【2026年8月リライト】
2026年4月から始まった住所等変更登記の義務化など、最新の制度にあわせて記事内容を全面的に見直しました。

不動産の名義変更は自分でできる?

「不動産の名義変更って、自分でもできるんですか?」

司法書士をしていると、よく聞かれる質問です。

結論からいうと、自分が当事者となる不動産の名義変更登記を、自分で申請することは可能です。

必ず司法書士へ依頼しなければならないわけではありません。

ただし、「自分でできる=簡単」ではありません。

不動産の名義変更には、主に次のようなものがあります。

  • 相続による名義変更
  • 贈与による名義変更
  • 売買による名義変更
  • 離婚・財産分与による名義変更

同じ「不動産の名義変更」でも、名義を変更する理由によって、必要書類・登録免許税・確認すべきポイントが変わります。

例えば、親から子へ不動産を贈与するケースと、亡くなった親から子へ相続するケースでは、必要になる書類も税金も違います。

そのため、自分で登記をする場合には、まず「なぜ不動産の名義を変更するのか」を整理するところから始めましょう。

売買による名義変更を自分で進めたい方は、

不動産売買の名義変更を自分でする手順

も参考にしてください。

比較的シンプルな登記であれば、自分で調べながら手続きすることも十分可能です。

一方、売買代金の支払いが伴う場合や住宅ローンが関係する場合、相続関係が複雑な場合などは、司法書士へ依頼した方が安全なこともあります。

ここからは、不動産の名義変更を自分で行う場合に、特に注意してほしいポイントを実務目線で解説します。

注意点1|いきなり法務局へ行っても名義変更はできない

不動産の名義変更を自分でするときによくある勘違いが、

「とりあえず法務局へ行けば何とかなるだろう」

というものです。

市役所などの手続きでは、窓口へ行って申請書を書けば、その場で手続きを進められることがあります。

しかし、不動産登記は少し違います。

法務局の窓口で、

「この不動産を父から私の名義に変えてください」

と申し出れば、法務局が必要書類を作って名義を書き換えてくれるわけではありません。

登記申請書や必要な添付書類を申請する側で準備して、法務局へ申請するのが基本です。

まず登記簿を確認する

最初に確認したいのが、現在の登記内容です。

例えば、「父の不動産を相続する」と思っていたのに、登記簿を取得してみると祖父名義のままだった、ということもあります。

また、売主の現在住所と、登記簿に記載された住所が違っていることもあります。

まず対象となる不動産の登記情報を確認しておきましょう。

  • 現在の所有者は誰か
  • 所有者の住所はどうなっているか
  • 抵当権などが付いていないか

必要書類を調べて準備する

必要書類は、名義変更の原因によって違います。

相続なら戸籍や遺産分割協議書などが必要になることがありますし、贈与なら贈与契約書、売買なら売買契約書などを準備します。

さらに、法務局へ提出する登記申請書も作成しなければなりません。

登記簿の確認 → 必要書類の収集 → 申請書の作成 → 登録免許税の確認 → 登記申請

「法務局へ行ってから考える」のではなく、事前準備を済ませてから申請すると考えておきましょう。

法務局へ相談する場合も事前に確認を

自分で登記を進める場合、途中で分からないことが出てくることもあるでしょう。

法務局では登記手続に関する案内を受けられる場合がありますが、相談方法や予約の取扱いなどは、管轄の法務局へ事前に確認することをおすすめします。

また、法務局は司法書士のように当事者の代理人となって、契約書や遺産分割協議書を作成してくれる場所ではありません。

法務局へ行けば全部やってもらえるわけではないという点は覚えておきましょう。

注意点2|住所変更登記を見落とさない

売買や贈与などの名義変更で、意外と見落としやすいのが所有者の住所です。

例えば、登記簿には以前住んでいた住所が記載されているのに、現在は別の住所へ引っ越しているケースです。

引っ越しをして住民票を移したからといって、不動産の登記簿上の住所まで自動的に変更されるわけではありません。

そのため、不動産の名義変更をする前に、登記簿に記載されている住所と現在の住所が一致しているか確認しておく必要があります。

2026年4月から住所等変更登記も義務化

ここは、以前の記事から大きく制度が変わったポイントです。

2026年4月1日から、不動産所有者の住所・氏名等の変更登記が義務化されました。

そのため、「住所が違っていても、売却するときまでそのままでいい」という考え方ではなくなっています。

住所や氏名に変更があった場合には、現在の制度に沿って対応する必要があります。

何度も引っ越している場合は要注意

1回の引っ越しであれば、住所のつながりを証明するのは比較的簡単なケースもあります。

ところが、奈良市 → 大阪市 → 京都市 → 奈良市というように何度も引っ越している場合、登記簿上の住所から現在住所までのつながりを証明しなければならないことがあります。

