収益物件は個人名義と法人名義、結局どちらで買う?

収益物件を購入するとき、意外と早い段階で決めなければならないのが、

「個人名義で買うか?」
「法人名義で買うか?」

という問題です。

1棟目なら「とりあえず自分の名義で買えばいいかな」と考える方も多いでしょう。

一方、すでに不動産賃貸業をしている方なら、「次の物件から法人で買った方がいいのでは?」と考えることもあります。

結論からいうと、すべての人に「個人がおすすめ」「法人がおすすめ」と言えるものではありません。

特に判断材料になるのは、次のような点です。

  • 現在の所得
  • 収益物件から得られる利益
  • 今後どこまで物件を増やすのか
  • 融資をどのように利用するのか
  • 将来どのように売却するのか

そして、収益物件の名義を考えるうえで避けて通れないのが、所得税などの税金です。

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収益物件を購入するときの所有権移転登記、費用、必要書類、決済の流れについては、「【2026年版】収益物件を購入したときの登記手続|費用・必要書類・決済の流れを司法書士が解説」で詳しく解説しています。

個人名義で購入すると、家賃収入にはどう課税される?

個人がアパートやマンションなどを賃貸して得た所得は、原則として「不動産所得」となります。

基本的には、

家賃収入などの総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得

という考え方で計算します。

ここで重要なのが、個人の所得税は累進課税になっていることです。

所得税率は、課税される所得金額に応じて5%から45%まで段階的に高くなります。

そのため、すでに給与所得や事業所得などが大きい方の場合、そこへ収益物件からの不動産所得が加わることで、所得税の負担が大きくなる可能性があります。

たとえば、本業ですでに一定の所得がある会社員の方が、一棟アパートを購入するケース。

さらに2棟目、3棟目と購入して不動産所得が増えていけば、所得税の負担も大きくなる可能性があります。

そこで、

「これから購入する収益物件は法人で持った方がいいのでは?」

という検討が出てくるわけです。

法人名義なら法人税。では法人の方が得?

では、所得税の税率が高くなる可能性があるなら、最初から法人で購入すればよいのでしょうか。

ここも、それほど単純ではありません。

法人名義で収益物件を所有した場合、賃料収入などは法人の収益となり、経費などを差し引いた法人の所得に対して法人税などが課税されます。

一定の中小法人については、所得のうち年800万円以下の部分について、法人税の軽減税率が適用される制度もあります。

そのため、個人の所得が高くなっている方にとっては、法人名義での購入を検討する意味が出てくることがあります。

ただし、法人には法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税などもあります。

さらに法人を設立すれば、

  • 法人設立の費用
  • 毎年の決算・税務申告
  • 法人を維持するためのコスト
  • 役員報酬をどうするか

といった、個人にはない問題も出てきます。

したがって、「所得税は最大45%だから、法人の方が得」と単純に判断することはできません。

実際にどちらが税務上有利になるかは、その方の所得や物件から生じる利益、法人の状況などによって変わります。

具体的な税額のシミュレーションについては、税理士へ相談することをおすすめします。

個人名義と法人名義を比較すると?

ここまでの違いを、ざっくり比較してみましょう。

比較ポイント 個人名義 法人名義
所有者 個人 株式会社・合同会社など
所得・利益への課税 不動産所得として給与所得などと合わせて所得税を計算 法人の所得として法人税などを計算
税率の特徴 所得税は累進課税 法人税のほか法人住民税・法人事業税なども考慮
手間 比較的シンプル 設立・決算・税務申告などが必要
融資 個人として審査 法人として審査。代表者保証等が関係する場合も
あとから名義を変える場合 個人から法人への移転は単なる名義変更ではなく、原則として新たな所有権移転が必要

「1室なら個人」「何棟も買うなら法人」と単純に線引きできるものではありません。

ただ、今後収益物件を増やしていく予定がある方ほど、最初の購入時から法人保有について検討する意味は大きくなります。

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税金だけで決めない。融資もかなり重要

収益物件オーナーの場合、税金と同じくらい重要なのが融資です。

税務上は法人で購入したいと思っていても、金融機関との相談では、個人名義での融資を前提として話が進むケースもあります。

逆に、今後の事業拡大を考えて、法人で融資実績を作っていきたいという方もいるでしょう。

金融機関は、

  • 誰が物件を購入するのか
  • 誰に融資するのか
  • どの不動産を担保にするのか
  • 代表者保証をどうするのか
  • 既存借入がどれくらいあるのか

などを確認して融資を判断します。

そのため、「税金+融資+今後の物件取得」までセットで考えるのが現実的です。

「とりあえず個人で買って、あとから法人へ」は要注意

ここは、登記を扱う司法書士として特にお伝えしたいポイントです。

たとえば、3,000万円の一棟アパートを個人名義で購入したとします。

数年後、不動産賃貸業が大きくなったので法人を設立。

そこで、

「このアパートも法人名義に変えておこう」

と思ったとします。

ところが、個人と法人は法律上まったく別の主体です。

そのため、個人から法人へ所有者を変える場合は、単なる氏名変更のような登記ではありません。

原則として、売買などの法律上の原因に基づいて、個人から法人への新たな所有権移転登記を行うことになります。

個人で所有

売買などによる所有権移転

法人が所有

自分が100%所有する法人でも同じ?

