【事例解説】奈良市の土地(時価1000万円)を父から子へ 生前贈与 する場合の 手順 費用 注意点 について
奈良市の土地について、生前贈与で父から息子に対して不動産名義変更登記を行う場合の、注意点や手順、費用について、事例に沿って解説しています。
目次
不動産の 生前贈与 に関する事例
奈良市で事業を営んでいるのですが、私(父)の年齢や 相続対策 を考えて事業を継ぐ長男に 生前贈与 を検討しています。生前贈与 したいのは土地(時価1,000万円)です。
ただ、贈与は税金が高いという話をよく耳にしますので 生前贈与 した場合の税金が不安です。せっかく土地を生前贈与しても、多額の税金を請求されては生前贈与の意味がありません。税金額によっては手持ちの現金が足りず、せっかくの土地を換金しなければならないかもしれません。
父親である私の相続人は長男だけではない点も気がかりです。息子の他にも子供がいますので、現時点で長男に生前贈与すると他の子供と相続時に揉めるのではないかと心配しています。
家族には事業を継ぐ息子を親族でサポートして欲しいと願っているため、相続トラブルは避けたいのです。子供のひとりに 生前贈与 した場合、他の子供の相続関係はどうなるのでしょうか。
税金や他の子供(相続人)と揉めやすい点など、長男に 生前贈与 する上で注意すべきポイントを教えてください。
ご相談の要点
私(父)は72歳で長男は40歳である。私は事業を営んでいる
私には妻と子供が3人いる。相続人は妻と子供3人である
奈良市にある私(父)の所有する土地を長男へ名義変更したい
生前贈与 したいのは土地30坪(時価1,000万円、評価額650万円)
贈与税 や 不動産取得税 などの税金が不安である
相続トラブルを起こしたくないので他の子供の相続権はどうなるのか知りたい
仮に司法書士に依頼した場合の手順や費用を教えて欲しい
不動産の 生前贈与 で注意すべき点について
事業を営んでいる父親が事業を継ぐ長男に土地を 生前贈与 したいというご相談です。
生前贈与は「どうしてもこの財産を特定の相続人に渡したい」というときに有効な方法になります。また、生前贈与は「相続対策」としても有効な方法のひとつです。
ただし、生前贈与は「相続」ではなく「贈与」になってしまうため、税率の高い贈与税への対策が問題になります。
また相続で揉めたくない場合は贈与税以外にも注意すべきポイントがあります。
長男に土地を生前贈与する場合に注意すべきポイントは以下の4つです。
長男への生前贈与の贈与税と不動産取得税への対策
長男以外の相続人(妻と子供2人)の遺留分に注意が必要
長男に生前贈与した場合の持ち戻しにも注意が必要
生前贈与は父親と息子が協力して行わなければならない
以上の4つのポイントに注意していないと、生前贈与でトラブルになる可能性があります。依頼者が特に気にしている税金から順に注意すべきポイントと対処法を見ていきましょう。
生前贈与を行う場合の税負担について
土地を生前贈与する場合、贈与税と不動産取得税、登録免許税がかかります。
贈与税は財産の贈与について課税される税金で税率が高いことで知られています。不動産取得税とは不動産を新しく取得したときに課税される税金で、贈与の場合も課税の対象です。登録免許税は父親から長男に土地の名義変更をする際にかかる税金になります。
贈与税・不動産取得税・登録免許税の中で最も課税が高額になるのは、おそらく贈与税でしょう。父親から長男に土地を生前贈与しても、贈与税の支払いに苦慮しては大変です。生前贈与を進める前に贈与税についてどのように対処するか考えておくことがポイントになります。
父親から長男への生前贈与については「相続時精算課税制度」の利用で対処する方法が考えられます。
相続時精算課税制度とは、贈与時に贈与税を払うのではなく、父親の相続が発生したときに贈与分を相続税として清算する制度です。2,500万円が相続時精算課税制度の枠になりますので、この金額内であれば贈与税を納めず相続時に他の遺産と合わせて清算できます。
登録免許税や不動産取得税については、生前贈与の時点で別途計算し、長男と相談の上で支払いに要する現金を準備しておくと安心です。
遺留分について
生前贈与をする父親の懸念事項として他相続人との相続トラブルがありました。父親の相続人は長男の他の子供2人と妻がいます。長男にだけ財産を渡すと、他相続人からの反発が予想されるため、あらかじめ配慮しておくことが望ましいと考えられます。
妻や子供など他相続人に対しては、遺留分について配慮しておくことが重要です。
遺留分とは、それぞれの「相続人が最低限もらえる相続分のこと」です。たとえば、夫名義の家で生活し、夫が大黒柱だったケースを想像してください。夫が遺言ですべての遺産をひとりの相続人あるいは赤の他人に渡してしまった場合、妻や子供はどうなるでしょうか。生活に困窮するのではないでしょうか。遺産は家族の生活を支えるものでもありますから、妻や子供には遺留分として最低限の取り分が設定されているのです。