古い住民票や戸籍の附票などが取得できない場合もあり、住所の履歴がつながらないケースでは登記の難易度が一気に上がります。

注意点3|原本還付を忘れない

自分で登記をするときに、ぜひ知っておいてほしいのが「原本還付」です。

原本還付とは、登記申請のために提出した書類の原本を、一定の手続きをしたうえで返却してもらうことです。

例えば、相続手続きでは戸籍や遺産分割協議書などを、登記以外でも使用することがあります。

銀行の相続手続きにも使いたいのに、登記申請で原本を提出したまま返ってこないとなると困ります。

そこで利用するのが原本還付です。

コピーを出せば自動的に返してくれるわけではない

ここは、自分で登記する方が勘違いしやすいポイントです。

単に原本とコピーを一緒に提出すれば、それだけでよいとは限りません。

原本還付を受けるためには、必要な方法に従ってコピーを作成し、原本との相違がない旨などを記載して申請します。

法務局が申請人の代わりに提出書類をコピーして、原本を返してくれるわけではありません。

また、すべての添付書類が同じように原本還付できるわけでもありません。

自分で申請する場合は、「この書類は後の手続きでも使うから返してほしい」というものがないか、申請前に確認しておきましょう。

注意点4|登録免許税の計算を間違えない

不動産の名義変更登記をするときには、原則として登録免許税がかかります。

この登録免許税も、自分で登記するときに間違いやすいポイントのひとつです。

特に注意したいのが、名義変更の原因によって税率がかなり違うことです。

相続・贈与・売買では登録免許税が大きく違う

代表的な所有権移転登記の税率を簡単に比較すると、次のようになります。

名義変更の原因 基本的な登録免許税率
相続 固定資産評価額 × 0.4%
贈与 固定資産評価額 × 2%
離婚による財産分与 固定資産評価額 × 2%
売買 固定資産評価額 × 2%
※土地・住宅用家屋などは軽減措置あり

例えば、固定資産評価額が1,000万円の不動産なら、単純計算では、

  • 相続:4万円
  • 贈与:20万円

となります。

同じ1,000万円の不動産でも、名義変更の原因によって登録免許税が5倍になることがあります。

「名義変更だから、だいたいこの税率だろう」と思い込んで計算するのは危険です。

登録免許税を少なく計算していれば追加で納付する必要がありますし、多く納めてしまった場合には還付の対応が必要になることがあります。

「評価額」と「課税標準額」を間違えない

登録免許税を自分で計算するときに、もうひとつ注意したいのが固定資産税関係の書類です。

書類を見ると、「価格」「評価額」「課税標準額」など、似たような金額が並んでいることがあります。

登録免許税の計算で使用する金額を間違えると、当然、算出される税額も変わってしまいます。

数字だけを見て判断せず、登録免許税の課税価格として使用する金額をきちんと確認してから計算しましょう。

軽減措置の見落としにも注意

そして、自分で登記をする場合にぜひ知っておいてほしいのが、登録免許税の軽減措置です。

一定の要件を満たす不動産登記では、本来の税率より登録免許税が安くなることがあります。

ここで重要なのが、法務局から「あなたの場合はこの軽減措置が使えますよ」と積極的に教えてもらえるとは限らないという点です。

基本的には、申請する側で利用できる軽減措置がないかを確認し、必要な証明書などを準備して申請します。

住宅用家屋証明書で登録免許税が大きく安くなることも

分かりやすい例が、マイホームを購入した場合に利用することがある「住宅用家屋証明書」です。

一定の要件を満たす住宅について、市区町村で住宅用家屋証明書を取得して登記申請時に提出すると、所有権移転登記や抵当権設定登記などについて登録免許税の軽減を受けられる場合があります。

