自分でやる!生前贈与による不動産名義変更の手順/全解説

生前贈与の登記

自分でやる!生前贈与による不動産名義変更の手順/全解説

生前贈与での不動産の名義変更を「自分でやりたい!」という方のために、手続の注意点、手順をまとめました。

不動産の生前贈与では、贈与税や遺留分など、注意すべき点をしかっりと確認してから着手しないと、後々、トラブルとなる可能性があります!ご自身でお手続きを進める場合には、慎重に作業を行ってください!

生前贈与で不動産の名義変更をする場合の手順

生前贈与で不動産名義変更登記をする場合は「生前贈与する」「受け取る」という単純な考えで進めてしまうと後悔のもとになります。なぜなら生前贈与には税金が関わる他、相続人間の利害関係なども関わってくる可能性があるからです。

生前贈与をする場合の税金や相続人への配慮などを検討し、その上で生前贈与したい財産を調査し、生前贈与の契約書を作成するなど書類の準備をします。

生前贈与による登記申請は必要書類などがそろわないとできません。したがって生前贈与と生前贈与の登記申請は以下のように進めることになります。

・税金や相続人について考える
・生前贈与したい物件について情報を確認する
・必要書類を集める
・生前贈与の契約書を作成する
・生前贈与により名義変更登記を申請する

登記申請の前の段階までで準備を整え、最後のあたり、つまり準備が整った時点で登記申請という流れになっていることが分かります。

贈与を受ける側にもあらためて意思確認しておく

生前贈与を含め贈与は「あげたい」という気持ちも重要ですが、受け取る側の気持ちも重要です。

たとえば不動産を贈与した場合、名義変更登記などの手続きが必要になりますし、税金の負担もあります。

受け取る側はもらうだけでなく手続きなどの負担を嫌がる可能性もあるはずです。生前贈与の場合は相続人間のトラブルなども考えて慎重になるケースもあることでしょう。不動産の場合は生前贈与した後の維持管理なども問題になります。

一方的に「生前贈与する」と決めるのではなく、生前贈与される側とよく話し、意思確認しておくことが重要です。あらかじめ意思確認しておくことで、自分でする名義変更手続きもスムーズに進みます。

次の見出しから、生前贈与の不動産名義変更を自分でするときの流れについてもう少し詳しく説明します。

 

税負担や相続関係について確認

生前贈与をするときに考えたいのは、「税負担」と「相続関係」のふたつです。

生前贈与では贈与税や不動産取得税などの税負担が発生するのが基本になります。税金の負担について考えず贈与したら、受け取った側がかえってマイナスになる困るかもしれません。受け取る側、贈る側が後悔せずに生前贈与を進めるためにも、生前贈与の際は税金について確認しておくことがポイントです。

また、生前贈与をするとその分だけ財産が減ってしまいます。相続人にとっては自分が受け取る遺産にも関係するわけです。相続人に配慮せず生前贈与を進めてしまうと、相続トラブルや親族不和の原因になるかもしれません。

生前贈与の前段階として確認しておきたい税金・費用について、まずは説明します。

 

贈与税について

生前贈与は贈与の一種ですから、基本的に贈与税の対象になります。せっかく生前贈与しても贈与税の負担が重くなっては大変です。相続と迷っている場合は相続税と贈与税を比較して検討しても良いかもしれません。

贈与税については別の記事で解説しています。別記事も参考にしてください。

 

不動産取得税について

売買や生前贈与などで不動産を取得した場合は不動産取得税がかかります。贈与税や登録免許税と合わせるとそれだけ税負担が増してしまうため、事前に確認しておきたい税金のひとつです。

不動産取得税についても別記事を用意しています。

 

登録免許税、登記費用について

生前贈与をすると不動産が現在の所有者(名義人)から生前贈与を受ける人に変わります。名義人が変わるわけですから、法務局に登記を申請して不動産名義人を書き換えることになります。

不動産の名義変更の際には登録免許税を納めなければいけません。登録免許税とは登記手続きをしてもらうための手数料のような税金です。司法書士に依頼しても、自分で名義変更登記をしても、登記申請をする以上は登録免許税がかかります。

