司法書士が解説!自分で不動産名義変更をやる場合の注意点 5点
不動産の名義変更手続は、不動産の所在地を管轄する法務局で行うのですが、専門的で独特なルールが多々あります。些細な点を見逃しただけで、書類を作り直しや、再発行が必要になったり、余計に時間がかかったりと、手間と時間を要してしますことが多々あります。
そこで今回は、「自分で不動産の名義変更を行う場合に、よくあるミスや注意点」について、司法書士が解説します。
目次
【自分で登記する際の注意点1】いきなり法務局へ行かない!
不動産名義変更を自分でするときによくあるミスのひとつが「いきなり法務局に名義変更をしたい」と足を運ぶケースです。
自治体などの手続の場合は内容次第で足を運んですぐに手続きすることも可能です。ですが、不動産名義変更の場合は法務局にいきなり足を運んでも手続きはできません。法務局の窓口に「不動産の名義を書き換えてください」と申し出ればできる手続きでもないため注意が必要です。
自分で不動産名義変更登記をするときのよくあるミスを3つ紹介します。基本的なポイントなので、自分で手続きするときはおさえておいてください。
法務局での登記相談は予約してから行こう
不動産名義変更登記を自分でする場合、準備段階で分からないことが出てくることも少なくありません。
分からないことが出てきた場合に考えるのは「では、専門家に尋ねよう」ということではないでしょうか。
自分で不動産名義変更登記をするときに司法書士に相談すると、その分の費用(相談料など)がかかる可能性があります。
司法書士に相談すると費用が・・・という場合は、法務局の窓口での登記相談が可能です。
ただし、予約制になっており、電話での相談は受け付けていません。不動産名義変更を自分で行うために、法務局に相談する場合は、事前に予約を入れましょう。
あらかじめ添付書類を集めてから行こう
不動産名義変更の登記申請書や添付書類をそろえて提出しなければならないため、窓口に足を運ぶ前に登記の申請書や添付書類をそろえておく必要があるのです。
不動産名義変更で必要になる書類は相続や売買など「名義を書き換えることになった理由(原因)」によって変わってきます。必要書類をそろえるとしても、不動産名義変更登記の原因ごとに準備すべき書類の確認からはじめる必要があるのです。
自分で不動産名義変更の手続きをするときは、ミスを防ぐためにも必要な書類についてしっかり調べ、漏れなく準備してから窓口に足を運びましょう。
名義変更登記の申請までに2〜3回程度相談が必要
不動産名義変更登記には細かなルールがあります。ルールに沿っていないと法務局の窓口で登記申請書類を受理してもらえず、修正や差し戻しになるのです。
司法書士がスムーズに手続きできるのは、不動産名義変更登記の必要な法的な知識と実務経験がある他、登記の細かなルールにも通じているためです。自分で不動産名義変更登記をする場合は、司法書士のようにスムーズに手続きすることは極めて難しいと言えます。
自分でする名義変更登記では、何度か修正や作り直し、追加での書類取得などが発生すると覚悟しておきましょう。
自分で登記する際の注意点2】住所変更登記を見落としてしまう・・・
自分で不動産名義変更登記をするときのよくあるミスに「住所変更登記を見落とす」というミスがあります。
不動産名義変更の理由が売買や贈与などの場合は、住所が違う場合は変更する必要があるのです。自分で不動産名義変更登記をするときに住所変更をしていなかったなど、ミスするケースがあります。
住所変更登記とは
住所が変わったときに登記簿上の住所の記載を変更するための登記手続きです。
引っ越しをした場合、自動的に登記簿上の住所が修正されることはありません。引っ越しなどで住所が変わった場合は住所を変更した旨の、住所変更登記をしなければならないのです。
住所変更の確認方法
登記簿上の住所がどうなっているか確認するためには、登記事項証明書を取得することが必要です。
登記事項証明書を法務局から取得すると、所有者の欄に住所・氏名が記載されています。登記簿上の住所がどうなっているか確認し、必要であれば住所変更の登記をしましょう。
原本還付の処理を忘れる・・・
司法書士が登記手続きをするときは「原本還付」の処理をするケースがほとんどです。しかし、自分で不動産名義変更などの登記手続きをする際は原本還付の処理を知らない、あるいは忘れて困るというミスがよくあります。
原本還付とは
原本還付とは、登記手続きに使った重要書類の原本を返してもらう処理のことです。
不動産名義変更などの登記手続きの際は、基本的に書類の原本を提出しなければいけません。しかし、原本を提出してしまうと、手元から重要書類の原本が失われてしまいます。
原本は他の手続きでも必要になることも少なくありません。原本還付により重要書類の原本を法務局に返却してもらえば、他の手続きに原本を使うことも可能です。
原本還付してもらうためには・・・
原本還付の方法は「コピーを添付すること」です。
手続きの際に原本とコピーを一緒に提出し、法務局の方で確認してもらいます。コピーの方には「原本と相違ありません」「原本還付」と記載して(印を押して)、申請者の記名押印をしておきます。
法務局の方で手続きが終わったらコピーを保管して、原本を戻してくれるという流れです。
法務局が、提出書類のコピーをとって、原本を返してくれるという事はありません。
原本を返して欲しければ、登記申請をする人が予めコピーと原本を提出しないといけないのです!
