贈与税を節約して不動産名義変更をしたい!贈与税を安くする軽減措置について
不動産名義変更の理由のひとつに贈与があります。不動産を贈与すると所有者が変わるため、贈与した人から贈与された人へ不動産名義変更の登記をするのが基本的な流れです。不動産名義変更の登記では登録免許税という税金を納めなければいけません。
贈与の場合は登録免許税の他に「贈与税」の課税が問題になります。贈与税の意義や相談の多い「贈与税を安くする方法」について説明します。
目次
贈与税について
贈与税 とは「不動産や金銭など財産をもらった(贈られた)ときにかかる税金」です。
たとえばAがBにA所有の土地と建物をあげたとします。これはAB間の贈与ですから基本的に贈与税の対象です。A名義の土地と建物はAの財産ですから、Aは贈与などで自由に処分できます。よって、売買のように金銭が発生していなくても、Aが贈りたいと思いBが受け取るのであれば財産の贈与は自由です。
ただ、贈与があると財産的な利益が発生しているため、贈与に対する税金である贈与税を納めなければならないというわけです。
贈与税の対象になる贈与
贈与税は個人からの贈与が対象になります。法人(会社など)から受け取る財産はまた別の税金の対象になるため注意してください。
個人間の贈与であれば赤の他人同士の贈与から友人間の贈与、親子間の贈与、夫婦間の贈与など幅広い贈与が贈与税の対象です。親子や夫婦など近しい間柄でも贈与があれば贈与税の課税があります。
「親しい間柄でも贈与があれば基本的に贈与税の対象になる」と考えた方がいいでしょう。
贈与税と相続税や所得税の違い
贈与税は個人から財産を贈られたときの税金です。対して相続税は故人(被相続人)の財産を受け継いだときに課税される税金になります。
父親が亡くなった息子が預金や不動産などを相続により受け継ぐと相続税の対象になりますが、父親が息子に不動産や預金を生前贈与すると贈与税の対象です。
個人ではなく会社などの法人から財産を受け取ると、贈与税ではなく所得税が課税されます。個人(会社員)が会社から給与を受け取ると所得税が課税されているはずです。
贈与税は税率の高さが問題になる
贈与税はよく「税率が高い」という話を聞かないのでしょうか。
贈与税の一般税率は以下のようになっています。
基礎控除後の課税価格 | 税 率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | ‐ |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
たとえば不動産を贈与して、その不動産が5,000万円を超える価値があったとします。贈与税の一般税率だけ見ると、単純計算で贈与税が、なんと2,200万円超えです。5000万円贈与して2,200万円以上の税金が発生するのです。いかに贈与税が高額かお分かり頂けると思います。贈与の手続では、高額の贈与税がネックになるのです!
ただし、贈与税は、税金を安くする各種の控除や制度、特例などが充実しているという特徴があるのです!各種の制度や特例などを使えば贈与税の負担を軽減できます。
親子間の贈与税を安くする!相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は親子間の贈与で使える贈与税の制度です。
相続時精算課税制度の制度内容は「贈与を受ける側が2,500万円まで贈与税を納めず、相続が発生した時点で相続税として税金を納める」というものになります。
相続税と贈与税を比較すると「財産を受け継ぐ」「被相続人の死後に家族が生活するための資源」としての性質がある相続(相続税)の方が税率は低めです。そのため、親子間の贈与において贈与時点で贈与税を納めるのではなく、相続のときに他の遺産と合わせて計算して相続税を納めるかたちで贈与税負担の軽減をはかります。相続関係が発生する親子間だからこそ使える制度です。
たとえば、父親から息子に2,000万円を贈与したとします。親子間でも贈与は贈与ですから、父から息子にお金を贈っても基本的には贈与税の対象です。
