【2026年8月リライト】
相続登記の義務化、戸籍の広域交付、相続人申告登記など、現在の制度にあわせて内容を全面的に見直しました。

相続登記は自分でできる?

「親が亡くなって、不動産の名義を変えないといけない」

そんなとき、

「相続登記って自分でもできるの?」
「司法書士に頼まないとダメ?」
「できれば費用を節約したい」

と考える方も多いと思います。

結論からいうと、相続登記は自分で申請することができます。

必ず司法書士へ依頼しなければならない手続ではありません。

ただし、ここで注意したいのが、「自分でできる=簡単」というわけではないことです。

例えば、

  • 相続人が妻と子ども1人だけ
  • 不動産は自宅だけ
  • 遺産分割の内容も決まっている
  • 戸籍も比較的簡単に集められる

というケースなら、自分で相続登記に挑戦するのも十分ありです。

一方で、

「登記簿を見たら祖父名義だった」
「兄弟姉妹や甥・姪まで相続人になっている」
「どの土地が亡父のものなのか分からない」
「私道の持分が見つかった」
「遺言書が出てきた」

となると、話は一気に複雑になります。

相続登記は、法務局へ申請書を出す作業そのものより、その前の「不動産調査」「戸籍収集」「相続人の確定」に時間がかかることが多い手続です。

この記事では、自分で相続登記をする場合の流れを、実際の作業順に沿って解説します。


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2024年4月から相続登記は義務になっています

自分で相続登記をするか、司法書士へ依頼するかを考える前に、現在のルールを確認しておきましょう。

2024年4月1日から、相続登記の申請は義務化されています。

原則として、不動産を相続によって取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

相続登記を放置しないように注意
正当な理由なく申請義務に違反した場合には、10万円以下の過料の対象になる可能性があります。

つまり、以前のように、

「相続登記は、そのうちやればいい」

とは考えにくくなっています。

2024年4月より前に亡くなっている場合も対象

ここは特に注意してください。

相続登記の義務化は、2024年4月1日以降に発生した相続だけが対象ではありません。

例えば、

「父が2018年に亡くなったけれど、自宅はまだ父名義のまま」

というケースも対象です。

2024年4月1日より前に発生した相続についても、相続登記の義務化の対象になります。

遺産分割がまとまらない場合はどうする?

