相続登記では、
「戸籍はどこまで集めればいいの?」
という質問をよくいただきます。
結論からいうと、亡くなった方(被相続人)の戸籍は、原則として「出生から死亡まで」連続して取得する必要があります。
しかし、実際に市役所へ行くと、
「除籍謄本も必要です。」
「改製原戸籍も取得してください。」
と言われ、思った以上に集める書類が多く、途中で戸惑ってしまう方も少なくありません。
特に、兄弟姉妹が相続人になるケースでは、取得する戸籍が20通以上になることもあります。
この記事では、相続登記に必要な戸籍の範囲や取得方法、戸籍収集が大変になるケースについて、わかりやすく解説します。
目次
相続登記では戸籍が重要になる理由
相続登記では、法務局へ
「誰が相続人なのか」
を証明しなければなりません。
その証明書類となるのが戸籍です。
例えば、
- 配偶者だけが相続人なのか
- 子どもは何人いるのか
- 前婚の子どもはいないか
- 兄弟姉妹まで相続権が及ぶのか
などは、戸籍を確認しなければ判断できません。
法務局は提出された戸籍を確認し、法律上の相続人を確定したうえで相続登記を行います。
被相続人の戸籍は「出生から死亡まで」が必要
相続登記では、亡くなった方の戸籍は、原則として出生から死亡まで連続した戸籍を提出します。
「死亡時の戸籍だけでは足りないのでは?」
と思われる方も多いのですが、それだけでは相続人を確定できないためです。
例えば、結婚や転籍をすると新しい戸籍が作られます。
しかし、新しい戸籍には、それ以前の戸籍に記載されていた内容がすべて引き継がれるわけではありません。
そのため、出生までさかのぼって戸籍を確認することで、
- 子どもが何人いるのか
- 養子縁組をしていないか
- 認知した子どもはいないか
などを漏れなく確認できます。
戸籍はこのようにつながっています
戸籍は、人生の節目ごとに新しく作られたり、古い戸籍から新しい戸籍へ移ったりします。
そのため、相続登記では、1通だけを見て終わりではなく、古い戸籍から新しい戸籍まで順番につなげて確認します。

相続登記では、戸籍が「出生から死亡まで」つながっているかを確認することが重要です。
本籍を一度も変更していなくても、戸籍が1通とは限りません
相続手続のご相談では、
「私は生まれてから一度も本籍を移していません。だから戸籍は1通だけですよね?」
というご質問をいただくことがあります。
しかし、本籍を一度も変更していなくても、戸籍が1通とは限りません。
その理由は、戸籍法の改正や戸籍のコンピュータ化、いわゆる戸籍の電算化などにより、新しい様式の戸籍へ作り替えられていることがあるためです。
例えば、現在の戸籍とは別に、
- 現在戸籍
- 改製原戸籍
- 除籍謄本
などを取得する必要があるケースは珍しくありません。
「本籍を変更していない=戸籍が1通」というわけではありません。

図:同じ本籍地でも、戸籍法の改正などにより複数の戸籍が存在することがあります。
戸籍がそろっているかどうかも確認しましょう
戸籍を取得すると、「これで全部そろった」と思ってしまいがちです。
しかし、実際には改製原戸籍や除籍謄本が不足しているケースも少なくありません。
特に古い戸籍では、1冊だけでは出生までさかのぼれないこともあります。
市区町村から交付された戸籍が、出生から死亡まで連続しているかを確認し、不足があれば追加で取得する必要があります。
相続人の戸籍はどこまで必要?
相続人については、一般的には現在の戸籍、つまり現在事項全部証明書を提出します。
ただし、誰が相続人になるかによって必要書類は異なります。
| 相続人 | 一般的に必要となる戸籍 |
|---|---|
| 配偶者 | 現在戸籍 |
| 子ども | 現在戸籍 |
| 代襲相続人(孫など) | 代襲関係が分かる戸籍 |
| 兄弟姉妹 | 現在戸籍に加え、父母の出生から死亡までの戸籍など |
兄弟姉妹が相続人になると戸籍が増える理由
兄弟姉妹が相続人になる場合は、
亡くなった方に子どもや父母など、兄弟姉妹より優先順位の高い相続人がいないことを証明する必要があります。
そのため、父母双方の出生から死亡までの戸籍を確認しなければならず、取得する戸籍が大幅に増えることがあります。

戸籍は何通くらい集めることになる?
必要な戸籍の数は、相続関係や本籍地の変更履歴などによって大きく異なります。
| 相続のケース | 戸籍の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 配偶者と子どもが相続人 | 5〜10通程度 | 比較的シンプルなケースです。 |
| 兄弟姉妹が相続人 | 20通以上 | 父母の戸籍も必要になり、作業量が増えます。 |
| 古い相続をまとめて手続き | 30通以上 | 数世代分の戸籍が必要になることがあります。 |
もちろん、上記はあくまで目安です。
本籍地の変更回数、相続人の人数、過去の相続登記の有無によって、必要な戸籍の数は変わります。
戸籍が多いからといって特別なケースというわけではなく、相続登記ではよくあることです。
戸籍を取得する方法
戸籍は、本籍地の市区町村窓口で取得できます。
また、令和6年3月から始まった戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村窓口でも取得できる戸籍が増えました。
ただし、利用できる条件があり、すべての戸籍が取得できるわけではありません。
広域交付制度について詳しく知りたい方は、関連記事をご覧ください。
郵送請求を利用する場合
遠方の役所へ行けない場合は、郵送で戸籍を請求することもできます。
ただし、郵送請求では、
- 定額小為替を同封する
- 本人確認書類を添付する
- 返信用封筒を同封する
など、準備しなければならないものが多くあります。
また、定額小為替の金額を間違えてしまうと、不足分を再度送付する必要があり、戸籍の取得までに時間がかかることもあります。
郵送請求の詳しい流れについては、関連記事で詳しく解説しています。

戸籍収集が大変になるケース
本籍地を何度も変更している
転籍を繰り返している場合は、本籍地ごとに戸籍を請求しなければならないことがあります。
請求先が複数の市区町村になるため、それぞれへ郵送請求を行うケースも少なくありません。
兄弟姉妹が相続人になる
兄弟姉妹が相続人になる場合は、父母双方の出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。
一般的な相続より取得する戸籍の数が多く、作業量も大幅に増える傾向があります。
数十年前の相続をまとめて行う
長年相続登記をしていなかった場合は、その間に相続人が亡くなり、新たな相続が発生していることがあります。
その結果、必要な戸籍がさらに増え、相続関係も複雑になってしまうことがあります。
戸籍収集に不安があれば専門家へ相談するのも一つの方法
戸籍収集は、一つひとつの手続き自体はそれほど難しくありません。
しかし、
- どの戸籍を取得すればよいのか分からない
- 戸籍が出生までつながっているのか判断できない
- 本籍地が全国に点在している
- 途中で不足書類が見つかる
このような理由から、想像以上に時間がかかることがあります。
また、戸籍収集が終わらなければ、その後の遺産分割協議書の作成や相続登記も進めることができません。
「戸籍をどこまで集めればいいのか分からない」「途中で行き詰まってしまった」という場合は、早めに専門家へ相談することで、手続きをスムーズに進められることがあります。
司法書士事務所によっては、戸籍収集のみを依頼できる場合もありますので、ご自身の状況に応じて利用を検討してみるとよいでしょう。