しかし相続時精算課税制度を使えば贈与のときに贈与税を払う必要はなく、父親が亡くなった時点で父親の他遺産である不動産や預金などと贈与分2,000万円を合わせて相続税を計算します。計算した結果、相続税を納める必要がない場合は贈与税もかかりません。
相続時精算課税制度は贈与する側ひとりに対して2,500万円という贈与税非課税枠が用意されるため、仮に母親からも同額2,000万円を贈与されても制度対象になります。父親と母親各2,500万円の枠という解釈になるからです。
また、相続時精算課税制度は合計が贈る側1人あたり2,500万円になるまで使えるため、数回に渡って贈与したなどの場合も対象になります。500万円を5回贈与した場合なども親子間の贈与であれば問題なく使用可能です。
相続時精算課税制度は1度利用すると撤回できない点、年間110万円の控除とは併用できない点には注意してください。注意点さえ留意して上手く活用すれば生前贈与などの税金を安くすることが可能です。
夫婦間の贈与税を安くする!居住用不動産贈与特例
居住用不動産贈与特例とは夫婦間の贈与で税金を安くする特例です。
夫婦間で住居や住居の購入に使う資金を贈与した場合は居住用不動産贈与特例により2,000万円まで控除できます。居住用不動産贈与特例は年間110万円の基礎控除と併用可能なので、合計額で2,110万円まで控除できる仕組みです。
ただし、夫婦だからといって必ずこの特例が使えるわけではありません。居住用不動産贈与特例を使うためには20年の婚姻期間が必要で、同夫婦は1回しか使えないというルールがあります。また、居住用の不動産や居住用不動産の購入資金でなければいけないので、別用途で贈与した場合は特例の対象外です。
連れ添った期間の長い夫婦が条件を満たす場合に使える贈与税の特例になっています。そのため、結婚してすぐに贈与をした場合などは使えませんので、利用の際は条件をよく確認することが重要です。
年間110万円の基礎控除で贈与税を安くする!
贈与税には毎年の基礎控除(暦年課税)が定められています。基礎控除の額は110万円です。1月1日から12月31日までの贈与が110万円の枠内に収まれば贈与税の課税はありません。贈与税の申告も不要です。
基礎控除の特徴はふたつあります。ひとつは「誰でも使える」という点で、もうひとつは「1人について110万円」という点です。
贈与税の基礎控除は特に条件がなく、誰でも使えます。他の特例の条件に当てはまらない人でも贈与税を安くするために使えるということです。
たとえば叔父が甥に毎年100万円を贈与するとします。夫婦ではないので居住用不動産贈与特例は使えません。父母や祖父母でもないので、相続時精算課税制度についても対象外です。
しかし、基礎控除である110万円の枠は使えますので、他に贈与があったなどの理由がなければ原則的に贈与税はかかりません。
また、伯父から毎月5万円ずつもらっても12カ月で60万円なので基礎控除の枠内に収まります。複数回に分けて贈与を受けても年間110万円の枠に収まれば贈与税はかかりません。
注意しなければならないのは、贈与税の基礎控除110万円は「受け取る側1人につき110万円の枠である」という点です。
たとえば叔父と伯母の双方から甥が100万円贈られたとします。この場合、叔父につき110万円、伯母につき110万円の基礎控除枠ではありません。贈られる側である甥につき年間110万円の贈与税控除枠になっています。よって、計算すると220万円ですから贈与税の基礎控除枠からはみ出してしまう結果になります。
贈与税の基礎控除は誰でも無条件で使える贈与税を安くする手段です。注意点を知って有効活用してください。
不動産取得税や登録免許税などにも注意が必要
贈与税と税金負担を軽減するための特例などを説明しましたが、注意したいのは不動産贈与などには贈与税以外の税金もかかるという点です。税金を安くするためには贈与税以外の税金についても考える必要があります。
贈与税以外の税金を安くする方法についても別記事にまとめておきました。ぜひ参考になさってください。
贈与の前に司法書士などの専門家に不動産名義変更時の税金などについて相談しておくことも重要な税金対策になります。