「兄弟との話し合いがまとまらず、相続登記ができない」

というケースもあります。

このような場合に利用を検討できるのが、相続人申告登記です。

相続人が、自分が相続人であることなどを法務局へ申し出る制度で、一定の場合には相続登記の申請義務を履行したものとして扱われます。

ただし、相続人申告登記をしたからといって、最終的な遺産分割や相続登記そのものが不要になるわけではありません。

「話し合いが終わっていないから何もしない」のではなく、期限を意識して対応することが大切です。

自分で相続登記する手順|まず全体像を確認

自分で相続登記をする場合、一般的には次のような流れで進めます。

自分で相続登記をする9ステップ

STEP1 相続する不動産を調査する

STEP2 相続人を調査・確定する

STEP3 遺言書の有無を確認する

STEP4 必要書類を集める

STEP5 遺産分割協議を行う

STEP6 遺産分割協議書を作成する

STEP7 登録免許税を計算する

STEP8 法務局へ登記申請する

STEP9 登記完了後の書類を受け取る

こうして並べると、「結構あるな……」と思うかもしれません。

実際、相続登記では法務局への申請よりも、その前段階の調査・戸籍収集・書類作成に手間がかかります。

それでは、順番に見ていきましょう。

STEP1|相続する不動産を調べる

相続登記を始めるとき、最初に確認したいのが、

「そもそも、亡くなった方がどの不動産を所有していたのか」

です。

「実家の土地と建物だけだから分かっている」と思っていても、調べてみると別の土地や私道持分が出てくることがあります。

まず登記事項証明書を確認する

対象となる不動産が分かっている場合は、登記事項証明書を確認します。

登記事項証明書では、主に次のような情報を確認できます。

  • 現在の所有者
  • 土地の所在・地番・地目・地積
  • 建物の所在・家屋番号・構造・床面積
  • 共有持分
  • 抵当権などの権利関係

例えば、

「父が亡くなったので、父名義から自分へ変更しよう」

と思って登記簿を取ったところ、実は祖父の名義のままだったということもあります。

この場合、今回の父の相続だけを処理すれば終わり、とは限りません。

相続登記では、思い込みで手続きを始めず、まず現在の登記名義を確認することが重要です。

固定資産税の納税通知書も確認する

亡くなった方の自宅に固定資産税の納税通知書が残っていれば、それも重要な手掛かりです。

課税明細書を見ると、亡くなった方が課税されていた土地や建物を確認できます。

ただし、納税通知書に載っている不動産だけを見れば絶対に大丈夫とは限りません。

課税されていない土地や共有道路などが漏れるケースもあります。

不動産が分からない場合は名寄帳なども確認

「父が土地をいくつ持っていたのか分からない」という場合には、市区町村で名寄帳などを確認する方法があります。

名寄帳では、その自治体内で本人が所有している固定資産を一覧で確認できる場合があります。

ただし、別の市町村に所有している不動産までは載りません。

そのため、

  • 権利証・登記識別情報
  • 固定資産税納税通知書
  • 売買契約書
  • 過去の登記事項証明書
  • 名寄帳

など、複数の資料を手掛かりに探していくことがあります。

私道の持分を忘れない

相続登記で意外と多いのが、

「自宅は相続登記したけれど、前の道路を忘れていた」

というケースです。

例えば、3軒の住宅の前に私道があり、その道路を3人で3分の1ずつ共有していたとします。

自宅の土地と建物だけを相続登記して、道路持分を見落とすと、道路だけ亡くなった方の名義で残ってしまいます。

その後、自宅を売却するときに道路持分の相続登記漏れが発覚することもあります。

自宅の土地・建物だけでなく、私道、共有地、離れた土地などがないかまで確認しましょう。

STEP2|相続人を調査して確定する

相続する不動産が分かったら、次は相続人を確定します。

相続登記では、

「家族だから、この人たちが相続人だろう」

という推測では進められません。

戸籍を確認して、法律上の相続人を確定する必要があります。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める

一般的な相続では、亡くなった方について、出生から死亡までの戸籍をたどっていきます。

なぜそこまでするのか。

理由は、他に相続人となる子どもなどがいないか確認するためです。

例えば、

「父の相続人は母と私たち兄弟2人です」

と思っていても、古い戸籍を確認したところ、前婚の子どもがいることが分かるケースがあります。

その方も相続人になる可能性があります。

相続人を1人でも漏らしたまま遺産分割協議を進めると、後でやり直しになる可能性があります。

戸籍は1通で終わるとは限らない

現在の戸籍を1通取れば、亡くなった方の人生すべてが載っているわけではありません。

転籍、婚姻、戸籍制度の改製などによって戸籍が変わっていれば、複数の戸籍をさかのぼります。

人によっては、現在戸籍・除籍謄本・改製原戸籍などを何通も確認することになります。

詳しくは、

相続登記の戸籍はどこまで必要?集める範囲をわかりやすく解説

も参考にしてください。

兄弟姉妹相続は難易度が上がりやすい

例えば、「子どものいない叔父が亡くなった」というケース。

両親がすでに亡くなっていれば、兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。

さらに、その兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、その子である甥・姪が相続人になることがあります。

兄弟姉妹相続・代襲相続・数次相続が出てくると、自分で戸籍を読む難易度はかなり上がります。

相続関係説明図を作って整理する

戸籍が集まったら、相続関係を図にしておくと分かりやすくなります。

これが相続関係説明図です。

簡単にいうと、「亡くなった人を中心にした相続用の家系図」のようなものです。

父(被相続人・死亡)


