【2026年8月リライト】
不動産名義変更に関係する税金について、相続・贈与・売買・離婚(財産分与)ごとの違いが分かるよう内容を全面的に見直しました。登録免許税・不動産取得税・贈与税・相続税に加え、見落としやすい譲渡所得税についても解説します。
目次
- 1 不動産名義変更の税金は「なぜ名義を変えるのか」で決まる
- 2 まず知っておきたい「不動産名義変更に関係する5つの税金」
- 3 相続・贈与・売買・離婚の税金を一覧で比較
- 4 相続による不動産名義変更でかかる税金
- 5 贈与による不動産名義変更でかかる税金
- 6 売買による不動産名義変更でかかる税金
- 7 離婚・財産分与による不動産名義変更でかかる税金
- 8 具体例|評価額1,000万円の不動産ならどれくらい違う?
- 9 税金だけで「相続・贈与・売買」を決めない
- 10 「司法書士に聞く税金」と「税理士に聞く税金」
- 11 よくある失敗|登記してから税金を調べる
- 12 どの名義変更か分からない場合はAIシミュレーターで整理する
- 13 まとめ|不動産名義変更は「名義変更前」に税金を確認しよう
不動産名義変更の税金は「なぜ名義を変えるのか」で決まる
不動産の名義変更について、
「親から子へ名義を変えたい」
「夫名義の自宅を妻名義にしたい」
「相続した実家を自分名義にしたい」
といったご相談をよくいただきます。
ここで最初に知っておいてほしいのが、
不動産は単に「名義だけ」を変更するものではない
ということです。
例えば、父から子へ無料で不動産を渡すなら贈与。
売買代金を支払って購入するなら売買。
所有者が亡くなって引き継ぐなら相続。
離婚に伴って夫婦の財産を分けるなら財産分与。
このように、不動産の名義変更には必ず何らかの原因があります。
そして、名義変更の原因によって、かかる税金が大きく変わります。
「同じ1,000万円の不動産なんだから、税金も同じくらいでしょ?」
と思うかもしれませんが、実際にはそうではありません。
相続ならかからない税金が、贈与ならかかる。
売買では、買主だけでなく売主にも税金が発生する可能性がある。
離婚による財産分与では、家をもらう側だけでなく、家を渡す側の税金も確認する必要があります。
この記事では、相続・贈与・売買・離婚による不動産名義変更について、どの税金を確認すればよいのかをまとめて解説します。
まず知っておきたい「不動産名義変更に関係する5つの税金」
不動産名義変更で登場する主な税金は、次の5つです。
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 贈与税
- 相続税
- 譲渡所得税
登録免許税
法務局へ所有権移転登記などを申請するときに納める税金です。
相続・贈与・売買・財産分与など、ほとんどの名義変更で関係します。
ただし、名義変更の原因によって税率が違います。
不動産取得税
不動産を取得した人に都道府県から課税される税金です。
売買や贈与では原則として問題になりますが、相続による取得では原則として課税されません。
贈与税
個人から財産を無償でもらった場合に、財産を受け取った人に課税される税金です。
親子・夫婦であっても、無償で不動産を移せば贈与税の問題が生じます。
相続税
亡くなった方から取得した遺産が一定額を超える場合に問題になる税金です。
相続登記をしたからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。
譲渡所得税
不動産を売却した人などに利益が生じた場合に問題になる税金です。
売買ではもちろんですが、離婚による財産分与でも不動産を渡す側に譲渡所得税が生じる可能性があります。