登記を申請する場合に郵送を使えば切手代などの費用も発生するため注意してください。また、司法書士に生前贈与時の名義変更登記を依頼した場合は司法書士報酬も発生します。自分で名義変更登記をした場合は、司法書士費用はかかりません。

 

特別受益、遺留分への配慮

生前贈与の際の税金の他に「相続関係」についても確認が必要です。

生前に財産を誰かに贈ってしまうと、その分だけ財産が減ります。生前贈与の対象にする財産が多いと、その財産を遺産として受け継ぐはずだった相続人の生活にも関わるかもしれません。だからこそ、生前贈与の際には「遺留分」「特別受益」のふたつに配慮がひつようです。

遺留分への配慮

遺留分とは一定の相続人に保障された遺産の取り分のことです。

たとえば父親が自分の遺産すべてを遺言によって赤の他人に渡してしまったらどうでしょう。父親と生計を共にしていた母子は生活基盤が不安定になり、路頭に迷うかもしれません。

遺産は相続人・一緒に生活していた者の生活の基盤になる財産でもあります。だからこそ、被相続人と近しい関係(生計を共にしていた可能性が高い関係)の者が相続により生活基盤を脅かされないように、一定の取り分が保障されているわけです。

遺留分は配偶者、子供、直系尊属に認められています。兄弟姉妹にはありません。誰が相続人になるかによって遺留分の割合は異なります。

たとえば妻(配偶者)の場合、遺留分は2分の1です。夫が誰かに遺言で遺産をすべて渡してしまいました。唯一の相続人である妻は「遺産の遺留分を渡してください」と言えるわけです。夫の遺産が1億円だとすれば、妻は遺留分である2分の1、つまり5,000万円を遺産すべて受け取った人に請求できます。

生前贈与をする際は遺留分への配慮をしておかないと、相続人の生活に関わりますし、トラブルのもとにもなります。

特別受益への配慮

特別受益は民法903条に定められています。被相続人の生前に特別の利益を受けている相続人がいれば、遺産をそのまま分割すると不平等な結果になります。

たとえばある相続人は被相続人から開業資金や学費を受け取っていました。かなりまとまった額です。相続人のひとりが受け取った開業資金や学費を計算せずに遺産分割してしまうと、他の相続人が損するのではないでしょうか。具体的に考えてみましょう。

相続人A(兄)が学費として500万円の援助を受けていました。もうひとりの相続人であるB(弟)は何も受け取っていません。遺産が1,000万円であった場合、1,000万円を兄弟で半分にすると、兄だけ特別多く利益を受けたような結果になってしまいます。

このようなケースでは過去に利益を受けている分を計算に入れて遺産分割するのが基本です。生前贈与でも同じことが言えますので、贈与前に特別受益に他の相続人との平等・不平等は考えておく必要があります。トラブルを防止するためにも重要なことです。

贈与対象物件の調査

生前贈与の税金や相続関係について検討したら、次のすることは物件調査です。生前贈与の対象にする不動産を登記事項証明書などで確認します。

登記事項証明書には不動産の情報や権利関係が記載されています。生前贈与の対象にする不動産の名義人が誰か確認できると共に、抵当権が設定されているか(借金の担保になっているか)なども登記事項証明書で確認可能です。

登記事項証明書は法務局から取得できます。法務局の窓口から直接取得する方法や郵送で取得する方法、オンラインによる取得する方法などがあります。

生前贈与に必要な書類の収集

生前贈与の対象にする不動産の確認をしたら、次は生前贈与の契約・登記申請に必要な書類の準備をします。生前贈与による不動産名義変更登記には次のような書類が必要です。

贈与する側の必要書類
・権利証(登記識別情報)
・印鑑証明書
・固定資産税評価証明書  など

不動産をもらう側の必要書類
・住民票  など

必要書類は他の登記も一緒に行うかどうかによって変わってきます。別の登記申請も一緒にする場合は、他の登記申請時の必要書類についても確認しておきましょう。

なお、不動産名義変更を自分でする際には登記申請書も必要です。登記申請書については法務局にテンプレートがありますので、活用してください。

贈与契約書をつくる

贈与契約書がなくても財産を相手に渡すことはできます。しかし、「もらった」「もらわない」で揉めることを防ぐためにも贈与契約書は重要です。税務署などの官公庁に生前贈与を確かに行ったことを証明するためにも贈与契約書は重要な書面になります。