├─ 長男
└─ 次男

法定相続情報一覧図を利用する方法もある

相続関係説明図と似たものに、法定相続情報一覧図があります。

必要な戸籍などと一覧図を法務局へ提出して認証を受けることで、銀行・証券会社など複数の相続手続に利用できることがあります。

預貯金や証券など、不動産以外にも相続手続が多い場合には便利な制度です。

STEP3|遺言書がないか確認する

相続人調査と並行して確認したいのが、遺言書の有無です。

遺言書があるかないかによって、その後の相続登記の進め方が変わることがあります。

例えば、

「自宅は長男に相続させる」

という有効な遺言書があれば、相続人全員による遺産分割協議をせず、その遺言に基づいて登記できるケースがあります。

公正証書遺言

公証人が作成する遺言です。

公正証書遺言については、原則として家庭裁判所での検認は不要です。

自筆証書遺言

亡くなった方が自分で作成した遺言書です。

自宅の金庫や机、重要書類のファイルなどから見つかることがあります。

また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合もあります。

法務局で保管されていた自筆証書遺言については、家庭裁判所の検認は不要です。

一方、自宅などで保管されていた一般的な自筆証書遺言については、原則として家庭裁判所で検認手続が必要になります。

封印されている遺言書などを見つけた場合は、自己判断で開封せず確認してから進めましょう。

STEP4|相続登記の必要書類を集める

ここまで進んだら、相続登記に必要な書類をそろえていきます。

ただし、必要書類は、

・遺産分割協議をする
・遺言書を使う
・法定相続分で相続する

などによって変わります。

遺産分割協議によって一人の相続人が不動産を取得する一般的なケースを例にすると、主な書類は次のとおりです。

書類 主な目的
被相続人の戸籍類 相続人を確認する
被相続人の住民票除票・戸籍附票など 登記名義人との同一性を確認する
相続人の戸籍 相続人であることを確認する
不動産を取得する相続人の住民票 新しい所有者の住所を確認する
遺産分割協議書 誰が不動産を取得するか証明する
印鑑証明書 遺産分割協議書の実印を確認する
固定資産評価額が分かる資料 登録免許税を計算する

必要書類は相続の内容によって変わるため、「この一覧をそろえれば全員同じ」というわけではありません。

被相続人の住民票除票などは何に使う?

相続登記では、「亡くなった○○さん」と「登記簿に所有者として載っている○○さん」が同一人物であることを確認する必要があります。

例えば、

登記簿:奈良市A町
死亡時:奈良市B町

となっていれば、住所のつながりを確認する必要があります。

何度も引っ越していると、戸籍の附票などを使って住所をたどることがあります。

「評価証明書が絶対必要」とは限らない

相続登記では、登録免許税の計算のために固定資産評価額を確認します。

実務では、固定資産税の課税明細書などを利用できるケースもあります。

重要なのは、相続登記の登録免許税を計算するために、その不動産の固定資産評価額を正確に確認することです。

STEP5|遺産分割協議を行う

遺言書がなく、相続人のうち誰が不動産を取得するのか決める場合には、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議とは、簡単にいうと、

「相続人全員で、遺産を誰が取得するか話し合うこと」

です。

法定相続分どおりに分ける必要はない

例えば、父が亡くなり、母・長男・次男が相続人だったとします。

法律上の相続分はありますが、必ずその割合どおりに一つひとつの財産を分ける必要はありません。

例えばこんな分け方もできます

自宅の土地・建物 → 長男
預貯金 → 母と次男

相続人全員が合意すれば、このような分け方も可能です。

相続人全員が一か所に集まる必要はない

遺産分割協議という名前から、「全員が会議室に集合しないといけない」と思われる方もいます。

実際には、最終的に相続人全員が内容に合意できれば、必ず同じ場所へ集まる必要はありません。

電話やメールなどで内容を調整し、完成した遺産分割協議書を各相続人へ郵送して署名・押印してもらう方法もあります。

1人でも相続人を漏らすと問題になる

ここで最も重要なのが、遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるという点です。

例えば、母・長男・次男の3人で遺産分割協議をした後に、父に前婚の子がいたことが判明したとします。

その方も相続人であれば、その人を除外したまま遺産分割協議を完成させることはできません。

だからこそ、遺産分割協議の前に相続人を確定するという順番が重要なのです。

STEP6|遺産分割協議書を作成する

遺産分割の内容がまとまったら、通常は遺産分割協議書を作成します。

「長男が自宅を相続することになった」という口約束だけでは、法務局はその内容を確認できません。

そこで、

「どの財産を、誰が取得するのか」

を書面にします。

不動産の表示は正確に

遺産分割協議書で特に注意したいのが、不動産の記載です。

例えば、

「奈良市の実家を長男が相続する」

だけでは、不動産を正確に特定できません。

土地なら、所在・地番・地目・地積など、建物なら所在・家屋番号・種類・構造・床面積などを、登記事項証明書の内容に合わせて記載します。

住所と不動産の「地番」は同じとは限りません。

ここは自分で協議書を作る方が間違えやすいポイントです。

相続人全員が実印で押印する

遺産分割協議書を相続登記に使用する場合には、一般的に相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。