ここで重要なのが、
「不動産をもらった側の税金」だけを見ないことです。
買主・受贈者・相続人だけでなく、売主や財産分与で不動産を渡す側の税金まで確認しましょう。
相続・贈与・売買・離婚の税金を一覧で比較
まずは全体像を確認してみましょう。
| 名義変更の原因 | 登録免許税 | 不動産取得税 | 贈与税・相続税 | 譲渡所得税 |
|---|---|---|---|---|
| 相続 | ○ | 原則なし | 相続税は場合による | 通常なし |
| 贈与 | ○ | 原則あり | 贈与税 | 通常なし |
| 売買 | ○ | 原則あり | 通常なし | 売主に場合による |
| 離婚・財産分与 | ○ | 内容により確認 | 贈与税は原則なし | 渡す側に場合による |
この表だけを見ると、
「相続が一番安そう」
と思うかもしれません。
実際、税金だけを比較すると相続が有利になるケースは少なくありません。
しかし、不動産の承継は税金だけで決めるものではありません。
例えば、
- 今、長男へ不動産を渡しておきたい
- 離婚するので夫名義の住宅を妻へ移したい
- 親子だけど実際に代金を払って売買したい
- 亡くなった後に特定の子へ自宅を渡したい
など、それぞれ事情があります。
一番税金が安い方法と、一番目的に合った方法は同じとは限りません。
相続による不動産名義変更でかかる税金
親や配偶者など、不動産の所有者が亡くなった場合には相続登記を行います。
相続でまず確認するのは、登録免許税です。
相続登記の登録免許税
通常の相続による所有権移転登記では、
固定資産税評価額 × 0.4%
が基本です。
例えば固定資産税評価額1,000万円なら、単純計算で4万円です。
贈与による所有権移転登記は原則2%なので、同じ不動産でも登録免許税にかなり差があります。
また、一定の要件を満たす土地については、相続登記の登録免許税の免税措置が利用できるケースもあります。
相続税は必ずかかるわけではない
「不動産を相続した=相続税がかかる」
ではありません。
相続税には基礎控除があります。
そのため、不動産・預貯金・株式などを含めた遺産全体を確認した結果、相続税が発生しないケースもあります。
相続登記が必要でも、相続税申告は不要というケースは普通にあります。
司法書士が担当する相続登記と、税理士が担当する相続税申告は別の手続です。
相続では不動産取得税は原則かからない
通常の相続による不動産取得については、不動産取得税は原則として課税されません。
ここは贈与・売買との大きな違いです。
例えば父から1,000万円相当の自宅を引き継ぐとしても、
生前に贈与するのか。
亡くなった後に相続するのか。
によって税負担はかなり変わる可能性があります。
贈与による不動産名義変更でかかる税金
税金について特に慎重に考えたいのが生前贈与です。
例えば、
「父が元気なうちに、自宅を長男へ移したい」
というケースです。
この場合には、少なくとも、
- 贈与税
- 登録免許税
- 不動産取得税
を確認します。
贈与税
贈与税には、暦年課税の場合、年間110万円の基礎控除があります。
ただし、不動産は数百万円、数千万円になることが珍しくありません。
「110万円控除があるから大丈夫」という感覚だけで不動産を贈与するのは危険です。
一方で、相続時精算課税制度や夫婦間の居住用不動産贈与の配偶者控除などを検討できるケースがあります。
現在の相続時精算課税制度には、年間110万円の基礎控除と累計2,500万円の特別控除があります。
ただし、
「2,500万円まで完全に税金が消える制度」ではありません。