相続時に長男と他相続人が揉めないよう、遺留分に配慮した遺言書を作成するなど、相続トラブルを回避するための策を講じておきましょう。
もち戻し免除
注意したいもののひとつに「持ち戻し」があります。長男に生前贈与した土地は相続時に「相続の前借である」と判断されて、土地を相続財産に上乗せされてしまう可能性があるのです。生前贈与分を遺産に加算されてしまうことを持ち戻しといいます。
持ち戻しを望まない場合は持ち戻し免除の意思表示を明確にしておくことが重要です。相続時に長男に生前贈与した土地の持ち戻しを望まない場合は、遺言書に持ち戻し免除について記載しておきましょう。
父と息子の意思
父親が長男に土地を生前贈与したいと思っても、長男が望まない場合は生前贈与できません。受け取る側の意思を無視して生前贈与を進めることはできないのです。長男が生前贈与を望まない場合は、父親が勝手に土地の名義変更はできませんので注意してください。生前贈与を進める前提として、土地を受け取る長男の承諾と協力を取り付ける必要があります。
また、生前贈与では父親の意思も重要です。生前贈与をする前提として、父親の意思能力も必要になります。父親が認知症であるなどの場合は生前贈与を進められませんので、合わせて注意が必要です。
司法書士法人あやめ池事務所からのご提案
まずはご相談者である父親と贈与を受ける長男の間で生前贈与の意思確認をしてください。その上で、「相続時課税制度を利用した生前贈与」と「遺言書の作成」を提案いたします。
今回のご相談で生前贈与する土地は相続時精算課税制度の利用枠の範囲内です。相続時精算課税制度を利用して贈与税対策をしてはいかがでしょう。相続時課税制度を使うことで、長男に生前贈与する際の贈与税問題はクリアできます。
遺留分や落ち戻しについては遺言書を作成し、後の相続トラブル防止策にしてはいかがでしょう。
相続時精算課税制度を利用した不動産名義変更手続の進め方
司法書士法人あやめ池事務所へ、ご依頼を頂いた場合の手続の進め方は、下記の通りです。
権利関係調査 (あやめ池事務所)
司法書士法人あやめ池事務所にて、生前贈与の対象となる土地について、権利関係上の問題点がないか、調査を行います。また、贈与税や不動産取得税、登録免許税など、手続に付帯する税負担についても、予め調査確認をおこないます。お客様が行う作業はありません。すべての調査を、司法書士法人あやめ池事務所の担当スタッフが行います。
必要書類の準備 (お客様)
手続に必要な書類を収集します。ご要望があれば、司法書士法人あやめ池事務所で代理収集することも可能です。
贈与する物件の権利証もしくは登記識別情報通知
贈与する物件の課税明細書
お父様の印鑑証明書
お父様の実印
お父様の本人確認書類の写し
長男様の住民票
長男様の認め印
長男様の本人確認書類の写し
登記書類の作成~署名・押印~登記申請
事前調査~必要書類の準備が完了しましたら、司法書士法人あやめ池事務所にて、登記申請書、登記原因証明情報、贈与証書、委任状、上申書など、名義変更登記に必要な書類を作成します。
そのうえで、お父様・息子様にご説明のうえ、署名・押印をして頂きます。
ご説明や署名・押印をしていただく際には、下記のいづれの方法でも対応可能です。
事務所やご自宅での対面形式 スマホやPCを利用したオンライン面談形式 ※
※お手続の内容によっては、対面での面談が必須の場合もございます。
登記書類への署名・押印が済みましたら、司法書士法人あやめ池事務所より、管轄法務局へ名義変更登記を申請させて頂きます。
遺言の作成
名義変更登記と並行して、遺留分や持ち戻し免除について遺言を作成します。
下記のいづれの方法で作成することも可能です。
公正証書遺言
自筆証書遺言
料金について
司法書士法人あやめ池事務所にて、今回のケースのような相続時精算課税制度を利用した生前贈与による不動産名義変更登記~遺言の作成を行う場合の費用は下記の通りです。
登記費用 198,500円(税込205,000円)
手数料 | 登録免許税等の実費 | |
---|---|---|
名義変更登記/贈与 | 40,000円(税込44,000円) | 130,000円 |
贈与証書作成 | 15,000円(税込16,500円) | 400円 |
事前面談・本人確認業務 | 10,000円(税込11,000円) | |
事前調査 | 1,000円 | |
登記情報・登記事項証明書
|
600円 | |
郵便代・通信費
|
1,500円 | |
小計 | 65,000円(税込71,500円) | 133,500円 |
合計 |
198,500円(税込205,000円) |
※前提条件について
贈与対象となる土地の評価額650万円
相続時精算課税制度を利用する。
遺言については、ご自身で作成する。