚後も住宅ローンを返済

妻と子どもが家に住み続ける

住宅ローン完済

抵当権抹消

夫から妻へ財産分与による名義変更

という流れです。

ただし、住宅ローン完済まで10年、15年、20年と残っている場合には、大きな問題があります。

現在は夫婦間で合意していても、10年後、20年後に夫が名義変更へ協力してくれる保証はありません。

そこで検討されるのが、所有権移転仮登記です。

「住宅ローン完済後に名義変更する」という約束をどう守る?

例えば、現在45歳の夫が、65歳まで住宅ローンを支払うケースを考えてみましょう。

離婚時には、

「完済したら妻へ家を名義変更する」

と合意していたとします。

しかし20年後には、

  • 元夫と連絡が取れない
  • 元夫が再婚している
  • 元夫が死亡している
  • 元夫について相続が発生している
  • 元夫に債務問題が生じている
  • 元夫が不動産を処分しようとする

など、さまざまな事情が生じる可能性があります。

離婚協議書を作成しているからといって、長期間何も問題が起こらないとは限りません。

そこで、住宅ローン完済を条件として妻へ所有権を移転することについて、条件付所有権移転仮登記を行うという方法を検討します。

仮登記を行うことで、将来一定の条件が成就した場合に妻へ所有権を移転するという権利関係を、登記記録上に示しておくことができます。

ただし、仮登記をすれば将来の名義変更が完全に保証されるという意味ではありません。

あくまで、将来の所有権移転に備えるための手段の一つとして検討します。

離婚協議書を作成する

銀行への相談が終わり、今後の処理方法が決まったら、離婚協議書を作成します。

このケースでは特に、「夫が住宅ローンを払い続ける」という約束をどこまで具体的に書くかが重要になります。

例えば、次のような事項を整理します。

  • 夫が住宅ローンを継続して支払うこと
  • 妻と子どもが自宅へ居住すること
  • 住宅ローン返済口座をどのように管理するか
  • 妻が返済状況を確認する方法
  • 繰り上げ返済をする場合の扱い
  • 銀行が名義変更を認めた場合の手続
  • 銀行が名義変更を認めない場合の手続
  • 完済後に妻へ名義変更すること
  • 仮登記を行うか
  • 登記費用を誰が負担するか

離婚協議書の記載例

一例としては、次のような内容が考えられます。

第1項

夫は、妻が現在居住する別紙物件目録記載の不動産に関する、夫を債務者とする住宅ローンについて、責任をもって支払いを継続する。

第2項

夫は妻に対し、金融機関の承諾を得た場合には、財産分与として、別紙物件目録記載の土地・建物について所有権移転登記手続を行う。

第3項

金融機関から前項の承諾を得られない場合には、夫は妻に対し、住宅ローン完済後、財産分与による所有権移転登記手続に協力する。

第4項

夫は、前項の所有権移転登記に備え、妻が本件不動産に関する権利を保全するために必要となる条件付所有権移転仮登記手続に協力する。

※上記は説明のための一例です。実際の離婚協議書は、銀行の回答や夫婦間の合意内容を踏まえて個別に作成する必要があります。

「夫が住宅ローンを払う」という一文だけでは足りない

このケースでは、

「住宅ローンは夫が支払う」

だけで離婚協議書を終わらせない方がよいでしょう。

例えば、離婚後5年して夫が住宅ローンを滞納したとします。

妻がその事実を知らなければ、督促や競売等の問題が進んでから気付く可能性もあります。

そこで、住宅ローンの返済状況を妻がどのように確認するのかについても検討しておく価値があります。

もちろん、金融機関が債務者ではない妻へ直接ローン情報を開示してくれるとは限りません。

そのため、夫婦間の取り決めとして、

「毎年○月までに、住宅ローン残高証明書その他返済状況が確認できる資料を妻へ提示する」

などの方法を検討することも考えられます。

これは、夫が住宅ローンを払い続けるパターン特有の重要なポイントです。

離婚協議書は私文書?公正証書?

住宅ローンの支払いが10年、20年と続く場合には、離婚協議書をどのような形式で作成するかも検討しておきましょう。

通常の離婚協議書として作成する方法もあれば、公正証書として作成する方法もあります。

ただし、公正証書にすれば住宅ローンの返済や将来の名義変更がすべて自動的に保証されるわけではありません。

重要なのは、「公正証書にするかどうか」だけではなく、将来起こり得る問題を想定して合意内容を具体的にしておくことです。

詳しくは、

離婚協議書は私文書?公正証書?両者の違い

をご覧ください。

登記書類や離婚届を準備する

銀行への相談と離婚協議書の作成が終われば、実際の手続に必要な書類を準備します。

銀行が妻への名義変更を認めた場合には、財産分与による所有権移転登記を準備します。

一般的には、次のような書類が必要になります。

  • 登記申請書
  • 登記識別情報または登記済証
  • 登記原因証明情報
  • 夫の印鑑証明書
  • 妻の住民票
  • 固定資産評価額を確認できる書類
  • 委任状(司法書士へ依頼する場合)

