亡くなった父の部屋を整理していたら、引き出しから「遺言書」と書かれた封筒が出てきた。
「中身を確認してもいいのかな?」
「家族みんなで開ければ問題ない?」
こんな場面、実際の相続でも十分に考えられます。
しかし、封印された遺言書を見つけた場合は、ちょっと待ってください。
封印のある自筆証書遺言は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。
また、自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、封印の有無にかかわらず、原則として家庭裁判所の「検認」という手続が必要です。
この記事では、検認の意味、必要書類、費用、申立ての流れ、勝手に開封してしまった場合の対処法まで分かりやすく解説します。
この記事で分かること
- 自筆証書遺言の検認とは何か
- 検認が必要な遺言書・不要な遺言書
- 遺言書を勝手に開封した場合の対処法
- 検認の必要書類・費用・申立ての流れ
- 検認後の相続登記や預貯金の相続手続
自筆証書遺言の検認とは?
検認とは、家庭裁判所が遺言書の状態を確認し、その内容を記録する手続です。
主な目的は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の偽造や変造を防ぐことです。
例えば、遺言書に書かれている日付、署名、訂正箇所、用紙の状態などを確認します。
ここで大切なのは、検認は遺言書が有効か無効かを判断する手続ではないということです。
検認を受けたからといって、遺言内容の法的な有効性まで保証されるわけではありません。
自筆証書遺言の法律上の要件については、自筆証書遺言の書き方【2026年版】も参考にしてください。
検認が必要な遺言書・不要な遺言書
すべての遺言書について検認が必要なわけではありません。
| 遺言書の種類 | 検認 |
|---|---|
| 自宅で保管された自筆証書遺言 | 原則必要 |
| 法務局で保管された自筆証書遺言 | 不要 |
| 公正証書遺言 | 不要 |
| 秘密証書遺言 | 必要 |
特に知っておきたいのが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認が不要という点です。
法務局の保管制度については、関連記事「自筆証書遺言書保管制度とは?法務局に預けるメリット・費用・手続きを解説【2026年版】」で詳しく解説しています。
遺言書を勝手に開封したらどうなる?
封印された遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもと開封する必要があります。
家庭裁判所以外で開封すると、5万円以下の過料の対象となる可能性があります。
ただし、ここで安心していただきたいことがあります。
勝手に開封したからといって、それだけで遺言書が無効になるわけではありません。
目次
例えば、長男が遺言書を開封してしまった場合
母親が亡くなった後、長男が遺言書の封筒を見つけ、中身を確認するために開封してしまったとします。
この場合も、遺言書を捨てたり書き直したりせず、そのままの状態で保管し、家庭裁判所で検認の手続を進めましょう。
注意:封印されていない遺言書であっても、検認が必要な場合があります。「封筒に入っていないから検認不要」というわけではありません。
検認の申立ては誰がする?
検認の申立てを行うのは、原則として次の人です。
- 遺言書の保管者
- 遺言書を発見した相続人
申立先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
例えば、亡くなった父親の最後の住所が奈良市で、長男が大阪市に住んでいる場合、長男の住所ではなく、父親の最後の住所地を基準に管轄を判断します。
検認の申立てに必要な書類
一般的には、次の書類を準備します。
- 遺言書検認申立書
- 遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続関係によって追加で必要となる戸籍等
相続人に亡くなっている子がいる場合や、兄弟姉妹が相続人となる場合などは、必要な戸籍が増えることがあります。
戸籍の収集は、思った以上に手間がかかることもあります。
例えば、父親が何度も転籍していた場合、複数の戸籍を確認する必要があるかもしれません。
必要書類は相続関係によって異なるため、申立先の家庭裁判所で確認しましょう。
検認にかかる費用はいくら?