相続人が遠方に住んでいる場合には、

協議書を郵送

相続人が内容を確認

実印で押印

印鑑証明書を添えて返送

という流れになることもあります。

相続人が多ければ、それだけ郵送や確認にも時間がかかります。

遺産分割協議書を自分で作りたい方へ

不動産・預貯金・株式の書き方や、代償分割・換価分割、相続人の署名押印、記載例まで詳しく知りたい方は、

【司法書士監修】遺産分割協議書の書き方|作成方法・記載例・サンプルをわかりやすく解説

をご覧ください。

この相続登記の記事では、登記に必要な範囲に絞って説明し、遺産分割協議書そのものの詳しい作り方は専用記事で確認できるようにしています。

STEP7|相続登記の登録免許税を計算する

相続登記を申請するときには、原則として登録免許税がかかります。

一般的な相続による所有権移転登記では、

固定資産評価額 × 0.4%

が基本です。

例えば、固定資産評価額が1,000万円の不動産なら、

1,000万円 × 0.4% = 4万円

となります。

相続登記を自分でする場合でも、登録免許税そのものがなくなるわけではありません。

自分でやって節約できるのは主に司法書士報酬

「自分で相続登記すれば、登記費用が全部安くなる」と思われることがあります。

ただし、自分で手続きをして節約できるのは、基本的に司法書士報酬です。

登録免許税や戸籍取得費、証明書の取得費用などの実費は、自分で手続きをしても司法書士へ依頼しても基本的には必要です。

そのため、費用だけを見るのではなく、

  • 戸籍を調べる時間
  • 不動産を確認する時間
  • 遺産分割協議書を作る時間
  • 申請書を作る時間
  • 法務局からの補正に対応する時間

まで含めて比較するのがおすすめです。

詳しくは、

不動産名義変更は自分でやると安い?司法書士に依頼する場合と費用・手間を徹底比較

も参考にしてください。

相続登記には登録免許税の免税措置もある

一定の相続登記については、登録免許税の免税措置を利用できる場合があります。

例えば、一定金額以下の土地の相続登記などについて、要件を満たせば登録免許税が免除されるケースがあります。

自分で相続登記をする場合は、0.4%という税率だけを見るのではなく、利用できる免税措置がないかまで確認しておきましょう。

登録免許税だけでなく、相続・贈与・売買・離婚でどの税金がかかるのか知りたい方は、

不動産名義変更でかかる税金一覧

もご覧ください。

STEP8|登記申請書を作成して法務局へ申請する

必要書類がそろい、遺産分割協議も終わったら、いよいよ登記申請書を作成します。

相続登記の申請書には、主に次のような内容を記載します。

  • 登記の目的
  • 登記原因
  • 相続人の住所・氏名
  • 課税価格
  • 登録免許税
  • 不動産の表示

法務局のホームページには、相続登記の申請書様式や記載例があります。

自分で申請する場合は、自分のケースに合った記載例を確認しながら作成するとよいでしょう。

相続の内容によって申請方法は変わる

相続登記といっても、すべて同じ申請書になるわけではありません。

例えば、

  • 遺産分割協議による相続
  • 遺言による相続
  • 法定相続分による相続

では、添付書類や申請内容が変わります。

法務局のテンプレートに名前を入れれば必ず完成する、というわけではありません。

自分の相続に合った方法を選ぶことが大切です。

不動産所在地を管轄する法務局へ申請する

相続登記は、原則として対象となる不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

例えば、自分は大阪に住んでいて、相続する不動産が奈良にある場合、申請先は大阪の法務局ではなく、不動産を管轄する奈良の法務局です。

住所地の法務局と間違えないようにしましょう。

法務局へ直接行かなくても申請できる

登記申請には、主に次の方法があります。

申請方法 特徴
窓口 管轄法務局へ書類を持参する
郵送 管轄法務局へ申請書類を郵送する
オンライン オンライン申請システムを利用する