一方、住宅ローン完済まで所有権移転を待ち、条件付所有権移転仮登記を行う場合には、その内容に応じた登記書類を準備します。

必要書類や登記原因の内容は個別の合意によって異なるため、仮登記を利用する場合には事前に司法書士へ相談しておくことをおすすめします。

住所変更登記が必要になるケースもある

夫の現在住所と登記簿上の住所が異なる場合には、所有権移転登記や仮登記の前提として住所変更登記が必要になることがあります。

例えば、

登記簿上の住所:奈良市A町1番地

現在の住所:奈良市B町2番地

となっているケースです。

この場合、住民票や戸籍の附票などを利用して住所変更の経緯を確認します。

さらに、離婚後に夫が転居してしまうと、住所関係が複雑になることもあります。

できれば離婚届を提出する前に、現在の登記簿と必要書類を確認しておきましょう。

離婚成立後に名義変更または仮登記を申請する

必要書類が整ったら、離婚届を提出し、離婚成立後に予定していた登記手続を進めます。

銀行から妻への名義変更について承諾を得ているのであれば、財産分与による所有権移転登記を行います。

銀行が名義変更を認めず、夫名義を維持するのであれば、離婚協議書の内容に従い、必要に応じて条件付所有権移転仮登記を検討します。

離婚届だけ先に提出して、持ち家については「また後で考えよう」と放置するのはおすすめできません。

離婚後はそれぞれ生活環境が変わり、連絡が取りにくくなることもあります。

離婚前に可能な限り方向性を決め、必要な書類まで準備しておきましょう。

この方法で最も注意したいのは「夫の住宅ローン滞納」

夫が住宅ローンを払い続け、妻と子どもが家に住む方法には大きなリスクがあります。

それが、離婚後に夫が住宅ローンを支払えなくなることです。

例えば、

  • 夫が失業する
  • 病気などで収入が減る
  • 再婚して家計状況が変わる
  • 別の借金を抱える
  • 住宅ローンの支払いを止める

といった可能性があります。

住宅ローンが滞納されれば、最終的には担保不動産について競売等の問題が生じる可能性があります。

妻がその家に住み続けていても、住宅ローン契約上の債務者が夫である以上、妻が「離婚協議書で家をもらうことになっている」と銀行へ主張するだけで解決する問題ではありません。

この方法は「離婚後も元夫の返済能力と支払意思に、妻の住居が一定程度左右される」という構造を理解したうえで選ぶ必要があります。

できれば妻への債務者変更・借換えも検討する

そのため、妻に一定の収入がある場合には、

  • 現在の金融機関で妻への債務者変更ができないか
  • 妻が新たに住宅ローンを組み、他の金融機関へ借り換えられないか

も検討する価値があります。

妻が住宅ローンの債務者となり、家も妻名義にできれば、

不動産の所有者:妻

住宅ローン債務者:妻

居住者:妻

となり、離婚後の権利関係はかなりシンプルになります。

ただし、妻について住宅ローン審査があります。

年収、勤務先、勤続年数、年齢、住宅ローン残高、不動産の評価などによっては、希望どおり進まないこともあります。

財産分与として「もらいすぎ」にならないかも確認する

夫が住宅ローンを払い続け、そのうえ妻が家を取得する場合には、財産分与全体のバランスにも注意が必要です。

例えば、

家の現在価値:4,000万円

住宅ローン残高:1,000万円

というケースと、

家の現在価値:2,000万円

住宅ローン残高:3,000万円

というケースでは、状況がまったく異なります。

さらに、住宅ローンを夫が離婚後も負担し続けるのであれば、その負担を財産分与全体の中でどのように考えるのかという問題もあります。

婚姻期間、住宅購入時の資金負担、預貯金などその他の財産も含めて整理する必要があります。

「妻が家をもらう」という結果だけを見るのではなく、住宅ローンも含めた夫婦全体の財産関係を見ることが重要です。

持ち家の価値をどのように考えるかについては、

離婚時の持ち家の評価方法

も参考にしてください。

銀行から名義変更を断られても、そこで終わりではない

このケースでよくあるのが、

「銀行から妻への名義変更はできないと言われた。もう方法はないですよね?」

というご相談です。

しかし、必ずしもそうではありません。

銀行が「今すぐ妻名義にすること」を認めないのであれば、

  • 夫が住宅ローンを払い続ける
  • 完済後に妻へ名義変更する
  • 離婚協議書で将来の名義変更を約束する
  • 必要に応じて仮登記を利用する
  • 将来的に妻への債務者変更や借換えを再検討する

など、現状でできる対策を組み合わせることができます。

100%希望どおりの形にできない場合でも、「何もしない」のと「将来に備えてできる手続をしておく」のとでは大きな違いがあります。

離婚届だけを提出して、

「家のことは、そのうち考えよう」

とするのが、一番避けたい状態です。

まとめ|夫がローンを払う場合は「今」と「完済時」の両方を決めておく

夫が住宅ローンを払い続け、妻が家に住み続ける方法では、離婚時点だけを見てはいけません。

住宅ローンが10年残っているのであれば10年後、20年残っているのであれば20年後まで考えて手続を組み立てる必要があります。

特に確認しておきたいのは、次の点です。

  • 銀行へ離婚後の利用方法を相談したか
  • 妻への名義変更について銀行へ確認したか
  • 住宅ローンを誰が支払うか決めたか
  • 妻が返済状況を確認する方法を考えたか
  • 住宅ローン完済後に誰が家を取得するか決めたか
  • 離婚協議書へ具体的に記載したか
  • 必要に応じて仮登記を検討したか
  • 妻への債務者変更や借換えの可能性を検討したか

最大のポイントは、「夫がローンを払う」という約束だけで終わらせないことです。

住宅ローン完済まで長期間かかるのであれば、完済後の名義変更まで含めて離婚時に設計しておきましょう。


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