例えば、中古住宅の売買による建物の所有権移転登記では、通常の税率が2%であるのに対して、一定の要件を満たし住宅用家屋証明書を添付すると、税率が0.3%になるケースがあります。

固定資産評価額1,000万円の建物なら

通常:20万円 → 軽減後:3万円

差額は17万円です。

これは決して小さな差ではありません。

住宅用家屋証明書を取得せず、軽減措置を利用しないまま登記を申請すれば、本来より高い登録免許税を納付することにもなりかねません。

登録免許税は「税率を間違えない」だけではなく、「使える軽減措置を見落とさない」ことまで確認する必要があります。

詳しくは、

不動産名義変更の登録免許税と軽減措置

も参考にしてください。

注意点5|登記完了後の書類の受け取りまで考えておく

登記申請書を法務局へ提出したら、それで全部終了というわけではありません。

登記が完了すると、登記完了証や登記識別情報などの書類を受け取ることになります。

特に重要なのが登記識別情報です。

登記識別情報は、いわゆる昔の「権利証」に相当する重要な情報です。

将来、不動産を売却したり贈与したりするときに必要になることがあります。

受け取った登記識別情報は、紛失したり第三者に内容を見られたりしないよう、大切に保管してください。

自分で登記をする場合は、「申請するところまで」ではなく、「登記完了後の書類を受け取って保管するところまで」を一連の手続きとして考えておきましょう。

こんな不動産名義変更は司法書士に任せた方がいい

ここまで読んで、「思っていたより面倒そうだな……」と思った方もいるかもしれません。

とはいえ、すべての不動産名義変更を司法書士へ依頼する必要があるわけではありません。

書類関係がシンプルで、時間をかけて自分で調べられるのであれば、自分で登記に挑戦するのもひとつの方法です。

一方で、司法書士の立場から「これは無理に自分でやらない方がいい」と考えるケースもあります。

1.売買代金と引換えに名義変更する場合

不動産売買では、単に名義を書き換えるだけではありません。

買主は売主へ数百万円、数千万円という売買代金を支払い、その代わりに不動産の所有権を取得します。

例えば、2,000万円を売主へ振り込んだ後になって、「書類に問題があって所有権移転登記ができませんでした」となれば大変です。

そのため実際の不動産取引では、司法書士が事前に登記簿、権利証・登記識別情報、必要書類などを確認し、登記を申請できる状態であることを確認したうえで代金決済を進めるのが一般的です。

特に、不動産会社が仲介しない個人間売買では、当事者だけで契約から決済まで進めることになります。

登記だけでなく、取引全体の安全性を考えて、司法書士への依頼をおすすめしたいケースです。

2.住宅ローンが関係する場合

住宅ローンを利用して不動産を購入する場合も、自分で登記するのは現実的ではないケースが多くなります。

住宅ローンを利用する取引では、所有権移転登記だけでなく、金融機関の抵当権設定登記なども関係します。

銀行から数千万円の融資が実行されたのに、「所有権移転登記ができません」「抵当権設定登記ができません」では済みません。

住宅ローンを利用する不動産売買では、司法書士が登記手続に関与するのが一般的です。

「自分で登記して司法書士費用を節約したい」と考えている場合でも、住宅ローンを利用する予定なら、まず金融機関へ確認しておきましょう。

3.相続人が多い場合

相続登記は、相続人が少なく、相続関係も単純であれば、自分でできるケースもあります。

ところが、相続人が増えてくると話が変わります。

例えば、「父が亡くなり、母と子2人が相続人」というケースと、「子どものいない叔父が亡くなり、兄弟姉妹や、亡くなった兄弟姉妹の甥・姪が相続人」というケースでは、戸籍収集の難易度がまったく違います。