不動産という価値のある財産を贈るわけですから、記録・証拠として贈与契約書はしっかり作成しておきましょう。

贈与契約書への記載事項

贈与契約書には次のようなことを記載します。

・贈与した物
・贈与した人
・贈与を受けた人
・贈与の日付  など

公証役場から確定日付をもらっておくと、より契約書として信用性の高いものになります。
贈与契約書については法務局でひな形・例を公開していますので参考にしてください。

持ち戻し免除の意思表示について

生前贈与をしても特別受益として持ち戻しの対象になる可能性があります。

先にお話しした兄弟ABの例では、兄が被相続人から特別に多く利益を受けているという扱いで、遺産の計算のときに利益を受けた分も含めて計算するのが基本という話をしました。

被相続人の中には利益を含めて遺産を計算すること(持ち戻し)を喜ばないケースもあるはずです。たとえば父親と兄は特別仲がよく、兄も親身になって父親を世話していたらどうでしょう。果たして被相続人である父親は持ち戻しを望むでしょうか。

被相続人の中には心情や事情から持ち戻しを望まないケースもあります。持ち戻しを望まない場合は、贈与証書や遺言書にその旨を記載することで、持ち部戻し免除の意思表示ができます。必要であれば、贈与証書に記載しましょう。

なお、持ち戻し免除の意思表示をしても、遺留分は別です。遺留分は相続人の生活に関わることなので、どうしても制約を受けてしまいます。

 

署名・押印

登記申請に使う書類や生前贈与の契約書には署名押印が必要になります。登記申請に使う書類など、必要な個所に署名押印を忘れずにしておきましょう。

生前贈与の契約書については、必ず実印を使う必要はありません。シャチハタ以外であれば基本的にどの印鑑でも問題ないのです。しかし、実印以外を使ってしまうと、後から「捏造ではないか」「勝手に判子を押したのではないか」とトラブルになる可能性があります。信憑性を高めるためにも実印を使うことをおすすめします。

登記申請

生前贈与の登記申請の準備が整ったら、法務局の窓口に必要書類一式をそろえて名義変更の申請をします。

生前贈与の登記申請を自分でする場合はふたつのことに注意が必要です。

ひとつは「法務局の管轄」になります。法務局には管轄があるため、登記申請は管轄の法務局を確認してしなければいけません。

法務局の管轄はホームページで確認できますので、事前に管轄について確認しておきましょう。なお、司法書士に依頼する場合は管轄なども司法書士が確認して申請するため、特に気にする必要はありません。

ふたつ目の注意点は、生前贈与の名義変更登記にはある程度時間がかかる点です。

どのくらい時間がかかるかは法務局の混雑状況などにもよりますが、1~2週間ほどは期間を見なければいけません。名義変更登記の申請書に不備があって法務局とのやり取りが発生した場合はさらに時間がかかります。

法務局のホームページに登記完了までの目安日付が掲載されていますので、登記が終わるまでの目安にしてください。

司法書士に依頼する場合は不備の際のやり取りなども司法書士が窓口になり、スムーズに対応します。完了までの日付についても司法書士に確認すれば教えてもらえますし、完了したら基本的に司法書士の方から連絡があります。

権利証が発行される

生前贈与の名義変更登記を自分で申請して登記が完了したら、権利証(登記識別情報)が発行されます。権利証は不動産の名義を証明する重要な書類・情報です。紛失すると悪用のリスクもあります。大切に保管してください。

自分でする?専門家に依頼する?労力と費用を比較して検討しよう!

生前贈与の名義変更登記は自分ですることも可能です。しかし、生前贈与はどうしても相続関係や税金のことも考えなければならないため、法的な知識を持って進めないと「登記はできたが相続トラブルになった」「名義変更はできたが税金負担が重く困ってしまった」という結果になりかねません。

遺留分や特別受益、相続人間の心情、贈与税など、トラブルにならないためには登記前に考えておくべきこと、対処すべきことが多いのが生前贈与です。トラブルにならないためには、やはり専門家に任せた方が安全です。

ただ、専門家である司法書士に相談する場合、費用が不安ではないでしょうか。

司法書に依頼するか自分で進めるか迷ったら、労力と費用、リスクと安全を比較して検討してはいかがでしょう。

 

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