ここはよく誤解されるところです。

「法人といっても自分一人の会社です」

「株式も全部自分が持っています」

という場合でも同じです。

たとえば、

個人:山田太郎
法人:株式会社山田不動産

だったとします。

山田太郎さんが株式会社山田不動産の株式を100%所有していても、山田太郎さんと株式会社山田不動産は法律上別の主体です。

そのため、山田太郎さんから株式会社山田不動産へ収益物件を移す場合、原則として所有権移転登記が必要になります。

法人へ移すと、もう一度登記費用などがかかる

個人から法人へ収益物件を移す場合には、新たな所有権移転登記が必要になります。

そのため、登録免許税や司法書士報酬などの登記費用が発生します。

さらに、不動産取得税や譲渡に関する税金など、登記以外の税務上の問題についても検討が必要です。

また、金融機関の抵当権などが設定されている物件であれば、融資契約や担保の内容も確認しなければなりません。

「法人を作ったので、登記簿の名前だけ変えてください」という手続では済まないわけです。

これが、購入前に個人・法人のどちらで所有するのかを検討しておいた方がよい大きな理由です。

すでに個人名義で持っている物件はどうする?

ここまで読むと、

「もう個人名義で収益物件を持っているんだけど……」

という方もいるでしょう。

もちろん、法人を設立したからといって、既存物件をすべて法人へ移さなければならないわけではありません。

たとえば、

1棟目・2棟目 → 個人名義のまま保有
3棟目以降 → 法人名義で購入

という方法も考えられます。

一方、すでに所有している収益物件を法人へ移したい場合には、登記だけでなく、税金、融資、売買価格なども含めて検討する必要があります。

特に複数物件をまとめて法人へ移す場合は金額も大きくなるため、税理士や金融機関などとも相談しながら進めることをおすすめします。

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個人で所有している収益物件を法人へ移す具体的な方法については、「【2026年版】個人所有の収益物件を法人へ移すには?登記方法と注意点」で詳しく解説します。

事業性融資・根抵当権の登記にも対応

収益物件を複数所有するようになると、一般的な住宅ローンとは少し違った登記も増えてきます。

たとえば、

  • 所有している収益物件を担保に追加融資を受ける
  • 新しい物件購入のために事業性融資を受ける
  • 法人の融資について根抵当権を設定する
  • 追加融資に合わせて根抵当権の極度額を変更する

といったケースです。

司法書士法人あやめ池事務所では、収益物件購入時の所有権移転登記だけでなく、抵当権・根抵当権設定、極度額変更などにも対応しています。


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1棟目だけでなく、2棟目・3棟目も考えて名義を決める

収益物件の場合、マイホームとは違って「今回の1件で終わり」とは限りません。

1棟目を購入して運用が軌道に乗れば、2棟目、3棟目と買い増していくこともあります。

だからこそ、購入名義を考えるときは、今回の物件だけではなく「今後どうしたいか」まで少し考えておくことをおすすめします。

たとえば、

「まず区分マンションを1室だけ所有したい」

という方と、

「今後10年で一棟物件を何棟か購入したい」

という方では、検討すべき内容も違ってきます。

これから物件を増やす可能性があるなら、そのことも税理士・金融機関・司法書士へ伝えておくと、より具体的な検討ができます。

法人で購入するなら、法人設立のタイミングにも注意

「法人名義で購入したいけれど、まだ会社を作っていない」というケースもあります。

この場合、法人設立と不動産購入のスケジュールを合わせる必要があります。

法人を買主として決済・登記するのであれば、決済までに法人が設立され、必要な手続ができる状態にしておかなければなりません。

融資を利用するのであれば、金融機関側の審査や契約スケジュールもあります。

そのため、「決済直前に会社を作れば大丈夫」と考えず、法人購入の可能性が出た段階で準備を始めるのがおすすめです。

個人・法人で迷ったら「登記直前」ではなく「購入前」に

収益物件を個人名義で買うか、法人名義で買うか。

税金だけでなく、融資や今後の買い増しなども関係するため、司法書士だけで「こちらが絶対に得です」と判断できる問題ではありません。

ただし、登記の立場から明確にお伝えできることがあります。

購入したあとで個人から法人へ移すのは、単純な名義変更ではありません。

だからこそ、

  • 現在の所得はどれくらいか
  • 今後、収益物件を増やす予定があるか
  • 個人と法人で税負担はどう変わるか
  • 金融機関はどちらの名義で融資するのか
  • 将来、物件をどのように売却・承継するのか

このあたりを購入前に整理しておくことが大切です。

司法書士法人あやめ池事務所では、個人・法人による収益物件の購入登記をはじめ、投資用ローン・事業性融資に伴う抵当権や根抵当権の設定などにも対応しています。

「まだ売買契約前だけど、個人と法人のどちらで買うか迷っている」という段階でも、登記の観点から必要となる手続をご案内できます。

収益物件の購入が具体的になってきたら、登記直前ではなく、少し早めにご相談ください。

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