【事例解説】生駒市のマンション(亡父名義)について、遺言に記載のとおり、長男へ不動産名義変更する場合
生駒市で遺言による不動産名義変更申請を行う場合の、費用や手順、問題点について、事例に沿って解説しています。
目次
遺言による不動産名義変更の事例
先日亡くなった父が公正証書遺言を残していました。
父の遺言書の内容を家族で確認すると「生駒市の土地建物など不動産を含むすべての遺産は長男に相続させる。」と書かれていました。兄である長男だけでなく、私(次男)を含む相続人はこの父の遺言内容に困っているのです。
父は、家族に相続で揉めて欲しくないために公正証書遺言で遺産分割を指定したのかもしれません。あるいは、父親なりの相続への想いがあったのかもしれません。ですが、私たちにとっては遺言書の内容は実情にそぐわず困るものでした。可能であれば、父が残した公正証書遺言とは違った遺産分割をしたいと考えています。
父の相続における相続人は、長男と私(次男)、妹、そして母(父の妻)の4人です。
仮に公正証書遺言の内容と違った遺産分割ができる場合は、不動産は遺言書の指定通りに兄である長男が相続し、預金や有価証券は私・兄・妹の3人で平等に分けるかたちで話がまとまっています。父の遺言書内容と異なる遺産分割は可能でしょうか。
相続税の課税などの注意点も含めて教えていただければと思います。
ご相談の要点
父親は公正証書遺言を残していた
公正証書遺言の内容は「不動産含め遺産すべて長男に相続させる」というもの
3カ月前に亡くなった父親の遺産は次の通りである
生駒市内にある土地と建物(宅地/50坪、建物/30坪、固定資産評価額1,000万円)
預金と有価証券500万円分
父親の遺言内容と違った遺産分割をしたい
相続人は「長男がすべての不動産を相続し有価証券と預金は3人の子供で平等に分割」で合意している
遺産相続のときの相続税も不安である
遺言による不動産名義変更をする場合の注意点について
遺言書の内容と違った遺産分割の可否と相続税納付の要否についてのご相談です。相続税、遺言書の順番で説明します。
相続税について
まずは相続税についてですが、今回の相続ケースでは課税されません。
相続税には基礎控除が定められています。基礎控除の範囲内の場合は相続税が課税されないという仕組みです。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。
今回のケースでは基礎控除の範囲内ですから相続税はかかりません。また、基礎控除の範囲内に収まる場合は相続税の申告も必要ありません。相続税について不安だというお話ですが特に心配する必要はないので安心してください。
なお、今回の相続ケースでいただいた情報で判断する範囲では相続税申告は不要だと思いますが、念のために次のふたつに注意してください。
ひとつはお父様が亡くなる3年以内に贈与はないかです。相続時から遡って3年以内の贈与は相続税の計算に含まれてしまいます。お父様が生前贈与をしていないか確認してください。
また、過去に相続時精算課税制度を利用している場合も注意が必要です。生前贈与や相続時精算課税制度の利用があれば相続税の納付や申告の要否が変わってくる可能性があるため、心当たりがある場合は確認しておきましょう。
遺言の内容を他の相続人に通知する必要がある。
お父様が残された公正証書遺言の内容と違った遺産分割ができるかどうかですが、これについては「可能」です。
遺言書は亡くなった人の意思を記したものになります。遺産はもともと亡くなったお父様の財産ですから、お父様は自分の財産を好きに処分できるはずです。しかし、遺産分割がおこなわれる時点ではお父様は亡くなっているわけですから、自分の財産分割について意見することはできません。だからこそ遺言書を活用するわけです。
しかし、遺言書はあくまで被相続人の意思ですから、相続人には相続人で別の言い分があります。
たとえば東京に住んでおりもう実家のある地方都市に帰る気のない長男に「実家の家屋敷を相続させる」と被相続人が遺言したらどうでしょう。そしてその家には次男夫婦が住んでいたらどうなるでしょうか。
長男は「もう帰りたくないから家屋敷はいらない」と思っており、次男は「自分が住んでいるのだから相続したい」と思っていたら大変です。遺言書と違った遺産分割ができないのであれば、長男と次男両方にとって不本意な相続になってしまいます。このようなケースも想定して、遺言書の内容とは違った遺産分割も認められているのです。