家庭裁判所への申立てに必要な基本的な費用は次のとおりです。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 検認申立ての収入印紙 | 遺言書1通につき800円 |
| 連絡用郵便切手 | 裁判所によって異なる |
| 検認済証明書 | 遺言書1通につき150円 |
| 戸籍謄本等の取得費用 | 必要な通数による |
これらは裁判所手続等に必要な費用です。
司法書士などへ書類作成を依頼する場合には、別途報酬が発生します。
検認の手続きの流れ
基本的には、次のように進みます。
STEP 1 遺言書を発見する
封印されている場合は開封せず、そのまま保管します。
STEP 2 必要な戸籍等を集める
亡くなった方と相続人の関係を確認します。
STEP 3 家庭裁判所へ検認を申し立てる
申立書と必要書類を提出します。
STEP 4 家庭裁判所から検認期日の通知が届く
相続人等に検認を行う日が通知されます。
STEP 5 家庭裁判所で検認を受ける
申立人が遺言書を持参し、裁判所が遺言書の状態を確認します。
STEP 6 検認済証明書を取得する
検認終了後、必要に応じて検認済証明書の交付を申請します。
検認済証明書は、相続登記や預貯金の相続手続で必要になることがあります。
検認には相続人全員が出席しないといけない?
いいえ。
相続人全員が出席しなくても、検認の手続は行われます。
例えば、相続人が長男・長女・次男の3人で、次男が遠方に住んでいるとします。
次男が検認期日に出席できなかったとしても、それだけで検認ができなくなるわけではありません。
申立人以外の相続人が出席するかどうかは、それぞれの判断に任されています。
検認にはどのくらい時間がかかる?
検認は、申立てをした当日に完了する手続ではありません。
家庭裁判所が検認期日を指定し、相続人へ通知する必要があります。
申立てから検認期日まで約1か月を目安とする裁判所の案内もありますが、実際の期間は裁判所の状況や申立内容によって異なります。
そのため、遺言書に基づいて不動産の名義変更や預金の解約を進めたい場合は、早めに準備しておきたいところです。
検認を受けないまま相続登記はできる?
自宅保管の自筆証書遺言など、検認が必要な遺言書を使って相続登記を申請する場合、通常は検認済証明書の付いた遺言書が必要です。
つまり、遺言書を見つけたからといって、すぐにその遺言書だけで相続登記を進められるとは限りません。
なお、検認を受けていないこと自体によって、遺言書が当然に無効になるわけではありません。
「遺言書の効力」と「相続手続で必要となる検認」は分けて考えましょう。
検認後に遺言書が無効と分かることもある?
あります。
検認は、遺言書の有効性を確定させる手続ではありません。
例えば、検認を受けた遺言書でも、日付の記載に問題があったり、本人が作成したものか争いになったりすることがあります。
また、遺言内容が不明確で、相続登記などの手続を進めるうえで問題になる場合もあります。
検認が終わったからすべて解決、というわけではありません。
具体的な注意点は、自筆証書遺言が無効になるケース|日付・署名・押印・訂正方法で解説しています。
法務局保管制度なら検認の手間を省ける
これから自筆証書遺言を作成する方には、法務局の自筆証書遺言書保管制度も知っておいていただきたいところです。
法務局に遺言書を預けることで、紛失や改ざんのリスクを減らせるだけでなく、相続開始後の検認も不要になります。
一方、法務局は遺言内容の法的な有効性を保証するわけではありません。
遺言書を作成する段階では、財産の指定方法や相続人の関係などについて十分に検討しておくことが大切です。
まとめ|遺言書を見つけたら、慌てて開封しないこと
自筆証書遺言を見つけた場合、まず確認したいのは、法務局の保管制度を利用しているかどうかです。
自宅保管の自筆証書遺言であれば、原則として家庭裁判所の検認が必要になります。
特に封印されている場合は、勝手に開封せず、そのままの状態で保管しましょう。
また、検認は遺言書の有効性を保証する手続ではありません。相続登記や預貯金の解約を進める際には、遺言内容を確認することも大切です。
司法書士法人あやめ池事務所では、遺言書に基づく相続登記をはじめ、相続手続のサポートを行っています。
「自筆証書遺言が見つかったけれど、何から始めればいいか分からない」という方も、お気軽にご相談ください。