相続人を1人でも見落として遺産分割協議をしてしまえば、そのままでは登記できません。

相続人が多いケースでは、戸籍を正確に読み取り、相続人を確定する作業そのものが重要です。

兄弟姉妹相続、代襲相続、数次相続などが絡む場合は、最初から司法書士へ任せることを検討してよいでしょう。

4.登記簿の住所から何度も引っ越している場合

売買や贈与などをしようとして登記簿を確認すると、「住所が20年前に住んでいた家のままだった」ということがあります。

現在住所と1つ前の住所をつなげるだけなら、それほど難しくないケースもあります。

問題は、その間に何度も引っ越している場合です。

登記簿上の住所から現在住所まで、同一人物であることを住所の履歴によって確認する必要があります。

ところが、保存期間などの関係で古い住民票や戸籍の附票が取得できないこともあります。

「住所がつながらない」というのは、登記実務では珍しい問題ではありません。

こうなると通常の住所変更登記より判断が難しくなるため、司法書士へ相談した方がスムーズです。

5.権利証・登記識別情報を紛失している場合

「権利証が見つからないんですが、もう売却できませんか?」という相談もよくあります。

権利証や登記識別情報を紛失していても、不動産の売却や贈与が絶対にできなくなるわけではありません。

ただし、権利証や登記識別情報を再発行してもらうことはできません。

そのため、通常とは異なる本人確認等の手続きを検討する必要があります。

特に売買では注意が必要です。

決済当日になって、「そういえば権利証がありません」となると、予定していた取引をそのまま進められない可能性があります。

権利証がないことが分かっている場合は、決済直前まで放置せず、早い段階で司法書士へ相談してください。

6.何代も相続登記をしていない場合

相続登記の相談で登記簿を確認すると、「亡くなった父ではなく、祖父名義だった」ということがあります。

さらに調べると、「実は曾祖父名義だった」というケースもあります。

この場合、現在発生した相続だけを考えればいいとは限りません。

過去の相続までさかのぼり、各時点で誰が相続人だったのかを確認する必要があります。

例えば、曾祖父の相続を長年放置している間に、その子どもも、その孫も亡くなっていると、相続関係は枝分かれしていきます。

結果として、現在の相続人が十数人、数十人になっていることもあります。

相続登記は放置期間が長くなるほど、戸籍収集や相続関係の整理が大変になる傾向があります。

何代も前の名義になっている場合は、司法書士へ相談するメリットが大きいケースです。

7.贈与・離婚などで税金も関係する場合

「登記ができること」と「その方法が最もよいこと」は別問題です。

例えば、「親の不動産を子どもの名義にしたい」という相談で、贈与登記そのものは可能だったとします。

しかし、不動産を贈与すれば、贈与税や不動産取得税などが問題になる可能性があります。

贈与による名義変更については、

生前贈与による不動産名義変更の手順

でも詳しく解説しています。

離婚による財産分与でも、不動産の取得経緯や分け方などによって、税務上の確認が必要になるケースがあります。

財産分与による登記を自分で進めたい方は、

離婚・財産分与による不動産名義変更の手順

も参考にしてください。

司法書士は税務申告の専門家ではありませんので、具体的な税額計算や税務判断については税理士への確認が必要です。

ただ、登記実務を扱っている司法書士であれば、「登記する前に税理士へ確認した方がよさそうです」と気付けることがあります。

名義変更してから税金の問題に気付くのではなく、名義変更する前に登記と税金の両面から検討することが大切です。

自分でやるか、司法書士へ依頼するか迷ったら

不動産の名義変更は、自分でできる手続きです。

だからといって、すべての人が自分でやる必要もありません。

例えば、「相続人は母と自分だけ。必要書類もほぼ揃っていて、平日に手続きをする時間もある」という方なら、自分で挑戦する価値はあるでしょう。

反対に、

「相続人が10人いる」
「権利証がない」
「住宅ローンを使う」
「2,000万円の売買代金を支払う」

というケースまで、司法書士費用を節約するためだけに自分で登記する必要があるでしょうか。

不動産登記では、「自分でできるか」だけでなく、「自分でやるメリットがあるか」まで考えることが大切です。

まず自分で調べてみて、「これはできそう」と思えば自分で進める。

逆に、「思ったより複雑だな」「失敗したときのリスクが大きいな」と思えば、その時点から司法書士へ相談しても問題ありません。

費用面で迷っている方は、

不動産名義変更を自分でする場合と司法書士に依頼する場合の比較

も参考にしてください。

また、登録免許税だけでなく贈与税や不動産取得税なども気になる方は、

不動産名義変更でかかる税金一覧

をご覧ください。