例えば、「奈良の実家を相続したけれど、自分は東京に住んでいる」という場合でも、必ず奈良まで申請書を持参する必要はありません。

申請後に「補正」が入ることもある

自分で相続登記をすると、法務局から、

「書類が不足しています」
「申請書の記載を修正してください」

と連絡が入ることがあります。

これを補正といいます。

簡単な記載ミスなら修正して対応できますが、戸籍が不足していたり、遺産分割協議書の内容自体に問題があったりすると、追加対応が必要になります。

「申請書を提出した=相続登記が終わった」ではありません。

STEP9|相続登記が完了したら登記識別情報を受け取る

法務局で審査が終わり、相続登記が完了すると、新しく不動産の所有者となった人に登記識別情報が通知されます。

登記識別情報は、昔のいわゆる「権利証」に相当する重要な情報です。

将来、その不動産を売却したり贈与したりするときに必要になることがあります。

登記識別情報は大切に保管してください
第三者に番号を見られたり、紛失したりしないよう注意しましょう。

最後に登記内容も確認する

登記が完了したら、登記事項証明書などで、予定どおり登記されているか確認しておくと安心です。

特に確認したいのは、

  • 新しい所有者の氏名
  • 住所
  • 共有持分
  • 対象となる土地・建物
  • 私道持分などの登記漏れ

です。

複数の不動産がある場合は、「一筆だけ相続登記から漏れていた」ということがないかまで確認しましょう。

自分で相続登記すると、どれくらい時間がかかる?

「相続登記を自分ですると、何日くらいかかりますか?」

という質問もよくあります。

これは相続の内容によってかなり違います。

法務局へ登記申請をしてから完了するまでの期間だけを見ると、各法務局の処理状況によります。

ただし、相続登記で本当に時間がかかるのは、申請前の準備です。

時間がかかるのは法務局へ出す前

自分で相続登記をする場合には、

  • 不動産を調べる
  • 戸籍を集める
  • 相続人を確定する
  • 遺産分割協議をする
  • 相続人全員から署名押印をもらう
  • 登録免許税を計算する
  • 登記申請書を作成する

という準備があります。

相続人が少なく、不動産も自宅だけなら比較的早く進められることもあります。

一方で、

「兄弟姉妹相続で戸籍が多い」
「相続人が全国に散らばっている」
「祖父名義の土地が出てきた」
「遺産分割協議がまとまらない」

というケースでは、数か月以上かかることもあります。

相続登記は「法務局での処理期間」より、「法務局へ申請できる状態にするまで」の方が時間がかかることが多い手続です。

自分で相続登記しやすいケース

ここまで読むと、

「やっぱり全部司法書士に頼んだ方がいいのかな……」

と思うかもしれません。

しかし、比較的シンプルな相続なら、自分で相続登記する選択肢も十分あります。

自分で進めやすいケース

  • 相続人が配偶者と子ども程度でシンプル
  • 相続人同士でもめていない
  • 相続する不動産が自宅だけ
  • 被相続人の登記住所と死亡時住所がつながる
  • 遺産分割の内容がすでに決まっている
  • 平日に役所・法務局へ対応できる
  • 自分で調べることが苦にならない

例えば、

「父が亡くなり、相続人は母と自分だけ。自宅は母が相続することで合意している」

というケースなら、比較的自分で進めやすいでしょう。

時間があり、手続きを一つずつ確認しながら進めたい方なら、自分で挑戦するのもよいと思います。

こんな相続登記は司法書士に任せた方がいい

反対に、司法書士の立場から、

「ここは無理に自分でやらない方がいい」

と思うケースもあります。

ケース 難しくなる理由
兄弟姉妹・甥姪が相続人 戸籍の範囲が広がりやすい
何代も相続登記していない 数次相続で相続人が増える
相続不動産が分からない 物件調査から必要になる
遺言書が複雑 登記できる内容か確認が必要
相続人が多い 協議書・押印・郵送管理が大変
平日に時間が取れない 調査・役所・補正対応に時間がかかる

