※この記事は、2026年6月に従前の記事を加筆・修正し、最新の内容にリライトしたものです。

個人間で不動産売買を行う流れ【4ステップで解説】

個人間での不動産売買は、不動産会社を利用しないため仲介手数料を抑えることができる反面、契約書の作成や名義変更登記など、当事者自身で行わなければならない手続も多くあります。

「親族同士だから大丈夫」「知人同士だから契約書はいらないかな」と考えてしまいがちですが、あとから思わぬトラブルになることも少なくありません。

ただ、手続の流れを理解し、ひとつずつ確認しながら進めれば、個人間で売買を行うことも十分可能です。

個人間売買で起こりやすいトラブルや注意点については、

不動産の個人間売買の注意点

でも詳しく解説しています。

ここでは、個人間売買の一般的な流れを4つのステップに分けて解説します。

STEP1 物件の権利関係を調査する

個人間売買では、まず最初に対象不動産の権利関係を確認しましょう。

建物や土地を見ただけでは、権利関係までは分かりません。

法務局で取得できる次の資料を確認することで、物件の状況を把握できます。

特に、個人間売買では、不動産会社による事前調査がないため、当事者自身で権利関係を確認することが重要です。

  • 登記事項証明書
  • 公図
  • 地積測量図
  • 建物図面
  • 地役権図面

特に、次のようなケースには注意が必要です。

注意したいケース

  • 抵当権が残っている
  • 差押登記がされている
  • 前面道路が第三者所有である
  • 私道持分がない
  • 地役権が設定されている
  • 境界が不明確である

権利関係に問題があるまま売買を進めると、名義変更ができなかったり、後日トラブルになる可能性があります。

登記事項証明書を見てもよく分からない場合には、売買を進める前に司法書士などへ確認しておく方が安心です。

事例1 私道の持分がなかったケース

親族間で古家を売買したところ、実は前面道路(私道)の持分が売主名義ではなかったため、後日、別途手続が必要になったケースがあります。

建物だけでなく、前面道路や通路の権利関係も確認しておくことが大切です。

特に古い住宅地では、建物と敷地だけを確認して売買を進めた結果、私道部分だけ別名義だったというケースもあります。

事例2 抵当権が残っていたケース

知人間で売買を進め、代金決済直前になって登記簿を確認したところ、すでに完済したはずの住宅ローンの抵当権が残っていることが判明したケースがあります。

抵当権が残っている場合には、売買と同時に抵当権抹消登記を行うなど、別途対応が必要になることがあります。

売買前には、必ず最新の登記事項証明書を取得し、抵当権などの負担が残っていないか確認しましょう。

STEP2 売買契約書を作成する

権利関係に問題がなければ、売買契約書を作成します。

親族間や知人同士の売買であっても、口約束だけで進めることはおすすめできません。

「親しい間柄だから大丈夫」と考えていても、後日認識の違いからトラブルになるケースは少なくありません。

特に個人間売買では、不動産会社が契約条件を整理してくれるわけではありません。

そのため、「いくらで売るのか」だけではなく、

  • いつ代金を支払うのか
  • いつ物件を引き渡すのか
  • どのような状態で引き渡すのか
  • 不具合が見つかった場合にどうするのか

といった点まで決めておく必要があります。

最低限決めておきたい事項

売買代金・引渡日

売買代金、支払方法、引渡日を明確に決めましょう。

一括払いなのか、手付金を支払うのか、残代金を後日支払うのかなども記載しておくと安心です。

固定資産税等の清算方法

固定資産税・都市計画税を日割精算するのかどうかを決めます。

日割精算をしない場合も、その旨を契約書に記載しておくと安心です。

契約不適合責任

建物の雨漏り、シロアリ被害、設備故障など、引渡後に発見された不具合について、誰が責任を負うのかを定めます。

古い建物の場合、現状のまま引き渡すという内容で契約するケースもあります。

ただし、売主が把握している不具合については、後々のトラブルを防ぐためにも、契約前に買主へ伝えておくことが重要です。

古家売買では特に注意

築年数の古い建物では、次のような不具合が見つかることがあります。

  • 雨漏り
  • シロアリ被害
  • 給排水管の故障
  • 設備の故障
  • 建物の傾き
  • 境界や越境の問題

売主が知っている不具合や気になる点は、できるだけ契約書や別紙へ記載しておくことをおすすめします。

その他取り決めておくと良い事項
  • 家財道具を残すか
  • エアコン等の設備を残すか
  • 鍵の本数
  • 境界標の有無
  • 残置物を誰が処分するか
  • 引渡しまでの修繕を誰が行うか