将来の相続税との関係まで含めて考える必要があります。
贈与の登録免許税
贈与による所有権移転登記では、原則として、
固定資産税評価額 × 2%
です。
固定資産税評価額1,000万円なら20万円。
相続なら4万円なので、同じ評価額なら単純計算で5倍です。
贈与では不動産取得税も忘れない
さらに、贈与では不動産取得税も原則として課税対象です。
ここでよくあるのが、
「相続時精算課税を使って贈与税が0円になったから、もう税金はないですよね?」
という誤解です。
そうではありません。
贈与税が0円でも、登録免許税や不動産取得税は別です。
不動産贈与は、贈与税だけを見て判断しないことが重要です。
売買による不動産名義変更でかかる税金
売買では、買主と売主の両方から税金を見る必要があります。
例えば、父所有の土地を息子が1,500万円で購入するとします。
本当に1,500万円を支払って売買するのであれば、親子間でも不動産売買は可能です。
買主側の税金
買主では、主に、
- 登録免許税
- 不動産取得税
などを確認します。
住宅を購入する場合には、一定の要件を満たせば登録免許税や不動産取得税の軽減措置を利用できるケースもあります。
売主側には譲渡所得税がかかることも
一方で忘れやすいのが売主側です。
父が土地を1,500万円で売却し、取得費や譲渡費用などを差し引いた結果、譲渡益が出れば、譲渡所得税の問題があります。
つまり、
「買う側の登記費用」だけ計算して売買を決めないことが大切です。
親子間売買では特に、
「贈与税が高いから売買にしよう」
と考えがちです。
しかし本当に売買するなら、子には売買代金を支払う資金が必要ですし、父には譲渡所得税が発生する可能性があります。
安すぎる親族間売買にも注意
例えば時価1,000万円の不動産を親から子へ1円で売却したらどうでしょう。
形式は売買です。
しかし、個人から著しく低い価額で財産を取得すると、時価との差額について贈与とみなされる問題があります。
「贈与税が嫌だから安い売買にする」という考え方は危険です。
離婚・財産分与による不動産名義変更でかかる税金
離婚によって、
「夫名義の自宅を妻へ移したい」
というケースもあります。
ここは税金の理解が少し難しいところです。
受け取る側の贈与税
通常の財産分与は、夫婦が婚姻中に築いた財産を清算する手続です。
そのため、一般的な範囲の財産分与であれば、財産を受け取った側に贈与税は原則として課税されません。
ただし、夫婦の財産状況などから見て明らかに過大な財産分与である場合などには、贈与税が問題になる可能性があります。
不動産取得税
不動産取得税については、財産分与の内容によって取扱いを確認する必要があります。
婚姻中に夫婦で形成した財産を清算する目的の財産分与では課税されない取扱いがある一方、財産分与の性質などによって課税関係が異なる場合があります。
「離婚なら絶対に不動産取得税はかからない」と決めつけず、個別に確認するのが安全です。
実は重要|不動産を渡す側の譲渡所得税
そして、離婚の不動産名義変更で特に見落とされやすいのがここです。
例えば夫名義の自宅を財産分与で妻へ移した場合。
妻側だけを見ると、
「贈与税もないし大丈夫」
と思うかもしれません。
しかし、財産分与による不動産の移転では、不動産を渡す側に譲渡所得税が生じる可能性があります。
つまり、
「もらう妻」だけではなく、「渡す夫」の税金も確認する必要があります。
これは不動産を使った離婚の財産分与では重要なポイントです。
さらに、住宅ローンが残っている場合には、金融機関との調整や借換えなど、登記以外の問題も出てきます。
具体例|評価額1,000万円の不動産ならどれくらい違う?
