持ち家×離婚 離婚協議書は私文書?公正証書?両者の違いを解説!
離婚を決意した際、財産分与、養育費、慰謝料などについての取り決めを文書にする「離婚協議書」は、後のトラブルを防ぐ重要な役割を果たします。この協議書には「私文書」と「公正証書」の2つの形式があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
私文書としての離婚協議書とは
私文書の概要
私文書は、当事者同士が合意した内容をもとに、自分たちで作成する書類を指します。特に専門家の関与がなくても、双方が署名・押印することで法的効力を持たせることができます。
【メリット】
作成費用が安い
公証役場を利用する必要がないため、作成コストが抑えられます。
手軽に作成可能
自分たちで用意できるため、作成の自由度が高いです。
様式に制限はありませんので、手書きで作成することも可能です。
柔軟な内容の記載が可能
双方が合意していれば、詳細な取り決めや条件を盛り込むことができます。
【デメリット】
法的強制力が弱い
相手が約束を守らない場合、裁判所を通じて強制執行の手続きを行う必要があります。
内容不備のリスク
専門家の確認がないため、法的に無効な記載や、記載に内容についての解釈に相違がある可能性があります。
証拠能力に限界がある
書類の信頼性が公正証書に比べて低いため、トラブル発生時に不利になる場合があります。たとえば、「そんな書類を作った覚えはない・・・」「無理やり署名させられた・・・」など、後に書類の有効が問題となることもあります。
公正証書としての離婚協議書とは
公正証書の概要
公正証書は、公証役場で公証人が作成する正式な文書です。当事者が話し合って合意した内容を公証人が確認し、法律に則った形式で文書にします。
【メリット】
強制執行力がある
公正証書には、「執行認諾文言」を盛り込むことができ、相手が約束を守らない場合に裁判を経ずに差押えなどの強制執行が可能です。
法律的に正確
記載内容は、当事者の意思を反映する形となりますが、公証人が内容をチェックするため、法的に無効な記載や、解釈に相違が生じる記載がないように作成することができます。
信頼性が高い
公的な文書として証拠力が強く、トラブル時にも有利に働きます。作成時に公証人が本人確認や意思確認を行いますので、文書の有効性が問題となることは低いです。
【デメリット】
作成費用が必要
公証役場の手数料がかかります。財産分与や養育費の金額によっては費用が増えることもあります。
手間がかかる
公証役場での手続きや必要書類の準備が求められるため、時間や労力が必要です。
双方の協力が必要
相手が公正証書の作成に応じなければ手続きが進められません。また、公正証書の作成にあたっては、基本的に双方が公証役場へ出向く必要があります。
両者の使い分け方 どちらを選ぶべきか?
単純に費用を抑えたい場合
私文書による離婚協議書の方が作成費用は安くあがります。特に双方が信頼関係を保ち、取り決めが守られる見込みがある場合に選ぶ価値があります。
将来についての記載がない場合
離婚協議書の内容が、預貯金の財産分与など、すぐに完結する内容のみであって、継続的な金銭の支払いの記載(たとえば、養育費や慰謝料など)がない場合には、私文書による離婚協議書を選択することも考えられます。
ただし、後に離婚協議書の記載について、トラブルとなる可能性が考えられるなど、当事者の関係性によっては、公正証書による作成の方が安心です。
将来的なトラブルを回避したい場合
公正証書による離婚協議書をオススメします。とりわけ、
養育費や慰謝料など、継続的な金銭の支払いがある場合には、強制執行が可能な公正証書を選ぶべきです。
法的な安全性を重視する場合
公正証書による離婚協議書をオススメします。公正証書では、記載内容についての認識の相違がない文書の作成が可能です。また作成時に公証人が関与することにより、「そんな文書を作った覚えはない・・・」「無理やり押印をさせられた・・・」など、後々に文書の有効性が問題となる可能性が限りなく少なくなります。
離婚協議書作成時の注意点
【私文書・公正証書 共通の注意点】
具体的かつ明確な記載
曖昧な表現や抜け漏れを避け、取り決め内容を詳細に記載することが重要です。
将来の変更を想定する
子どもの成長や経済状況の変化に応じた条件変更の可能性を考慮します。
双方の署名・押印
私文書でも公正証書でも、署名・押印が必要不可欠です。
【公正証書作成時の注意点】
公証役場での予約
公証役場は事前予約が必要な場合が多いため、早めに計画を立てましょう。
必要書類の準備
身分証明書、住民票、離婚届などを用意しておくとスムーズです。
専門家への相談
公証役場は、当事者側の作成した文書について公証してくれる場所です。その過程で文書の内容についてチェックをしてくれますが、基本的な文書については、当事者から提供する必要があります。
公証役場に「離婚協議書を作成したいんですが・・・」と尋ねていくと、「案文をご用意ください」と返されます。この案文作成をしっかりと行わないと、作成した公正証書に当事者の希望がうまく反映されないという結果になりかねません。
そのような観点から、公正証書の内容を決める際には、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。
まとめ
離婚協議書を作成する際、私文書と公正証書にはそれぞれ特徴やメリット・デメリットがあります。選択肢を判断する際には、費用、強制執行力の必要性、手間などを考慮することが大切です。
私文書による離婚協議書で対応できる場合
簡易な内容で、出来るだけ作成費用を安くしたい。
養育費や慰謝料など、定期的な金銭の支払いに関する記述がない。
将来的に文書の有効についてトラブルになる可能性がないと。
公正証書による離婚協議書を選択すべき場合
法的な安全性を重視したい
将来のトラブルの可能性を、出来るだけ排除したい
養育費や慰謝料など、定期的な金銭の支払いに関する記述がある。
第三者の視点から、内容に不備・不足がないか、しっかり確認してほしい。