ただし、相続人ひとりの意思で勝手に遺言書の内容と違った遺産分割ができるわけではありません。遺言書の内容と違った遺産分割をするためには、遺言書の内容を通知した上で相続人全員の合意が必要なのです。
今回のケースでは遺言書の内容と違った遺産分割について相続人の間で合意が取れているようなので、相続人の実情に合った遺産分割を進めても差し支えありません。念のためにもう一度相続人の間で遺言書と違った遺産分割をする旨の合意を確認しておくといいでしょう。
遺言と内容の異なる遺産分割協議について
土地と建物は遺言書の内容通りに長男が相続するのであれば、遺言書を利用して相続登記が可能です。他の遺産は有価証券と預金という話でしたから、こちらについては相続人の間でさらに遺産分割協議をすることが考えられます。
遺産分割協議とは相続人で話し合って遺産の分割を決める方法です。不動産以外の遺産である有価証券と預金をどのように分割するか、遺産分割協議をして、遺産分割協議書にまとめるという流れでおこないます。
預金と有価証券はすでに子供3人で平等に分割するという話になっているとのことですが、こちらについてもあらためて確認を取っておいた方がいいでしょう。相続人すべてがあらためて賛同したら預金と有価証券についての遺産分割協議書を作成します。
司法書士法人あやめ池事務所からのご提案
公正証書遺言の内容と異なった遺産分割は可能です。相続人全員の合意が形成されているようなので、不動産は遺言書を使って相続登記し、有価証券や預金は遺産分割協議をするという流れで進めます。
後日のトラブルを防止するために遺産分割協議書の内容や文言には注意してください。遺産分割協議書は遺産分割協議の内容をもとに、司法書士など専門家が作成することも可能です。トラブル防止の観点からは専門家による作成をおすすめします。
相続税は基本的にかかりません。ただし、お父様の生前に贈与や相続時精算課税制度の利用がなかったかなど、ふたつのポイントについて確認しておいた方がいいでしょう。不安なことがあれば司法書士などの専門家を頼ってください。
遺言による不動産名義変更手続の進め方
司法書士法人あやめ池事務所へ、ご依頼を頂いた場合の手続の進め方は、下記の通りです。
権利関係調査(あやめ池事務所)
司法書士法人あやめ池事務所にて、名義変更の対象となる不動産について、権利関係上の問題点がないか、調査を行います。お客様が行う作業はありません。すべての調査を、司法書士法人あやめ池事務所の担当スタッフが行います。
必要書類の準備(お客様)
手続に必要な書類を収集します。ご要望があれば、司法書士法人あやめ池事務所で代理収集することも可能です。
公正証書遺言の正本
名義変更をする不動産の権利証
長男様の住民票
長男様の認め印
長男様の本人様確認書類の写し
登記書類の作成~署名・押印~登記申請
事前調査~必要書類の準備が完了しましたら、司法書士法人あやめ池事務所にて、登記申請書、登記原因証明情報、委任状、上申書など、名義変更登記に必要な書類を作成します。
そのうえで、長男様にご説明のうえ、署名・押印をして頂きます。
ご説明や署名・押印をしていただく際には、下記のいづれの方法でも対応可能です。
事務所やご自宅での対面形式
スマホやPCを利用したオンライン面談形式 ※
※お手続の内容によっては、対面での面談が必須の場合もございます。
登記書類への署名・押印が済みましたら、司法書士法人あやめ池事務所より、管轄法務局へ名義変更登記を申請させて頂きます。
預貯金について遺産分割協議書の作成
名義変更登記と並行して、預貯金部分について遺産分割協議書の作成を行います。預貯金について法定相続分に沿って分割する程度の簡単な遺産分割協議書でしたら、ご本人様でも作成可能です。また、提出先の金融機関に書式が用意されていることもあります。
料金について
司法書士法人あやめ池事務所にて、今回のケースのような遺言による不動産名義変更登記を行う場合の費用は下記の通りです。
登記費用 96,100円(税込101,100円程度)
手数料 | 実費 | |
---|---|---|
名義変更登記/相続・遺言 | 40,000円 | 40,000円 |
戸籍等相続関係書類の収集 | 10,000円 | 3,000円程度 |
事前調査 | 1000円 | |
登記情報・登記事項証明書
|
600円 | |
郵便代・通信費
|
1500円 | |
小計 | 50,000円(税込55,000円) | 46,100円 |
合計 |
96,100円(税込101,100円) |
公正証書遺言での名義変更登記
生駒市内にある土地と建物=固定資産評価額1,000万円
預貯金についての遺産分割協議書はご自身で作成