登録免許税の計算ミス
自分で不動産名義変更登記をするときは、登録免許税の計算ミスもよくあります。
登録免許税とは登記の際に納めなければならない税金です。法務局に支払う登記手続きの手数料のようなものだと解釈すれば分かりやすいはずです。
登録免許税の計算ミスをすると登記できませんので、自分で登記するときは注意したいミスのひとつになります。
課税標準額と評価額の違いに注意
登録免許税の計算ミスが起こる原因として、計算に使う数字を間違えるというものがあります。
登録免許税の計算に使うのは「評価額」や「価格」と書かれている額です。課税標準額の方で間違って計算してしまい、登録免許税額がズレてしまうケースがあります。
登録免許税を間違えると、別途還付手続が必要
登録免許税を納め過ぎた場合は還付を受けることも可能です。しかし、還付を受けるためには別途還付手続きが必要になるため、手続きの負担が増すことになります。
余計な手続きをして負担を増やさないようにするためにも、登録免許税の計算ミスはしないよう注意する必要があります。
一定の要件を満たすと軽減措置がある!
登録免許税には登記の内容ごとに税率が定められてます。たとえば不動産名義変更の場合は名義を変更するにいたった理由(原因)によって、登録免許税の税率が変わり、相続の場合は1,000分の4、売買の場合は1,000分の20と定められているのです。
ただ、登録免許税には軽減措置が設けられていることがあります。軽減措置は自分で不動産名義変更登記をするときも利用可能です。
登録免許税の軽減措置が適用できる場合は、軽減措置の根拠条文を登記申請書に記載して、軽減措置の適用を受ける旨を申し出る必要があります。
軽減措置の適用もれがあっても、法務局側から指摘してくれる事はありません!
無駄な登録免許税を納付しないためにも、事前に軽減措置についてリサーチが必要となります。登録免許税の軽減措置については別の記事にまとめています。参考にしてください。
登記完了後の書類は郵送してくれる
登記完了後の書類は必ず直に受け取る必要はなく、郵送してもらうことも可能です。
ただし、郵送希望の旨を伝え忘れたり、郵送に必要な切手などを渡し忘れたりすると、郵送による還付を受けられません。自分で手続きするときに、郵送希望なのに切手などを渡していなかったなどのミスがあります。
申請書に郵送返却希望と記載
郵送してもらうときはあらかじめ「郵送希望」と伝え、必要な額の郵便切手を法務局側に渡さなければいけません。速達で送ってもらいたいときは速達分の切っても合わせて渡す必要があります。
郵送による還付を希望しているからといって法務局側が送料を負担してくれるわけではないため注意してください。
返信用のレターパックをつけて申請
返信用としてレターパックをつけて申請すると、レターパックによる還付を受けられます。静岡地方法務局などはレターパックによる還付を推奨する旨、記載があります。
最後に 途中で分からなくなったら専門家に相談
不動産名義変更登記は自分でやることも可能ですが、細かなルールが多いためミスもしやすくなってします。法的な知識を要する手続きなので、不動産名義変更登記を自分でやろうと挑戦し、途中で挫折するケースも少なくありません。
不動産名義変更登記を自分でやろうとして分からなくなった場合は、迷わず専門家に相談しましょう。
無理に自分でやろうとするとミスや不備につながります。費用を浮かせようとしてミスや不備を連発しては意味がありません。
費用については別記事にもまとめていますので、司法書士に依頼するか自分でするか迷ったときは参考にしてください。
不動産名義変更の際に注意したいのは登録免許税や司法書士費用だけではありません。売買や贈与などの場合は別途、税金がかかる可能性があります。
課税の可能性がある税金についても確認し、「予想外の出費だ」と驚かないよう知識を養っておきましょう。