兄弟姉妹・甥姪が相続人になる

兄弟姉妹相続では、必要になる戸籍の範囲が広くなる傾向があります。

代襲相続によって甥・姪まで相続人になると、相続人の人数も増えます。

戸籍の読み取りに自信がない場合は、司法書士へ任せた方が安全です。

何代も相続登記していない

例えば、父の相続登記をしようとして登記簿を取ったところ、祖父名義だった。

さらに調べると曾祖父名義だった。

こうなると、過去の相続まで順番に確認する必要があります。

その間に相続人が亡くなっていれば、相続関係が枝分かれしていきます。

古い相続登記ほど、放置期間が長くなるにつれて相続関係が複雑になる傾向があります。

相続する不動産がよく分からない

「山林があるらしい」

「農地があるらしい」

「私道持分があるかもしれない」

という場合には、登記申請以前に物件調査が必要です。

遺言書の内容が複雑

遺言書があるから必ず簡単になるとは限りません。

遺言の書き方や不動産の記載内容によっては、そのまま相続登記に利用できるか慎重な確認が必要です。

相続人が多い

相続人が10人いれば、全員へ遺産分割協議書を送り、実印で押印してもらい、印鑑証明書を返送してもらうだけでもかなりの作業です。

1人だけ押印漏れがあったり、印鑑証明書が入っていなかったりすると、再度郵送しなければなりません。

平日に動く時間がない

司法書士報酬を節約できても、そのために何日も調査や書類作成へ時間を使うのであれば、必ずしも得とは限りません。

「司法書士報酬」と「自分が使う時間・手間」の両方を比較して判断しましょう。

自分で相続登記する場合と司法書士へ依頼する場合を比較

ここまでの内容を簡単に比較すると、次のようになります。

比較項目 自分で手続 司法書士へ依頼
司法書士報酬 かからない かかる
登録免許税 必要 必要
戸籍収集 自分で行う 依頼内容に応じて代行可能
相続人調査 自分で確認 司法書士が確認
遺産分割協議書 自分で作成 内容に応じて作成支援
登記申請書 自分で作成 司法書士が作成
法務局への申請 自分で申請 司法書士が代理申請
補正対応 自分で対応 司法書士が対応
時間・手間 多くなりやすい 少なくできる

単純な相続なら自分で、複雑な相続なら司法書士へ。

このくらいシンプルに考えてもよいと思います。

途中まで自分でやってから司法書士に頼んでも大丈夫?

もちろん大丈夫です。

実際に、

「戸籍を集め始めたけれど、途中から分からなくなった」
「遺産分割協議書を作ろうとしたけれど不安になった」
「登記申請書の作成で止まってしまった」

という段階でご相談いただくこともあります。

すでに取得した戸籍や登記事項証明書などは、そのまま利用できる場合もあります。

自分で始めたから、最後まで絶対に自分でやらなければいけないわけではありません。

まず自分でやってみて、難しいと感じたところで専門家へ切り替えるという方法でも問題ありません。

相続登記後に住所が変わった場合も注意

相続登記が完了すると、不動産の登記名義人は相続人へ変わります。

その後、引っ越しなどで住所が変わった場合には、登記簿上の住所変更についても注意が必要です。

2026年4月1日から、所有権の登記名義人について住所・氏名等の変更登記も義務化されています。

住所や氏名に変更があった場合は、原則として変更日から2年以内に申請する必要があります。

つまり、

「相続登記が終わったから、不動産登記は一生そのままでいい」

というわけではありません。

将来、不動産を売却したり贈与したりするときに慌てないためにも、登記内容は現在の状態に合わせておきましょう。

自分でやるか迷ったら、まず必要な相続手続を確認しよう

相続登記は、自分でできる手続です。

ただし、その難易度は相続ごとに大きく違います。

例えば、

ケースA
相続人は妻と子1人。自宅を妻が相続する。

ケースB
祖父名義の土地。兄弟姉妹や甥・姪を含めて相続人が10人いる。

どちらも「相続登記」ですが、手続の難易度はまったく違います。

だからこそ、最初に、

「自分の相続がどの程度複雑なのか」

を確認することが大切です。

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まとめ|相続登記は自分でできる。ただし準備が重要

相続登記は司法書士へ依頼せず、自分で行うこともできます。

比較的シンプルな相続で、時間をかけて調べることができる方なら、自分で申請するのもひとつの方法です。

ただし、相続登記で大変なのは申請書を書くことだけではありません。

不動産の調査、戸籍収集、相続人の確定、遺産分割協議、必要書類の準備、登録免許税の計算までを正確に行って、初めて法務局へ申請できます。

また、現在は相続登記が義務化されています。

「面倒だから、そのうちやろう」と何年も放置するのはおすすめできません。

まずは、

  • 自分で最後までできそうか
  • どのくらい時間がかかりそうか
  • 相続人や不動産の調査が複雑ではないか
  • 司法書士へ任せた方が早くないか

を整理してみましょう。

自分でできそうなら挑戦する。

途中で難しいと感じたら司法書士へ切り替える。

最初から複雑そうなら専門家へ任せる。

そのくらいの考え方で大丈夫です。

大切なのは相続登記を放置せず、自分のケースに合った方法で着実に手続きを進めることです。