受け取ったらアウト? 相続放棄 と 死亡保険金 生命保険金 で注意すべき落とし穴
「相続放棄をしても保険金はもらえるんですよね?」といった質問を、私たち司法書士はよく受けます。ところが、安易に受け取ってしまうと、相続放棄が無効になるケースもあるのです。本記事では、死亡保険金と相続放棄の関係、そして実際に起こりやすい“落とし穴”をわかりやすく解説します。
目次
相続放棄 とは?基礎知識をおさらい
相続放棄 とは、被相続人の死亡によって発生する相続権を、 家庭裁判所 に申述することで放棄する制度です。放棄が認められると、その人は「はじめから相続人でなかった」ものと見なされ、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金など)も一切相続しないことになります。
ただし、申述できる期間には制限があり、「自己のために相続があったことを知った日から3か月以内」に行う必要があります。相続放棄 は、この期限と「相続財産に手を付けないこと」が重要なポイントになります。
死亡保険金 は「 相続財産 」じゃない!?
相続放棄 をした場合でも、 死亡保険金 ( 生命保険 など)の受け取りが可能なケースは多くあります。なぜなら、保険金は法律上、「 相続財産 」とは別のものとして扱われるからです。
具体的には、 保険契約 において受取人が明確に指定されている場合、その 保険金 は受取人個人に直接支払われるものであり、遺産とはみなされません。したがって、 相続放棄 をしても受け取りが可能となるのです。
一方で、受取人が「 相続人 」とだけ指定されている場合や、指定がない場合には、死亡保険金が相続財産に含まれると判断される可能性があります。
落とし穴1:受取人が「 相続人 」になっている
保険契約において、受取人が「 配偶者 」「 長男 」などと明示されていれば、その人個人に支払われるため問題はありません。しかし、受取人の記載が「 相続人 」となっている場合は要注意です。
- 受取人=相続人 とだけ記載された保険契約では、放棄した人が受け取ると「相続を承認した」とみなされる可能性があります。
結果として、 相続放棄 が無効となってしまい、被相続人の借金などを背負うリスクが出てきます。契約内容の確認はとても大切です。
落とし穴2:保険金受け取りが「 相続財産の処分 」に該当することも
相続放棄 を検討している場合、注意すべきなのが「 相続財産 に手を付けた」とみなされる行為です。たとえば、保険金の性質によっては、それを受け取ること自体が「 相続財産の処分 」と解釈されることがあります。
- 共済金や団体生命保険など、保険の種類によっては特別な扱いになる場合があります。
とくに、被相続人が契約者で、保険料もすべて負担していたような保険では、受け取った保険金が「遺産の一部」とされる可能性があります。専門家のチェックを受けることが大切です。
落とし穴3:他の相続人とトラブルになることも
たとえ死亡保険金が法的に「 相続財産でない 」としても、他の相続人から「不公平だ」「話が違う」と言われるケースもあります。
- 特別受益(とくべつじゅえき)と主張されて、遺産分割に影響が出ることも。
- 遺留分侵害をめぐる争いに発展する可能性もあります。
相続人どうしの信頼関係にひびが入る前に、早めの説明や専門家の関与が有効です。
死亡保険金を受け取る前にやるべきチェックリスト
トラブルや無効リスクを避けるため、次のポイントを確認しましょう。
- 保険契約書・証券で「 受取人 」が誰か明記されているか
- 保険料の支払者が誰か(被相続人か、第三者か)
- 共済など、遺産とされやすい保険でないか
- 疑問があれば司法書士や保険の専門家に相談
些細な違いが、 相続放棄 の効力に大きく影響することがありますので、自己判断は禁物です。
チェックポイント
相続放棄 をしても、死亡保険金を受け取れるケースは多くありますが、契約内容や状況によっては「相続を承認した」とみなされ、放棄が無効となるリスクもあります。
とくに、「受取人が相続人」とだけ記載された契約や、保険の種類によっては注意が必要です。うっかり受け取って後悔する前に、事前の確認と専門家への相談が大切です。
当事務所では、 相続放棄 の手続きはもちろん、 死亡保険金 をめぐる注意点についても丁寧にサポートいたします。ご不安な方はお気軽にご相談ください。
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