例えば、固定資産税評価額1,000万円の不動産を名義変更するとします。
登録免許税だけを単純に比較すると、
- 相続:1,000万円 × 0.4% = 約4万円
- 贈与:1,000万円 × 2% = 約20万円
となります。
登録免許税だけでも16万円の差があります。
さらに贈与では、贈与税や不動産取得税が加わる可能性があります。
そうすると、
「だったら絶対に相続まで待った方がいい」
と思うかもしれません。
しかし、例えば父が、
「この土地は今のうちに長男へ渡しておきたい」
という明確な意思を持っている場合はどうでしょう。
生前贈与には、
父が元気なうちに、父と長男の合意によって所有権移転を完了できる
というメリットがあります。
税金が多少高くても、このメリットを優先するケースはあります。
税金だけで「相続・贈与・売買」を決めない
不動産名義変更では、
「どれが一番安いですか?」
という質問をよく受けます。
もちろん、費用比較は大切です。
ただ、それ以上に重要なのが、
何を実現したいのか
です。
今すぐ子へ所有権を渡したいなら生前贈与。
本当に代金を支払って購入したいなら売買。
亡くなった後に特定の子へ渡したいなら、相続だけでなく遺言という方法もあります。
「認知症になっても子どもに管理してほしい」という目的なら、そもそも名義変更ではなく家族信託や任意後見の検討が適切な場合もあります。
名義変更は目的ではなく、目的を実現するための手段です。
「司法書士に聞く税金」と「税理士に聞く税金」
不動産の税金について相談するとき、
「司法書士と税理士、どちらに聞けばいいの?」
と迷う方もいます。
役割を簡単に整理すると次のようになります。
| 司法書士 | 税理士 |
|---|---|
|
必要な登記 登録免許税 必要書類 名義変更の流れ 登記申請 |
具体的な贈与税 相続税 譲渡所得税 税制選択 税務申告 |
司法書士は不動産登記の専門家です。
そのため、
「この場合、どんな登記が必要?」
「登録免許税はいくら?」
「どんな書類を用意する?」
といった内容をご案内できます。
一方、
「贈与税は具体的にいくら?」
「相続時精算課税と暦年課税のどちらが税務上有利?」
「この売却で譲渡所得税はいくら?」
という個別具体的な税務判断は税理士の分野です。
不動産名義変更では、登記と税金を分けずに全体を確認することが大切です。
よくある失敗|登記してから税金を調べる
最も避けたいのが、
「名義変更してしまってから税金を調べる」
ことです。
例えば、
父から息子へ自宅を贈与。
所有権移転登記も完了。
その後になって贈与税を調べる。
「えっ、こんなにかかるの?」
となってしまうケースです。
不動産は簡単に、
「やっぱり元に戻そう」
とはできません。
元に戻すために再び所有権を移転すれば、今度はその移転について新たな課税関係や登記費用が問題になる可能性があります。
ですから、
① 税金を確認する
↓
② 名義変更の方法を決める
↓
③ 契約・遺産分割・財産分与などを行う
↓
④ 登記する
という順番で進めるのがおすすめです。
どの名義変更か分からない場合はAIシミュレーターで整理する
ここまで読んでも、
「結局、自分は相続?贈与?売買?」
「どの手続が必要なの?」
と迷う方もいるでしょう。
司法書士法人あやめ池事務所では、手続内容に応じたAIシミュレーターをご用意しています。
相続による名義変更
AI相続シミュレーター →
生前贈与による名義変更
AI贈与シミュレーター →
不動産売買による名義変更
AI売買登記シミュレーター →
離婚による住宅の名義変更
AI離婚シミュレーター →
いくつかの質問に答えることで、必要な手続や費用、おすすめのプランを確認できます。
まず自分のケースを整理してから、必要に応じて司法書士や税理士へ相談するとスムーズです。
まとめ|不動産名義変更は「名義変更前」に税金を確認しよう
不動産名義変更に関係する税金は、原因によって大きく違います。
相続なら、主に登録免許税と、場合によって相続税。
贈与なら、贈与税・登録免許税・不動産取得税。
売買なら、買主側の登録免許税・不動産取得税だけでなく、売主側の譲渡所得税。
離婚による財産分与なら、登録免許税に加えて、財産を渡す側の譲渡所得税まで確認する必要があります。
だからこそ、
「名義を変えればいくらかかる?」だけではなく、「なぜ名義を変えるのか?」から考えることが大切です。
税金を確認する前に登記を進めるのではなく、まず原因と目的を整理し、それぞれの税金や手続を比較してから進めましょう。
司法書士法人あやめ池事務所では、相続・贈与・売買・離婚など、不動産の名義変更に関するご相談を承っています。
必要な登記、必要書類、登録免許税、手続の流れについては司法書士がご案内できます。



