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相続登記の義務化とは?
相続登記とは、亡くなった方名義の不動産を、相続人名義に変更する手続きです。
たとえば、父が亡くなり、父名義の自宅を長男が相続する場合、その自宅の名義を父から長男へ変更する必要があります。
これまでは、相続登記をするかどうかは基本的に任意でした。
そのため、「とりあえず困っていないから放置」「固定資産税は払っているから大丈夫」といった形で、亡くなった方名義のまま何年も放置されている不動産がたくさんありました。
しかし、2024年4月1日から制度が変わり、相続によって不動産を取得した人は、相続登記をすることが法律上の義務になりました。
背景にあるのは、いわゆる「所有者不明土地問題」です。
登記名義が何十年も前に亡くなった人のままだと、現在の所有者が分からず、売却・公共事業・災害復旧などに支障が出ます。
そこで、相続登記を義務化し、不動産の名義をきちんと現在の所有者に合わせていこう、という流れになったわけです。
過去の相続も義務化の対象になる?
ここが一番大事です。
結論として、2024年4月1日より前に発生した相続も、相続登記義務化の対象です。
つまり、次のようなケースも対象になります。
- 10年前に亡くなった父名義の実家
- 20年前に亡くなった祖父名義の土地
- 昭和の時代に亡くなった曾祖父名義の山林
- 兄弟で話し合いをしないまま放置している親名義の不動産
- 固定資産税だけ払っていて、登記名義は変えていない不動産
「昔の相続だから関係ないでしょ」と思われがちですが、関係あります。
むしろ、長年放置されている不動産ほど、相続人が増えていたり、戸籍の収集が大変になっていたりするため、早めに動いた方がよいケースが多いです。
過去の相続はいつまでに登記すればいい?
2024年4月1日より前に相続が発生していた場合は、経過措置があります。
過去の相続については、原則として2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
たとえば、父が2010年に亡くなっていて、実家の名義が父のままになっている場合でも、2027年3月31日までに相続登記をすれば、期限内の対応になります。
| 相続開始時期 | 登記の期限 |
|---|---|
| 2024年4月1日以前の相続 | 2027年3月31日まで |
| 2024年4月1日以降の相続 | 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内 |
ここで注意したいのは、「亡くなった日から必ず3年」ではなく、「相続によって不動産を取得したことを知った日から3年」という点です。
ただし、実務上は、親が亡くなり、親名義の不動産があることを知っている場合には、早めに期限管理をしておくべきです。
相続登記をしないとどうなる?
正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。
ここでいう過料とは、刑罰ではありません。いわゆる罰金とは少し違います。
ただし、「刑罰じゃないなら気にしなくていい」という話でもありません。
相続登記を放置すると、過料以外にもかなり面倒な問題が起こります。
- 不動産を売却できない
- 住宅ローンの担保設定ができない
- 建替えや融資の場面で困る
- 相続人が増えて話し合いがまとまりにくくなる
- 戸籍収集が大変になる
- 相続人の中に認知症の方や行方不明者が出てくる可能性がある
特に怖いのは、時間が経つほど関係者が増えていくことです。
たとえば、祖父名義の土地を放置していた場合、祖父の子どもだけでなく、子どもが亡くなれば孫、さらにその下の世代へと相続関係が広がっていきます。
最初は兄弟3人で話せばよかったものが、気づけば相続人が10人、20人になっていることもあります。
こうなると、もはや「ちょっと名義を変えたい」というレベルでは済みません。
司法書士の立場から見ても、放置期間が長い相続登記ほど、費用も手間も増えやすいです。
遺産分割協議がまとまっていない場合は?
相続登記をしたくても、すぐにできないケースもあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 兄弟で誰が相続するか決まっていない
- 相続人の一部と連絡が取れない
- 相続人の中に認知症の方がいる
- 遺産分割協議がまとまらない
- そもそも相続人が誰か分からない
このような場合に使える可能性があるのが、相続人申告登記です。
相続人申告登記とは、簡単にいうと、「私はこの不動産の相続人です」と法務局に申し出る制度です。
相続人申告登記をすることで、ひとまず相続登記の申請義務を果たしたものと扱われます。
ただし、これはあくまで一時的な対応です。
不動産の名義が正式に相続人へ移るわけではありません。
将来的に売却したり、特定の相続人の名義にしたりするには、最終的に通常の相続登記が必要になります。
イメージとしては、「完全解決」ではなく、期限に間に合わせるための応急処置に近い制度です。
固定資産税を払っていれば大丈夫?
よくある誤解がこれです。
「固定資産税は自分が払っているから、名義も自分になっているはず」
これは間違いです。
固定資産税の納付書が届いている人と、登記簿上の名義人は必ずしも一致しません。
市町村は、相続人代表者などに固定資産税の納付書を送ることがあります。
しかし、それは税金を支払う窓口を決めているだけで、不動産の名義変更が完了しているわけではありません。
そのため、固定資産税を何年も払っていても、登記簿を確認すると亡くなった父や祖父の名義のまま、というケースは珍しくありません。
「納税しているから大丈夫」と思い込まず、一度登記簿を確認することが大切です。
まず何をすればいい?
相続登記の義務化が気になる方は、まず次の順番で確認しましょう。
- 亡くなった方名義の不動産があるか確認する
- 固定資産税の納付書や名寄帳を確認する
- 登記簿謄本を取得して、現在の名義人を確認する
- 相続人が誰になるか確認する
- 遺産分割協議が必要か確認する
「うちは大丈夫かな?」と思ったら、まずは不動産の名義確認からです。
特に、実家・田畑・山林・昔からある土地は要注意です。
家族の中では「これはうちの土地」と思っていても、登記簿上は何十年も前に亡くなった方の名義のまま、ということがあります。
司法書士に相談するメリット
相続登記は、ご自身で手続きすることも可能です。
ただし、過去の相続が絡む場合は、戸籍収集や相続関係の整理が複雑になりやすいです。
特に、次のようなケースでは専門家に相談した方が安心です。
- 何十年も名義変更していない
- 相続人が多い
- 兄弟姉妹や甥姪が相続人になる
- 遺産分割協議書の作成が必要
- 不動産が複数ある
- 売却予定がある
- 相続人の中に認知症・行方不明・未成年の方がいる
相続登記は、後回しにすればするほど、だいたい面倒になります。
歯医者さんと同じで、「痛くなってから行く」より「ちょっと気になる段階で行く」方が、結果的に楽です。
不動産の名義が昔のままになっている場合は、早めに確認しておきましょう。