「そこまで細かく決める必要があるの?」と思われるかもしれません。

しかし、個人間売買では、こうした小さな認識の違いが後から問題になりやすいため、最初に決めておく方が結果的に楽です。

STEP3 契約締結・代金決済・引渡しを行う

契約内容が決まれば、契約締結と代金決済を行います。

現金による個人間売買では、

契約締結 → 売買代金の支払い → 鍵の引渡し → 登記書類の受渡し

までを同日に行うケースもあります。

一方、「まず契約だけ締結し、1か月後に代金を支払う」という進め方も可能です。

その場合は、「いつまでに残代金を支払うのか」「いつ物件を引き渡すのか」を契約書へ明確に記載しておきましょう。

決済日に行うこと

  • 売買代金の受渡し
  • 鍵の受渡し
  • 固定資産税等の日割清算
  • 領収書の作成
  • 登記書類の受渡し

ここで特に重要なのが、「代金を支払うこと」と「名義変更できること」を同時に確認することです。

例えば、買主が2,000万円を振り込んだ後になって、「実は権利証がありませんでした」となると、非常に困ります。

そのため、通常の不動産取引では司法書士が事前に登記書類を確認し、名義変更登記ができる状態であることを確認したうえで代金決済へ進みます。

登記書類の確認

売主側では、主に次のような書類を準備します。

  • 権利証または登記識別情報通知
  • 印鑑証明書
  • 登記委任状
  • 固定資産評価証明書等

一方、買主側でも住民票などの準備が必要になります。

代金を支払った後に書類不足が判明すると、その日に名義変更登記を申請できない可能性があります。

個人間売買では、この「決済前の書類確認」が非常に重要です。

個人間売買で住宅ローンを使う場合は流れが変わる

ここは、現金売買との大きな違いです。

個人間売買でも住宅ローンを利用できる場合はありますが、金融機関によって取扱いが異なります。

住宅ローンを利用する場合は、通常の売買手続に加えて、

  • 金融機関の審査
  • 売買契約書の提出
  • 物件資料の提出
  • 金融機関や司法書士との調整
  • 抵当権設定登記

などの手続が加わります。

住宅ローンを利用する予定がある場合は、売買契約を締結する前に金融機関へ相談しておくことをおすすめします。

詳しくは、

個人間売買で住宅ローンは使える?

の記事をご覧ください。

STEP4 名義変更登記(所有権移転登記)を申請する

売買代金の決済が完了したら、管轄法務局へ所有権移転登記を申請します。

主な必要書類

  • 登記申請書
  • 買主の住民票
  • 売主・買主の委任状
  • 売主の印鑑証明書
  • 固定資産評価証明書等
  • 権利証または登記識別情報

必要書類は物件や当事者の状況によって異なります。

不動産売買による名義変更登記そのものを詳しく確認したい方は、

不動産売買の名義変更の流れ

の記事も参考にしてください。

売主の住所が登記簿と違う場合

個人間売買では、ここで止まるケースもあります。

例えば、売主が20年前に購入した自宅を売却する場合、登記簿に記録されている住所と現在の住所が違っていることがあります。

この場合には、所有権移転登記の前提として、住所変更登記が必要になることがあります。

「本人なのだから、そのまま売れるだろう」と思われがちですが、登記簿上の所有者と現在の所有者が同一人物であることを確認できるようにしておく必要があります。

抵当権が残っている場合

住宅ローンを完済していても、抵当権抹消登記をしていなければ、登記簿上には抵当権が残ったままです。

また、住宅ローンがまだ残っている場合には、売買代金等でローンを完済し、抵当権抹消登記と所有権移転登記を連携して進める必要があります。

個人間売買では、登記直前になって追加手続が必要になるケースも多いため、「契約してから調べる」のではなく「契約前に調べる」のがおすすめです。

登記完了後には、買主に新しい「登記識別情報通知」が発行されます。

個人間売買で特に多い3つのつまずき

ここまでの流れをまとめると、個人間売買では次のようなところで手続が止まりやすくなります。

1.契約書は作ったが、登記書類を確認していなかった

契約書が完成していても、権利証や印鑑証明書などが揃わなければ所有権移転登記はできません。

契約書と登記は別々に考えず、決済日から逆算してまとめて準備することが大切です。

2.昔の抵当権や住所変更が残っていた

登記簿を早めに確認しておけば対応できますが、決済直前に発覚すると予定日に登記できないことがあります。

3.親族だから細かい条件を決めなかった

親子・兄弟・親戚同士の取引ほど、「言わなくても分かるだろう」となりがちです。

しかし、不動産は数百万円、数千万円になる取引です。

親族間だからこそ、契約条件を書面に残しておくことが重要です。

個人間売買で起こりやすい問題については、

不動産の個人間売買の注意点

でさらに詳しく整理しています。

自分で手続きをする?専門家へ依頼する?

個人間売買は、自分たちだけで手続きを進めることも可能です。

例えば、

  • 現金売買
  • 抵当権なし
  • 売主の住所変更なし
  • 権利証あり
  • 土地・建物の権利関係が単純

といったケースであれば、比較的進めやすいでしょう。

一方で、

  • 住宅ローンを利用する
  • 抵当権が残っている
  • 権利証を紛失している
  • 売主住所が登記簿と違う
  • 親族間で売買する
  • 古家で不具合が多い
  • 契約内容に不安がある

というケースでは、専門家へ相談するメリットが大きくなります。

個人間売買は、不動産会社が間に入らない分、「誰が取引全体を確認するのか」が重要です。

司法書士法人あやめ池事務所のサポート内容

司法書士法人あやめ池事務所では、個人間売買について、次のようなサポートを行っています。

  • 売買契約書作成支援
  • 登記事項の事前確認
  • 権利関係調査
  • 必要書類のご案内
  • 代金決済の段取り
  • 所有権移転登記
  • 抵当権抹消等の付随登記
  • 関係者との調整

「売主と買主は決まっているけれど、ここから何をすればいいのか分からない」という段階からでもご相談いただけます。

特に、親族間売買・知人間売買・古家の売買では、最初に登記簿や契約条件を確認しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。

売買契約から代金決済、所有権移転登記までまとめて進めたい方は、お気軽にご相談ください。